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「ひょろいのが調子に乗りやがって!!」
顎の下から強く殴られ、ココアはまた地面に転がります。
「……っ」
それでもとっさに受け身を取り、口から血を垂らしながら起き上ろうとするココアに、男はぞっとします。
そして、手には無駄にキラキラ光るムチを決して放そうとしません。
揺れるココアの視点がスキンヘッドへ。
しかし、スキンヘッドはふらふらのココアにさらに斧を振り下ろします。
地面の土を舞い上げながら、しかし、逃げるほどの距離は取らず転がりかわし。
腕を大きく振りムチを振ります。
パシン!
高い音は観客すべての瞼に瞬きをさせました。
「ふははは!音だけの玩具が無駄な……」
と、笑う本人の足首は、骨の構造上あり得ない方向に曲がります。
「……?」
太く毛深い男の足首は、直角に折れ見るも痛々しい姿になっていました。
ふらりとよろけ、立ち上がろうとするも、かえってバランスを崩しココアと一緒に地面に倒れる始末です。
「俺の骨を、折っただと……?」
ココアはゆらりと口を押さえ立ち上がります。
「……たかが、おもちゃ、ごときで?」
「足首は完全に折りましたので、病院に行くことをお勧めします」
ムチを引きづり歩くココアは、ふっと首を傾けます。
その横を大斧が回り駆け抜けていきます。
ココアが視線を向けず、無機質に後ろ手で振ったムチに打たれ、その柄は完全に折れて撃ち落されました。
肉食獣の縄張りを犯した小鳥のように。
それは、あっけなく、そしてどこか自然の摂理のように当然にも見える映像。
ムチを持つココアはまるで絶対王者のような貫禄がありました。