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木陰のメリー  作者: 悠十
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第三十話 女子会

「はい、じゃあ、今日の女子会の議題は『メリーのクロード様との仲を問い詰める』ね」

「何で!?」


 今日はアリシアとリナと一緒にお茶をしています。最近話題の人気のカフェで、オープンテラスの席に座っているんですが、時々ミシェルが何処ぞを狙って発砲しているのが気になります。何? 何かいるの!? 


「それより、ミシェルの様子が気になるんだけど!?」

「大丈夫でしょ」

「発砲音皆無とか凄いよね」


 二人は余裕綽々で紅茶を飲んでいる。

 何で、そんなに落ち着いていられるの!?


「殺してなければセーフよ」

「正当防衛ってやつね」

「過剰防衛の間違いじゃないかな!?」


 一人で戦々恐々としている私は、まさか二人が私を狙う不届き者をさくっとヤッてしてしまおうと画策していたとは、思いもしない。


「ほら、見てごらんなさい。あの、いかにも怪しげな連中」

「筋肉さん達、手際が良いね」


 筋肉質な憲兵たちが,覆面をしていたり、黒ずくめだったりする怪しげな連中を簀巻きにして引きずっていた。

筋肉が足りないからこんな馬鹿な事をするんだ、とか、こんな筋肉でよくアニキの妹さんを狙おうと思ったもんだ、とか、わいわい言いながら、にこやかにこちらに挨拶してから去っていく。

 ええー、ナニアレ……。


「さて、これで鬱陶しいのはあらかた片付いたかしらね」

「そうだねー。じゃ、本題に戻ろうか」

「えっ?」


 まだ目の前で起こった衝撃的な展開に付いて行けてないんだけど!?


「で? 結局、クロード様とはどうなってるの?」

「それなりに会ってる、って聞いたけど?」

「うえぇ~?」


 いや、ホント、待って? 


「まあ、会ってるけど、最近は特に会ってないよ? クロード様はクディル兄様にシメられたし、アラン様にお説教されて凹んでたみたいだから」

「え……」

「そうなの?」


 二人はパチリと瞬き、首を傾げた。


「うん。ちょっと、情けない姿だったかな? 私に会いづらいみたい」

「ええ~」

「なにそれ~」


 期待外れと言わんばかりの二人に、苦笑する。


「ん~、でもまあ、ただ強気で詰め寄ってくる感じより、その情けない姿の方が親近感はあったかな?」

「ああ……、まあ、それは分からないでもない……かしら?」

「ええ~、そう? イケメン英雄が、ただの同級生にランクダウンしそうなんだけど」


 二つに割れた反応に、どうしたものかと考えていると、ふと、影が差した。

 席の傍に立つ人を仰ぎ見れば、そこには……。


「お嬢様。これは運命ですね!」

「あら、ゼクスじゃない」


 アリシアの婚約者のゼクスさんが居ました。




*  *




 やあ、皆さんこんにちは。ゼクス・シュッツです。

 外回りの帰りに休憩しようと立ち寄ったカフェで、お嬢様と偶然出会いました。あああ、相変わらずお美しいです。あの親父殿の妨害で最近はゆっくり会えない期間が長かったものですから、感慨もひとしおです。


「ご一緒しても良いでしょうか?」

「私は、まあ…良いけど……。ごめん、二人とも、良いかしら?」

「私は良いよ」

「良いよ~」


 お嬢様方に許可をもらい、相席させてもらいます。


「ゼクス、仕事は?」

「終わったので、店に戻る前に少し休憩しようかと思いまして」


 ああ……、久しぶりのお嬢様です……。


「ところで、皆さんは女子会ですか?」

「そうよ」

「メリーとクロード様の事を話してたの」

「ほほう……」


 正直、メリーさんがイケメン英雄に憧れるような乙女だったら、もう婚約してたでしょうね。現実は、メリーさんが逃げ腰で、世界一強い兄が高く分厚い壁となっていますが。

 この国が普通の国なら、英雄の願い通りにメリーさんはクロード様に囲われていたでしょうが、ここはいつの間にか筋肉による『俺達のアニキ信仰』が蔓延る国になってましたから、クディルさんのお許しが無い限り無理なんですよね。


「ねー、ゼクスさん。イケメン英雄の情けない姿を見て、好意って湧くものかな?」


 何ですか、それ。詳しくお願いします。

 そうしてメリーさんから簡単に説明してもらい、腹の中で爆笑しながらも、表面上はしれッとした顔で、成るほど、と頷きました。


「そういう事なら、そういえば人間だったな、とは思うかもしれませんね」


 はっはっは、別に「イケメン、ざまぁ」とか思ッテマセンヨ。


「ただ、メリーさんのご両親に屁理屈こねて会いに行くとか、ちょっとやり過ぎですね」

「そうねぇ……」

「そうかも? ん~、けど、あれだけのイケメンで将来有望株が相手なら、ある意味女冥利に尽きるとも言えなくもない……かも?」


 リナさん、なかなか苦しいフォローですね。


「ん~。まあ、情けない姿は悪くなかったんだけどなぁ?」


 小首を傾げるメリーさんに、久しぶりにお嬢様に会えて口が軽くなった俺は、つい言ってしまいました。


「それはただ単に、ざまぁ、と思っただけじゃないんですか?」


 その言葉にメリーさんは目を見張りました。


「……そうかも!」


 どこからともなく、ミシ、と何かが軋む音がしました。周りを見渡してみれば、隣の店の旗が風に揺れてミシミシと音を立てています。おやまあ、危ないですね。折れたら大変です。後で言っておかないと。

 おや? お嬢様、そんな、余計なこと言いやがって、みたいな顔をしてどうしたんですか?


きんにくくんの人気に嫉妬。


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