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すみれが居ない家

すみれが居なくなって1ヶ月になろうとしている。

俺はすみれが居なくなって10日後、すみれが勤めている会社に連絡した。

すると「退職されました。」という返事だった。

すみれは会社を辞めていたのだ。

俺は会社の同僚に頼み込んで話を聞いた。

今の俺はプライドも何もかも捨てるしかなかった。


「恥ずかしい話なのですが、妻が居なくなってしまって……。

 何処へ行ったのか分からないんです。

 情けないです。

 何かご存知なことがあれば教えて下さいませんか?」


職場ですみれの同期という女性3人はお互いの顔を見合わせて言った。


「済みません。

 私達もそんなに親しくなかったので知らないんです。」

「済みません。

 お役に立たなくて、同期の中ですみれさんだけが輪に入らなかった。

 入りにくかったのかもしれません。」

「本当に申し訳ないんですけど、一緒に居る時間もプライベートな話はしなかった

 のが、すみれさんだったんです。」

「本当に一切話してくれませんでした。」

「そうですか………。

 すみれは入りにくかったのかもしれませんね。

 人見知りというだけではなく、親が居ないから……。」

「ご両親が?」

「ええ、亡くなってます。」

「そうだったんですね。」

「私達、親の話とかも出てたのかもしれないです。」

「悪かったなぁ……知ってたら違ってたかもしんない。」

「いいえ、皆さんは全く悪くないです。

 ………今日は本当にありがとうございました。

 お時間を頂戴しました。」

「いいえ、お気を落とされませんように!」

「何か分かったらご連絡しましょうか?」

「いいえ、結構です。

 警察に相談しますから……。」

「そうですか……御身体を大切になさって下さいね。」

「きっと見つかりますよ、ねぇ。」

「うん、そうだわ。見つかります……というか帰って来ますよ。」

「ありがとうございます。 では、失礼いたします。」



俺は警察に相談した。

あのメッセージも見せた。


「事件性が全く無いとはいえませんね。」

「……このメッセージだけで、もう何も届いてません。」

「もし、事件性が無い場合で奥さんが見つかったとしても、帰られない場合も考え

 て下さい。」

「帰らせることは出来ないんですか?」

「大人の方は本人の気持ちが最優先されます。」

「そうですか。」

「データベースに入れます。」

「はい。」


そして、事件性が全く無いとは言えないとのことで警察が自宅にやって来た。

刑事と鑑識が数名でやって来た。

もう近所には知られているのだろう。

俺の指紋も必要だった。


「あれからメッセージもしくは電話はありましたか?」

「いいえ、何もありませんでした。

 あの……。」

「はい。」

「妻が会社を辞めていました。」

「辞めていた? そうですか……。」


鑑識の一人がノートパソコンを持って来て聞いた。


「このノートパソコンは何方の物ですか?」

「それは俺のです。」

「見ても?」

「はい。どうぞ。」


「ご主人、このメールをご存知でしたか?」

「メールですか? 見ていません。

 俺が仕事で使っていたパソコンなのですが、最近は使ってません。」

「このメール、ご存知では無い。」

「!」

「このメールは、ご主人の不貞行為を奥さんに教えている内容ですね。」

「そんな………誰が……こんなこと………。」

「私の個人的な考えですが、奥さんの失踪は事件性が無い可能性がありますね。

 奥さんがこのメールを読んだのなら、家を出る可能性もありますし、あのメッセ

 ージも奥さんかもしれません。

 このメールが無ければ事件性が高いと思います。

 ただ、事件性が全く無いという訳ではありません。

 あくまで可能性の話です。

 誰かが侵入して奥さんを拉致した可能性も残っています。

 指紋の結果などは後程お知らせします。」

「お願いします。」


俺はこの家に居るのが嫌になった。

だが、今は出て行けない――そう思っている。

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