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会える?

すみれからの連絡を俺は待っている。

何時まで待っても連絡は無いかもしれない。

だが、連絡が無いということは離婚はしないということ――そうとも思えた。

すみれが居なくなってから、俺の生活はすみれが保ってくれてたんだと分かった。

今は母が保ってくれているが、寂しさは増すばかりだった。

紬と別れたからではなかった。

あんなに燃え上がっていた不倫の恋の炎は、跡かたなく消えている。


⦅俺が男だと自信を取り戻してくれた関係だったな……。

 生活を考えなくて、いい関係だったな。

 恋愛感情だけで、責任も何も取らなくていい関係。

 その恋愛感情も、本物じゃなかったんだ。

 その場の雰囲気というか………。

 恋しているという錯覚?

 否、違うか…………本気だと思ってたけど、俺は違ったんだよな。

 あの恋愛感情は本物だと思ってたけど、責任を取らなくて良い楽な不倫を求めて

 たんだな。

 最初から最後まで、恋愛じゃなかったんだ。

 本気にならないのは、なれなかったのは、最初からだった……。

 でも、紬のお陰で一緒に居る間は男としての自信を取り戻せてた。

 その為に関係を持ったのか……俺は……。⦆


独寝(ひとりね)の夜が、こんなに寂しいものだとは思わなかった。

いつも隣には、すみれが居た。

居るのが当たり前だったのだ。

いつも傍に居るのが当たり前だった。

すみれと違う女性と過ごした時間を俺は思い出すことすらなくなった。

思い出すのは、すみれとの時間だった。

家に居る時間、通勤時間……駅のホームでも、二人で入ったことがある店の前を通りかかっただけでも、俺は思い出して寂しさを感じた。

こんな風になるとは思わなかった。

分かっていたら不倫などしなかった。



寂しさを感じながら仕事を終えて家に帰ろうとした時、スマホがバイブレーションして着信を知らせた。

知らない電話番号だったが、⦅……誰なんだ?……すみれか? すみれかもしれない。⦆と思った俺は慌てて電話に出た。


「こんばんは、初めまして。

 私は木村すみれさんを支援させて頂いております森下弥生と申します。」

「すみれのことを御存知の方なんですね!」

「はい、今、私どものシェルターで暮らして頂いております。」

「妻がお世話になっております。」

「いいえ……今、お話させて頂くお時間はございますか?」

「はい。仕事も終えましたので、今から帰るだけです。」

「ありがとうございます。」

「いえ、こちらこそご連絡下さって、ありがとうございます。」

「木村さん、すみれさんがお会いすると仰いまして。」

「そうですか! そうですか……すみれが……会ってくれるんですね。」

「はい。それで、そのお話の内容でございますが………。」

「はぁ、あの今伺うのは……すみれの口から直接聞きたいですし……。」

「それは、そうですね。承知しました。

 では、こちらの施設ではなく、別の場所ですが、日時を決めさせて頂きました。

 日時の変更は出来ないとお考え下さい。」

「はい、承知しました。

 よろしくお願いします。」

「こちらこそ、よろしくお願いします。

 では、日時をお知らせいたしますが、ショートメールで送信することも可能でご

 ざいます。

 間違いなくお伝えできることと存じます。」

「はい、ショートメールでご送付ください。」

「承知しました。では、この番号で送信させて頂きます。」

「はい。よろしくお願いします。」


電話を切ると、直ぐにショートメールが送信されてきた。

そのメールに詳しい場所と時間が記されていた。

俺は、すみれに会える喜びの方が不安よりも遥かに大きかった。

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