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魚人先輩の乳首当てゲームを初めて30年が経ちました

作者: しいたけ
掲載日:2026/01/29

 たった今、自分が出したばかりのチョキに渋い顔を向け、そのままケタケタ笑うクラスメイトに目潰しを食らわしてやった。


「負けたんだから、見苦しい足掻きしてないで、さっさと魚人先輩を乳首当てゲームに誘えよ」

「くっ……!!」


 魚人先輩はおっかない先輩だ。

 普段なら冗談すら言えないくらいの人で、ふざけていて魚人先輩とぶつかった後輩が、体育館裏でピクピクにされたのは記憶にも新しい。


「せ、先輩……い、今……いいですか?」

「ぎょ?」


 魚人先輩はスパイクの靴紐を結びながら声だけで返事をした。殺される。俺は逃げたい衝動に駆られた。


「お、俺と……その……ち、乳首当てゲーム……しません……か?」

「ぎょぎょ!?」


 先輩は、近くにあったバットを手に取った。たまらず俺はドアの後ろに隠れた。


「せ、先輩が勝ったら一万! 一万払います……!!」

「ぎょ〜?」


 バットがスッと下ろされ、俺は少しばかり生き延びた喜びに満たされた。


「百万だ」

「えっ!?」

「俺が勝ったら百万よこせ」

「ま、マジすか……!?」


 先輩は悪そうな顔で、てか悪い顔で言った。

 普通に喋れるとか、そんな事すらどうでも良くなるくらいの金額に、俺の頭の中は一瞬で恐怖に支配された。


「わ、分かり……ました……」

「ぎょぎょぎょ〜!!」


 そう言うと、先輩は来ていたユニフォームのボタンを外した。薄黄色のスポーツブラが──


「先輩女だったんスか!?!?!?!?」

「ったりめーだろ!! テメーまさか……」

「いやいやいやいや!!!!」


 魚の顔で男女の区別つくかよ!!



「下顎見りゃあわかんだろ、常識だぞ」


 知らねーよ!! サンマかよ!!


「てか先輩乳首あんスか?」

「……ぎょぎょ〜?」


 クソ、肝心な所を『ぎょ』で誤魔化しやがった。


「乙女の秘密だよ。当てたら教えてやる。勿論外れたら百万だからな」

「……」


 こうして、世界一楽しくない乳首当てゲームが始まった──。






 ──カランカラン。


「ママ、久しぶり」

「あら芳さん、久しぶり。どうしたの? ここに来る時は大抵何かあった時じゃない? いつものでいいかしら?」

「ああ……。昼間にな、ちと知り合いと揉めちまって」

「あら、そうなの?」

「大抵月に一回は会って、メシ食ったり、どっか遊びに行ったりする仲だったんだけどよ……」

「ふ〜ん。それで?」

「今までは大抵お互いの空いてる日が重なってて、それでその日にしてたんだけど……しばらく忙しいって言われてよ……」

「あら、寂しくなっちゃって喧嘩したの?」

「べ、別にそういうんじゃなくてよ……なんつーか…………俺も歳食ったのかなって」

「ふふ。別にいいんじゃないかしら? またそのうち会えるわよ」

「そう……かな。ママは居ねぇのかい? なんつーか、別に約束とかしてなくても、ふらっと会って適当に飲んで食ってする様な相手」

「そう、ねぇ……」

「つーか、ママはそろそろ身を固めたりしねぇのかい? 余計なお世話かもしれねぇけどよ」

「分かってたら言わない方がいいんじゃなくて?」

「だな。ママ、おかわり」

「はいな。……まあ、ね。居ないことは無いのよ、別に」

「え?」

「月に一度、もう三十年になるかしら」

「そうなのかい? そんな奴がいるなんて、初めて聞いたぞおい」

「百万払うのが嫌だからって『勝負はまだ終わってない』とか言って、月に一度やって来ては酷いことをする奴がいるのよ? 五年くらいは一緒に住んだ事もあるわ。私が結婚しないのも、それが理由の一つかしらね」

「よく分からんが、気になるなあ」


 ──カランカラン


「あ、噂をすれば……私の乳首を当てに来た奴が」


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― 新着の感想 ―
タイトルの吸引力ダイソンかよ
純文学って奥が深いんだなあ
これは純文学ですわ( ˘ω˘ )
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