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「姉さんたちがみんな温泉に行ってしまったの。だから私は一人で受付業務でね。疲れちゃった」
はあ、と彼女は重く重くため息をつきます。
「平日だけど、やっぱ忙しいですか?」
「通常三人でする業務を一人はちょっとね。シンヤさんとかワンコさんとか借りてやっているけど、今あんまり男に会いたくないの」
彼女は伏せたまま髪を掻き上げ、またはあとため息をつきます。
「あいつらなんか失礼な事をしました?」
「ううん、あの人たちは悪くないの。手伝ってくれてるし、全然悪くない。私の問題」
「?」
ふっと上げたチューズの目が、怒りに満ちて、ココアは絶句します。
「……ただ、私が男に会いたくないだけ」
「なんか、ありました?」
「浮気されたの。昨日メールで分かったの。最悪」
また顔を伏せ震えだします。
状況が分からないピヨーネの不可解な表情を確認し、ココアは慌てます。
「……えっと、一時の気の迷いって奴ですよ」
「私の付き合う男はみんなそう。男なんて。男なんて」
顔伏せたまま泣き出したようです。
「たまたまですって……」
しかし、ココアの言葉は聞く耳を持ちません。
『良くわからないけど、もし男が理由の失恋なら、男が何を言っても通じないと思うわ』
ピヨーネの言葉に、ココアはフォローを止めました。