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ガッツリ笑顔で登録された図書カードに、ピヨーネは不満げでした。
図書館の大きな庭園を出て、町の中。
図書カードを睨みながら商店街を歩いていました。
ピヨーネの保護施設は、商店街を出て少し行ったところにあります。
『白いカードなのね』
『そりゃあそうだよ。素性がはっきりしない状態だと、読める本も一般書のみだよ』
『黒がいい』
『君が逆立ちしても無理だよ』
ピヨーネは口を尖らします。
『通常、ココの職員になるには、女王の試験を受けなきゃいけないんだ』
ココアは三本指を立てます。
『まず、筆記試験。専門知識だったり、暗号だったり出題範囲は無いし毎年バラバラ。女王の気分だ』
薬指を曲げ。
『次に実技試験。試験官だったり、図書館職員だったり、同じく受けたライバルたちと戦ったり色々だ。勝っても賞金はでないけど、死傷者がでると国からお金が出るみたい』
中指をまげ。
『そして面接試験。女王とお話。これがかなり意地悪らしくて、募集しても受かる人が実質0の方が多いんだ。もっとも大概筆記試験で合格者がいなくなるらしいし、筆記試験の合格実績だけでちょっとしたステータスになるみたいだけど』
人差し指をくるくる回しました。
『らしい、みたいって、あなたは受けていないの?』
『僕はコネだから全部してない。大体僕、実技試験で落ちる自信があるし』
線の細い腕の先の手でゴマを擦るような動作に、ピヨーネは心底残念な顔をします。
『……たしかに、へなちょこね』
『争いとかそういうの本当に向いてないんだ。血とか動物とか苦手だし。馬とか乗れないし』
ピヨーネが抱いた猫を近づけると、ココアは距離を置きます。
『なのに特殊図書が扱えるほぼ最高ランクの黒カードなの?あなたそんな危険を背負って大丈夫なの?』
ピヨーネは凄んで聞きました。
『……あなたが持っているのは、世界を壊す力を自由にできる権利なのよ』
んー。
ココアは言葉に詰まります。
『仕事だから、頑張らないといけないって感じかな。他にやりたがる人がいないと言うべきか。上の命令は絶対命令と言うべきか』
へらっと笑い、こう続けました。
『大体、僕は管理ができても、使いこなすことはできないし』
『あなたへなちょこにもほどがあるわ』
『大人になったらわかるよ。このどうしようもない感じ』