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「チューズさん、異国の子の身分証明書の件で図書カードを発行してもらいたいんだけど」
むくんだ顔の真ん中で赤くなった鼻をずびずび鳴らしながら、彼女は細くなった目を更に細めてココアの後ろを見つめます。
「あの紫の手足の子?」
「そう」
「館長から聞いているわ。……姿をカードに登録するから証明写真室に入ってもらって」
よかった、仕事はしてくれるみたいだ。
ココアは苦笑します。
『ピヨーネ、そこの小部屋に入って』
『……入ると何なの?』
『さっき僕のカードに僕の写真が載ってたでしょ?あれをしないといけないから笑顔でね』
少女はこれまでにない笑顔で微笑み返します。
『あたしの笑顔は一級品だって、学校でも評判なの』
と、ご機嫌で小部屋の中へ入って行きます。
「ココアさんは、そんな男どもの一人じゃないと私信じてるからね」
チューズもどこか恨みがましくココアを見つめ、受付の奥に消えていきます。
ロビーの椅子に一人かけ、ココアは体を大きく後ろに逸らして息を吐きます。
僕はやっぱり、女心を理解できそうにない。
そんなことを思いながら。