炎
すみれが居なくなってからも俺は紬との距離は変わらなかった。
紬と居るホテルで、俺はシャワーを浴びた後、スマホの画面を見ていた。
すみれからはメッセージが送られてない。
メッセージを送っても既読にすらならない。
「なんだよ! 無視しやがって!」
「なぁに?」
「何でもない。」
紬は俺の手からスマホを取った。
「おいっ!」
「何ぃ~? このメッセージ!」
「おい、返せ。」
「かまってチャンなの? 奥様。」
「そんなことないだろ? あれから既読にすらならないんだからな。」
「あら? 心配?」
「そんなことない。ただ…………。」
「ただ、なぁに?」
「家が酷い状態でな。家事を任せてたのに、帰って来ないんだから……。」
「私がしてあげようか?」
「家には来るな! それをしたら、終わりだぞ。」
「分かってるわよ。」
「お互いの身の為、分かってるよな。」
「分かってるわ。私も家庭を壊す気なんかないもの。」
紬は俺に口づけしてから再度言った。
「奥様はかまってチャンだっただけよ。
ねっ、貴方もそう思うでしょう?」
「自作自演、そうかもな。」
「貴方の愛が冷めてから、随分経つものね。」
「………。」
「私の存在、ご存知ないままなのね。」
「おい!」
「知らせないわよ、ってか知らせられないわ。
知らないもの。連絡先!」
「そうか……。」
「実家に帰ってたりしてね。」
「えっ?」
「奥様!」
「あいつに実家は無いよ。」
「え?」
「あいつの親は亡くなってるんだ。」
「じゃあ、おばあさんとか……。」
「居ねぇよ。あいつの両親は施設で育ったんだ。
両親ともに捨てられてたんだってさ。
だから、あいつの家族は俺だけ……。」
「じゃあ、その唯一の家族に裏切られてるんだ。」
「裏切り……そうだな。」
「家を出たのは裏切りを知られたからじゃないの?」
「まさか………。」
「それで、かまってチャンになっちゃったのよ。きっと………。」
「……………まさか……な。」
「大変ね。貴方も、そんな奥様じゃ……そろそろ変える?」
「何をだ?」
「奥様を変えるの。」
「何言ってるんだ。」
「私に! ねっ!」
「紬………。」
再び、紬は俺の唇に……俺の言葉を遮るように口づけをした。
紬と会っても、俺は以前のような気持ちになれなくなっていた。
燃えないのだ。
情熱の炎は消えつつあるのかもしれない。




