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木陰のメリー  作者: 悠十
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第三話 友人



 ここ、バルード王国のアルセルド王立学院といえば、世界に誇る有名な学院である。国や身分に関わらず、大きく門戸を開き、多くの優秀な人物達を輩出してきたのだ。

 学院は基本的に八年制で、学生が希望し、学院側が許可すればもっと長く学院にいる事も出来る。

学院には、大きく分類して六つの学科がある。まず、一般教養科から始まり、戦士科、魔術科、精霊術科、魔法化学科、騎士科と分かれている。

 誰もがまず入学すると、一年は一般教養科で文字と簡単な算数を学ぶ事になる。そして、二年目でそのまま一般教養科に残るか、他の学科に進むか選択するのだ。また、学科の変更は可能であり、重複も可能だ。しかし、一般教養科と魔法化学科を除く四科目の実習は過酷を極め、重複は困難となる。そして、その四科目の五年目は脱落者が多い。脱落者はほぼ一般教養科に移るため、一般教養科の生徒数は学院で最も数が多い。しかし、退学者が一番多いのも一般教養科である。これは別に問題が有って辞めるのではなく、農家の子供達が必要最低限の知識を得る為に二年程学院に在籍し、辞めている為である。その為、最近では一般教養科の二年を前期とし、後の六年を後期として分け、二年で辞めていく子供達を一般教養科前期卒業者として扱うようにするか、学院側は検討しているらしい。

 さて、そんなアルセルド王立学院で、私は一般教養科に在籍している。え? 何で魔術科とか、そんなファンタジー代表みたいな学科に所属しなかったのかって?

 あのね、難しいの。魔術も、精霊術も、魔法化学も、本当に難しいのですよ。世界共通語で躓いている私が入れるような学科じゃないの。失われた古代語が日本語でした、なんて美味しい設定は無いの。もう、涙が出そうだからこの話は止めましょう。夢を見た分だけ、現実を思い知っただけだったからさ!


 さて、そんな身も心も残念なほど一般人な私の友人達は、これまた私とご同類の一般人です。


「さて、今日のお昼は何処で食べようか」


 お弁当片手に悩むのは、友人その一、アリシア・マケット。彼女は結構大きな商家のお嬢様で、黒髪にアイスブルーの瞳が良く映える美人さんだ。ちなみに彼女には既に婚約者がおり、学院を卒業したらすぐ結婚するらしい。


「はい! 職員室前の芝生が良いと思います!」


 アリシアの言葉に元気に手を上げて提案したのは、友人その二、リナ・フォトン。癖のあるショートカットの赤毛を、花のピンで上手に纏めるお洒落さんだ。鼻の頭に散ったそばかすが可愛らしい。そんな彼女のご両親はドレスを作る職人さんらしい。

 二人共、私と同じ一般教養科に籍を置いている。


「ふむ、その心は?」


「教師の前では手出しできない!」


 何て素敵な鶏魂。リナのグレーな発言に拍手!


「リナ、頭良い!」


「いや~ん。もっと褒めて!」


「ほら、馬鹿な事やってないでさっさと行くわよ」


 拍手を送る私にリナは胸を張り、アリシアはクールに促す。

 そして昼食をとりに移動する私達、というより私に、沢山の視線が突き刺さる。


「いやー。すっかり有名人だね」


「本当ね。いつ襲われても不思議じゃないほど、殺気が篭っている視線もあるわね」


「うぇ~……」


 私が置かれている状況をからかう二人だが、それでもしっかり私を二人の間に挟んで歩いてくれている。たとえ件の英雄様が好みのタイプでは無かったとはいえ、二人を巻き込んで、針の筵な私の現状。離れていかなかっただけでも有難いのに、こうして少しでも守ろうとしてくれているのが、本当に嬉しい。

 私が友情に感動していると、リナが何か思いついたように、口を開いた。


「いっそ変装でもしてみたら? 眼鏡かけて、髪形を変えるだけでも結構分からなくなるものだよ?」


 ふむ。試してみる価値はありそうだ。


「それより、変なお面でも被ってみれば良いわ」


「何で?」


 アリシアの提案に、首を傾げて尋ねる。


「だって、普通、そんな怪しい人物になんて近づかないもの。きっと皆、メリーを遠巻きにするわ」


「あ、それ良い!」


「良くない!」


 翌日、本当に妙に迫力に溢れた何処かの国の魔除けのお面をプレゼントされた。いや、どうしろと? 被れと? 被れと言うのか!?

しかし、その日の帰り道、人通りの少ない道が妙に怖く感じた私は、本当に仮面を被って帰り、翌日、それを知った友人二人に爆笑された。いいじゃないのさ、人気が無くて本当に怖かったんだから!





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