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「手間を取らせやがって」


右手は斧、左手に気を失ったピヨーネを抱え。


甲冑と体の隙間に長財布を差し込んだ男は振り向く。


「おい、行くぞ」


周りの大人たちはハラハラと誘拐される子供の姿を案じながら。


今か今かと警備兵の登場を待ちわびたのでした。


しかし、いつもはいるはずのそれは来ることがなく。


だからと言って、子供を助けに前に出る度胸も無く。


ただ、人だかりが大きくなるのを、男はイライラしながら怒鳴ります。



「どけ!!」



途中で跳ね飛ばされた紫色の猫が、人ごみの中からうろうろと主人の様子を伺い彷徨います。


その猫の体がふわりと浮き、猫はニャッと小さく声を上げました。



「……この猫をお願いします」



猫が顔を上げると、恰幅のいいおじさんの手の中にいました。


猫とおじさんはきょとんと顔を見合わせます。



その猫の視界に、人々の中から飛び出す影が映りこみました。



黒い線が赤い空を走り、ひゅるんと風を切ります。


その線はスキンヘッドの首に巻きつき、頭を強く引っ張ります。


「ぐ?」



首に閉まる線を掴み、睨み付けるとそこには小さなか細い体がムチを握っていました。



服はぼろぼろになり、ボタンはすべて役立たず。


体から包帯が解け、Gパンに絡み付き、はためいて。


白い髪の下から出た目は夕日を写し、鋭く光ります。



「その子がいないと仕事が全うできなくなるんでね」



傭兵たちが、ココアの背後で剣を振り下ろします。



剣は空を切り、ココアは地面を蹴り、その場でバク宙。


ムチを握ったまま、スキンヘッドの頭上を軽く飛び。


ムチはピンと張り、首を中心に弧を描き。


そして、スキンヘッドはココアの体重移動のせいで体を前に引っ張られます。



ぐらりと体の支点がぐらついたところで、ココアはムチを引き寄せ。


そのまま軽い身のこなしで下降するまま回し蹴りを食らわせました。


重量の重い男の体は巨体を揺らし、金属音を立て地面に倒れます。


力の抜けた手からピヨーネが転がり、口に土の味を含んだ彼女は我を取り戻しました。


ココアの軽業に、まるでサーカスでも見るかのような歓声と拍手が上がりました。



「……」


ピヨーネは、視界がぐらつく中で服が乱れた細い体をぼんやりと眺めます。










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