14
「ビアンカ。無駄な抵抗は止めた方がいい。できれば綺麗なままで俺の傍にいて欲しいんだ」
ジェラルドは、まるで愛しい女の口説くようなセリフをビアンカにかけた。
男たちが、ジリジリと距離を詰めている。
自分が満身創痍であることはわかっている。
手に持った重にも、銃弾があとどのくらい残っているのかわからない。
ビアンカは銃を握り直し、右足を引きずりながら立ち上がった。
「……ジェラルド。あなただけは絶対に許せないの。一緒に地獄へ落ちて頂戴」
男たちが銃を構えて自分に狙いを定めている。
――もし自分が先に撃てば、きっとハチの巣にされてしまうのだろうな
じっとそこに立ったまま、ビアンカは妙に冷静にそう考えていた。
もう少し粘りたい。
せめて橋の向こうに味方の気配がするまで。
今、私が死んでしまったらミルバを守れることができなくなる。
ここから先へは――
誰も、通さない。
「もう2,3発足を撃って、動けなくしておけ。さっさと掴まえないと奴らが来るぞ」
ジェラルドのその言葉に、互いに緊張していた空気の中で端の男の銃の撃鉄が起きる音がした。
――ここまでか
ビアンカはジェラルドに銃口を向けたまま、せめてこの男の命を奪うぐらいのことはしなくてはいけない、と心に決めていた。
その時、ふっと遠い山道を駆けあがってくる複数の気配が感じられた。
恐らく獣人である自分にしかわからないだろう気配。
ビアンカは息を吸い、短く吐いた。
そして、素早く撃鉄を起こすと、ためらうことなくジェラルドの眉間を狙った。
ビアンカの銃が火を噴いた直後、それを追うようにいくつもの銃がビアンカに向けて銃弾を発した。
『ヴィ』
ビアンカの耳にロイドの声が聞こえた。
彼女の体は、銃弾から逃げたはずみの衝撃で、支えにしていた橋の支柱から離れ力を失い、崖下へと舞うように落ちていった。
◇◇◇
ビアンカの遠吠えに気づいたのは、残党を追って山間を巡回していたグルドだった。
すぐに向かうと遠吠えを返したが、かなり遠方で自分たちが風下にいたため、その声に返事は無かった。
グルドのいる場所を中継として町へも連絡がついた。
仲間にしかわからない響きで、そしてそれを知る者同士の中継で繋がれる。
獣人の遠吠えは実に優秀だ。
それを聞き、ロイドはすぐに馬を駆って山へと向かった。
そこで見たのは、眉間を撃ち抜かれ息絶えたジェラルドと瀕死の男2人。
「俺が来た時には、もう、こんな様子だったよ」
グルドがそう告げ、保護されたミルバが小さな岩に腰かけて毛布にくるまれていた。
「ビアンカはどうした。最初の知らせはビアンカからだったんだろう?」
遅れて他の隊を引き連れてやってきたロイドは、周囲を見回してグルドに声をかけた。
その瞬間、グルドの顎が引き攣れる。
「ロイド。言いにくい話だが……ビアンカは崖から落ちたらしい」
ロイドは、一瞬、言葉の意味がうまく理解できていないような表情をした。
しかし、すぐにひどく低い声でグルドに詰め寄る。
「グルド……何を…」
「ビアンカは、こいつらに撃たれて崖から落ちた」
グルドの表情が意味するものを理解すると、ロイドは足元がまるで揺らいで消えてしまうように感じた。
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