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木陰のメリー  作者: 悠十
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第十一話 マケット家でお茶を



 ここ、バルード王国に拠点を構える商人の娘である私、アリシア・マケットは、時折跡継ぎとして父の商談についていくことがある。そして、今日もまた、その勉強の一環としてヴィラック侯爵家を訪れていた。


「よく来た、マケット。元気そうで何よりだ」

「ありがとうございます。ヴィラック侯爵様もご健勝そうで――」


 お決まりの挨拶から始まり、商談に入る父と侯爵の様子を静かに見守った。そして商談が纏まったところでお暇しようとした、その時だった。


「あー……、ところで、マケットの娘はメリアナ・ラニード嬢と親しい友人と聞いたのだが……」


 突然こちらにふられた話題に、目を丸くする。侯爵閣下から話しかけられるなんて、滅多に無い。


「は、はい。メリアナ様とは親しくさせていただいております」


 メリーは親友ではあるが、一応は貴族だ。少し気を使って様付けで呼んでみたが、自分で言っておいてなんだが、ちょっと背中がむずがゆく感じた。


「すまない。これは、私のごくごく個人的な質問なのだが、メリアナ嬢は、その、息子……クロードの求婚を受け入れる意思があるように見えるだろうか。君の目から見て、どう感じたか、率直な意見が聞きたい」


 何だか物凄く言いにくい事を聞かれてしまった。

 困ってしまい、父に視線で助けを求めてみるものの、父は父で視線を合わせようとせず、あさっての方向を見ている。おのれ、この狸親父め……。

 心の中で悪態をつきながら、返答に困りながらも、考え、答えた。


「正直に申しまして、分かりません。ですが、メリアナ様は現在お付き合いしている男性も、特別に好意を抱いているような方もいらっしゃいません」

「そうか……」


 侯爵はしばしの間考え、更に質問を重ねてきた。


「メリアナ嬢は、どんな男性が好みなのだろうか。正直に言って、息子ほど好物件な男は今の所いないと思うのだが……」


 あのプロポーズから色よい返事を貰えていないという事を鑑みてみれば、お断りの方向へ向かっているのだろうと侯爵は考えているようだ。

そんな侯爵の言葉に、納得しつつも、小首をかしげる。

 そういえば、メリーからどんな男性が好みのタイプなのか聞いたことが無かった。

 さて、ここで下手な事を言って侯爵の機嫌を損ねるのは是非とも避けたいので、ここは一つ、当事者同士で責任を取ってもらおうと提案した。


「では、こういうのは如何でしょうか?」


 こうして、ここに小さな悪戯のような計画を立て、その日の商談は無事に幕を下ろしたのである。




   *   *




「メリー、リナ。ちょっとウチに寄って行かない? 美味しいお菓子をお客さんから貰ったのよ」


 あのクロードさ…ん…と不本意ながらデートらしきものをしてから数日後。バイトがお休みの日に、アリシアからそんな誘いを受けた。

 私とリナはアリシアの誘いを受け、アリシアの家へと向かった。

 アリシアの家はバルード王国有数の商家で、かなり大きな店を構えている。


「あ、お嬢さん、お帰りなさい」

「お客様ですか?」


 アリシアに気付いた店員達がアリシアに声をかけ、アリシアは自室に居るからお菓子とお茶を持ってきて欲しいという旨を使用人に頼み、私達を幾つかある応接室の一つへ案内した。

 アリシアの私室にお邪魔し、テーブルを囲むと、使用人が紅茶とケーキを持ってきた。そのケーキにいち早く反応したのは、リナだった。


「こ、このケーキは……!!」


 ギラリ、と目を光らせ、ケーキに熱い視線を注ぎつつ叫んだ。


「王室御用達の超高級ケーキ専門店、『ナナホシ』のケーキ!! しかも、あの幻といわれているレアチーズケーキィィィィ!!」


 リナさん、リナさん、人が変わっています。落ち着いて!

 リナが震える手でケーキを一すくいし、口に運ぶのを思わず私とアリシアは見守る。


「ふ……。流石『ナナホシ』。この酸味と甘味の絶妙なハーモニー……。クッキー生地は程よい甘さで、無駄にしっとりもしていなく、かといって乾きもしていない……。これは既にクリームチーズから……」


 何か語りだした。


「リナが壊れた……」

「メイドのバイトで美味しそうなものを目の前で見せ続けられた所為かしらね……」


 そういえば、やたらと美味しい店を知っていたな、と思いながら自分もケーキを口に運ぶ。やたらと美味かったです。


「とりあえず、意識が逝っちゃってるリナは放っておくとして、ちょっとメリーに聞きたいことがあるのよ」


 ケーキを食べ終わり、紅茶のおかわりを貰っていると、アリシアがそう言い出した。


「聞きたいこと?」

「ええ」


 何やら重々しく頷くアリシアに、何となく背筋を伸ばす。一体、何を言い出す気なんだろうか。

 ドキドキしながらアリシアの言葉を待つが……。


「メリー、あんたの好きな男性のタイプって、どんな感じなの? というより、むしろクロード・ヴィラク様のどこら辺がダメだったの?」


 何か、どうでもいい内容のお話でした。


「あ、それ、あたしも聞きたい! あんな好物件なかなか居ないのに!!」


 リナが復活して話に乗ってきた。女の子って本当に好きだよね、恋バナ。


「メリーは注目されるのが苦手だから、クロード様と一緒に居るのはキツイいんだろうとは思ってたのよ。けど、いざとなればそれを耐えるというか、乗り越えようとするぐらいの根性もあるわよね? 今回のプロポーズは突然だったけど、クロード様は悪い人ではないことは知っているわよね? なにせ、デートしたくらいだし」

「え、デート!? デートしたの、メリー!!」


 ちょ、待て。アリシア、何故それを知っているんだ!?


「ええー、もうそんな仲に発展してたの!?」


 いや、それは誤解ですよ、リナさん!!


「デートじゃない。美味しい食べ物のお店を紹介してもらって、お昼ご飯を一緒に食べて、お友達を紹介されただけ」


 それだけです。デートではありません!!


「「デートじゃん」」


 違う!




「で、実際どうなのよ」

「どんな人が好きなの?」


 身を乗り出して聞いてくる二人に、曖昧な笑顔を向けるが、許してもらえる気配は無い。


「えーと……」


 まあ、好みの男性のタイプを言うだけだし、二人に聞かれて困るような話じゃないから、良いか。


「うーん……。これ、っていう好みは無いんだけど、まあ、優しくて、誠実で、ほどほどに頼りになる人? 容姿は、まあ、嫌悪感を抱かないくらい、かな? 別に気にしない。どうしても無理なタイプは、底意地の悪い、不衛生な人。浮気者も嫌い」


 まあ、一般的な好みのタイプなんじゃないかと思うんですが。


「ふーん……。まあ、普通、そんな感じだよね」

「うん。普通、だと思う」


 今現在、特にこの人、という感じで好きな人が居ないから、そんな事が言えるのかもしれないけどね。


「ねえ、メリー。メリーって、実はクロード様の事、どちらかというと好きよね?」


 何か、アリシアがとんでもない事を言い出したんですが。


「え、そうなの!?」

「ここには私達しか居ないわ。正直に言ってよ」


 いやいやいや、何を言って……。


「メリーって、結構顔に出やすいのよ。嫌いなら、それっぽい表情をするもの。メリーがクロード様関係でしている表情って、いつも苦笑いなのよ」


 ……わーお。流石アリシア。ヨク見テイラッシャル。


「うぅ……。だって、悪い人じゃないし、というか、良い人だし……」


 国の為に、人々の為に魔王討伐に行っちゃうような人だよ?

 まさか、主に自分の為だけに魔王討伐に行ったとは思いもせず、そんな事を考える。


「どちらかといえば、尊敬できる人だと思う。人間的には、好きなタイプだよ」


 できれば、お友達止まりでお願いしたいけどね!

 そんな事を考えながらそう言った時だった。


――ガタッ!


 隣の部屋から物音が聞こえた。

 何だろうと思い、視線を壁に向ければ、それに気付いたアリシアが言う。


「ああ、今、隣の部屋、掃除中なのよ。隣は物置なんだけど、少し五月蝿いかもしれないわ。ごめんなさいね」


 そうなんだ。アリシアの家ってお金持ちだから、不意の物音とか恐いんだよね。泥棒かと思っちゃうんだよね。


「メリーがクロード様を避けるのって、周りの嫉妬が恐ろしいからよね? じゃあ、もし、クロード様がメリーにつりあう位の身分だったら、メリーはクロード様とお付き合いしてたかもしれないの?」


 うーん?


「そう、だね……。それに、更に英雄じゃなかったら、お付き合いしてたかも?」


 少し悩んでそう言った、その時……。


――ガッタァ!!


 再び聞こえた物音。


――ちょ、おちつ……ここ、壁……!!

――静か……。

――……押さえ……!!


 次いで聞こえてきた人の話し声に、リナと顔を見合わせ、アリシアに視線を向けた。


「ここ、少し壁が薄いのよ。だから商談には向かなくて、こうして友人を呼ぶ専用の部屋になってるのよ。けど、ちょっと五月蝿すぎたわね。部屋を移る?」


 そう尋ねるアリシアに、私は首を振って、そこまでする必要はないと伝えたが、リナは何処か訝しげな様子でアリシアを見つめていた。


「アリシア……」

「何? リナ」

「……ううん、何でもない。ちょっと、お手洗いを借りるわね」

「どうぞ」


 そう言って席を立ったリナだったが、数分もしないうちに部屋に戻ってきた。


「あれ? 早かったね、リナ」

「ええ……まあ、ね……」


 リナは部屋に戻ってくるなり、ジト目でアリシアを見つめた。


「アリシア……」

「……言っておくけど、あの事があってから、私もその人の人柄だの何だのと調査したのよ。それで、まあ、信用の置ける人だっていうのは、確信してる。あとは、本人達の気持ちしだいなんだけどね。ただ、いろんな意味で、家が家だけに、ってやつでね」

「………」


 すいません。二人とも、何を話しているんですか? 話についていけないんですけどー?


「……っはー。まあ、アリシアも微妙な立場だもんね」

「事が終わったら、ちゃんと謝るわよ」


 だから、何の話!?


「仲間はずれ反対!」

「「………」」


 二人は顔を見合わせ、眉を下げて、笑った。


「「メリーって、色っぽい話は似合わないよね」」


 え、何!? 貶された!?




   *   *




 あー、テステス。こちら隣部屋です。薄い壁の向こう側です。リナさんにバレてしまった盗み聞き隊です。どうぞ?


「おい、ゼクス。お前もぼーっとしてないで、手伝え」

「あ、すいません」


 はじめまして、皆様。俺の名はゼクス・シュッツ。マケット商会のご息女、アリシア・マケット様の婚約者です。ちなみにマケット商会で働いています。

 現在、俺の前には我が国が誇る若き英雄、クロード・ヴィラック様が顔を真っ赤にして固まっています。さっきまでは動揺のあまり、物置においてあった小さな机に思わずヒビをいれていました。粉砕は免れましたが、後で弁償してくださいね。


「クロード様。お気を確かに。いつまでも天国に居てはいけません。こういう時は必ず後に地獄が待っているんです。そういうものなんです」

「ちょ、何言ってるの、ゼクス君!?」


 いえいえ、先輩。こういうのは早めに教えておくのが良いのです。お嬢様とお付き合いさせていただいて早三年。山あり谷あり親父ありの三年間でした。婚約とか、奇跡です。一生の運を使い果たしました。よって、未だ入り口にも立っていない若者には、こうして現実の厳しさを教えてあげるのが、先達の役目と言うものなのです。


「……お前、もしかして、今日お嬢様と何か約束とかしてた?」


 デートの約束がありましたが何か? どこぞの親父の妨害工作があって中々暇が出来なかったところを強引にもぎ取った休暇でしたが、何か? 何か問題でも?


「……俺が悪かった。だから笑顔なのに目が笑ってないとかヤメテ!」


 はっはっは。アタックしつづけて一年。お付き合いを始めて三年。そして婚約に至った俺には、目の前の英雄など、恐るるに足りません。いきなりプロポーズ? ちゃんちゃら可笑しいです。まず、それとなく距離を埋め、微妙な距離感からアタック開始です。それなのに、いきなりプロポーズ? ありえません。それがどんなお金持ちの美男子でも、女の子は引きます。警戒します。はっ、これだから突っ走るしか能の無い若造は!


「ちょ、お前が地獄に突き落としてどうするの!?」


 ああ、顔の赤みが引きましたね、クロード様。良かったですね。とういか、何で先輩もクロード様も俺の考えている事が分かったんですか? もしや、エスパー?


「全部口に出てるから! 駄々漏れだから!」

「おや、失礼しました」




   *   *




「……何だか、馬鹿が馬鹿な事をしつつも面白い事をやってのけた気がする」

「何? その変な予感は」


 なんだか何処からか電波を受信したらしいアリシアの言葉に首を傾げつつ、会話を続ける。


「それで、つり合いの取れる家柄なら、クロード様のプロポーズは受けたかもしれないのね?」


 アリシアの確認を取るような言葉に、私は目を丸くして答えた。


「まさか! 受けないよ!!」

「「は……?」」


 いやいや、だって、ねぇ?


「お付き合いの申し込みと、プロポーズじゃ重みが違いすぎるよ」

「「へ……?」」


 お付き合いしてもいいと思う相手と、結婚相手じゃ理想のタイプが違うんです。


「もし結婚するなら、好みのタイプをもっと限定する」

「そ、そうなの?」

「それって、どんなタイプなの?」


 どこか引き攣ったような笑顔で聞いてくる二人をちょっと不思議に思いつつも、正直に答えた。


「ちゃんと就職してて、収入があって、優しくて誠実で、容姿は朴訥とした人がいい」

「前半は納得するけど……」

「容姿は、朴訥とした人って……」


 いや、何、二人とも。そんな変な顔して。


「美形はもちろん嫌いじゃないよ。けど、落ち着かないから嫌。結婚するとずっと一緒でしょ? それなら、一緒に居て落ち着く人がいい」

「……ああ、そういう考え方ね」

「まあ、わからないでもない、かな? けど、お付き合いしていれば、美形も慣れるものだよ?」


 うん。私もそう思う。だから、お付き合いならしてみようかな、とは思うよ。


「けど、いきなりプロポーズは無い」

「そ、そう……」

「……アリシア、ちょっと、もう一度、お手洗い借りてもいい?」

「……どうぞ」


 二人とも青ざめちゃって、どうしたの?




   *   *




 天国から地獄へ真っ逆さま。予言師になれそうなゼクスです。再びこんにちは。

 目の前には真っ白になって項垂れる英雄様がいます。ここは一つ、先達の一人として慰めようじゃありませんか。


「大丈夫です、クロード様。女性は一人ではありませんよ」

「抉ってる! 抉ってるよ、ゼクス君!」

「何を言っているんですか、先輩。うっかり勢いに任せてプロポーズやらかした若者を優しく慰めているっていうのに。プスス」

「何、最後の笑い声! 人選ミス! 誰だ、こいつを接待役に回したの!?」

「ちょっと、そんなに騒いだら隣に聞こえますよ」


 あ、リナさんが来ました。


「こんにちは、リナさん」

「こんにちは、ゼクスさん。あー、やっぱり落ちてるわね、英雄様」

「そうですね。ああ、カワイソウニ……」

「いや、追い討ちかけたのお前だからね」


 何の事やら。さっぱりです、先輩。


「まずいぜ、このままこの状態で侯爵家に送り返してみろ。流石にうちの商会と手を切るなんてことはしないだろうけど、印象を悪くするぜ」


 あ、それはちょっと困りますね。お嬢様の生家に傷をつけるのは気が引けますし、何より幸せな結婚生活には職場は欠かせません。


「仕方がありませんねぇ。この俺が、直々に、つれない女性の口説き方の秘訣をお教えしようじゃありませんか」

「「「え……」」」


 なんです、みんな揃って。というか、クロード様復活したんですか。早いですね、流石は英雄。


「お嬢様にお会いし、一目ぼれしたのが四年前。当時十二歳だったお嬢様はそれは可憐な方でしたが、恋愛にはこれっぽっちも興味は御有りではありませんでした」

「……あー、そういえば、そんな感じだったな」

「そうね。アリシアって、そういう方面には淡白だったわ」


 二人の賛同を頂いたところで、本題です。


「そんなお嬢様とお付き合いするのに、一年かかりました」

「当時のお嬢様の様子を考えると、奇跡としか思えんな」

「そういえば、変なやつが居る、から、気になる人が居る、に変わるのは半年強くらいだったわ」


 どうです、素晴らしい手腕でしょう。根性のいれ方が違うんです。忍耐の強さが違うんです!


「ど、どうすれば……」


 あ、食いついてきました。ふ、世界に名を轟かせた英雄といえど、俺にとっては恋に迷う哀れな子羊です。


「まずすべきは、距離を埋めること。まあ、クロード様のことですから、既に逃げ道を塞ぎつつ接近を試みていると思いますが」


 クロード様が真剣な様子で頷きました。予想通りのようですが、先輩とリナさんは顔が引き攣っています。何をそんなに引いているんです。どうしても欲しいなら、それ位はしてみせるものですよ。まあ、今回はちょっと、それって下策なんですけどね。


「ですが、今回はそれはいけません。メリアナさんのようなタイプの方は、一つくらいは逃げ道を用意しておくべきです。でなければ、結婚した後に響きます」


 ガーン!

 まさにそんな擬音が似合いそうな表情で、クロード様がショックを受けています。見物ですね。


「自分の意思ではなく、完全包囲されたため、仕方なく結婚したと思われてもいいんですか?」

「まさか!」


 クロード様。否定するのは良いのですが、もう少し静かにお願いします。


「用意した逃げ道を見張りつつ、相手の態度が軟化するのを、こちらに慣れるのを辛抱強く待ってから、アタック開始です。メリアナさんのようなタイプに必要なのは、こちらの忍耐と根性です」

「忍耐と根性……」


 いきなりプロポーズに突っ走ったイノシシには難しいかもしれませんね。ですが、これは絶対に必要なのです。


「クロード様の場合は立場が立場ですから、色々と気をつけなければならない事が沢山あって大変でしょうが、それだけは覚えていてください。時には勢いも必要ですが、貴方の場合は力が有り余ってそうですから、そのままメリアナさんを勢いのまま引き摺ってゴールインしそうなんですよね」

「「あー……」」


 先輩とリナさんが納得するように頷いています。もはや、目の前の御仁が大物だという事を忘れているようです。え、俺? 覚えていてこの態度ですが、何か?


「攻める時は攻め、引くべき時は引く。機を見逃さないように、その時まで我慢です。誘惑に負ければ、メリアナさんとの真のハッピーエンドは迎えられません」


 うんうん、と頷く英雄様。素直で大変よろしい。


「わかりましたか?」

「わかりました、師匠!」


 某日マケット家の物置にて。

 俺、ゼクス・シュッツは英雄様の恋の師匠として尊敬を受ける存在となりました。某親父殿、ご褒美として休暇を下さい。そしてお嬢様、デートしましょう。





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