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にぎわう商店街。
人ごみの中、ココアはいつもと違う不自然さを感じていました。
数々の声がする中で、目を動かしその違和感の元を探ります。
夕日のかかる果物屋が品薄で、どことなく疲れた顔。
植込みの花が踏まれていたり、町の中に酒瓶が転がってたり。
なんとなく、子供の数が少ない。
……いや、夕方だからか?
逆に、大人の男の人数が多い。
飲み屋に行くのか?
それにしてはカタギではない雰囲気の奴がたむろしている。
近隣の国で見ない服装や入れ墨が目立つ。
『入院しているうちにちょっとここガラが悪くなった気がするなあ』
『そうなの?』
『普段はとってもきれいな街なんだ。夜子供が歩いてても安全なくらい警備が行き届いてる』
おかしな言葉でしゃべるココアたちを、いくつかの視線が集中します。
んっ、とココアは唸りました。
『日が暮れないうちに施設に行こうか』
『図書館がいいー』
『わがままは明日聴くから』
半ば強引に腕を掴んで速足で歩きだすココアとピヨーネ。
すると後ろの方から迫る足音が聞こえてきました。
ピヨーネはふっと振り返ろうとしましたが、それを止めました。
『走るよ!猫しっかり抱っこして!!』
言葉の真意は確認しないまま。
ピヨーネもそれに同意し駆け出します。
すると、後ろから来る男たち3人も同じく人ごみの中から飛び出しこちらに向かってきます。
『あたしをずっと追いかけてきた奴がいる!』
ココアは一瞬、後ろを振り返ります。
『どれ?』
『ハゲ!抵抗した時カツラむしり取ったからよく覚えてる!』
『うわあ、何してるの!!』
スキンヘッドの男は筋肉隆々の中年でした。
手には斧、甲冑を身に着けた傭兵風の男でした。
やはりそれの周りにいる人間たちも防具で身を固めた筋肉ばかり。
顔には傷痕がある、強面の人たちで、穏やかにコミュニケーション取れる顔ではありませんでした。
捕食者の顔。
『戦ってよ、国家公務員!!』
『馬鹿言わないでよ!僕はコネ入社だってば!!』
夕方の市場はそれなりに活気があり、ココアはピヨーネの腕を掴み、市場を右へ左へ走ります。
人ごみを中心に、まるで迷路をめぐるかの如く走り回りました。