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[#6-双方が抱くリアリティへの眼差し]

[#6-双方が抱くリアリティへの眼差し]


『じゃあ、また明日ね!』

『う、うん!また、あした⋯ね』

『うん!おやすみ』

『おやすみ⋯でふ』



はぁ⋯⋯⋯ヒナから仕掛けたのに、だいぶと緊張しちゃったよ⋯⋯。はぁ⋯⋯夜なのに、こんなにも汗もかいちゃったし⋯。

あーあ、お風呂もう一回入ろうかな⋯。

まぁでも明日、起きてからでもいいか。

うん。


⋯イゾラスは、『ありがとう』と、言ったことが無い。

イゾラスみたいに、根暗な男の子って初めてだからどう扱って良いのか分からなくなる。

それでもイゾラスはヒナを選んでくれた訳であって⋯。ヒナはヒナで、それを受け入れた訳であって⋯⋯。

じゃあ、ヒナがどうにかしてあげないといけないんだよね。

ヒナ、⋯⋯私、イゾラスのことを幸せにしてあげられるのかな⋯。ちょっと心配になって来ちゃった。

でも、私は⋯イゾラスの事が本当に大好き。

心の底から大好きだって思ってる。

これが本人に伝わっているのかどうか。

いっぱい伝わってほしい。

イゾラスは、経験が無い。

恋愛経験がゼロな男の子。私は、まぁまぁ、、、経験している。

いい想いも悪い想いもいっぱいした。

そんな酸いも甘いも知った女だからこそ、いっぱいいっぱい“楽しい”で満ち溢れた毎日を今回は送りたい。

⋯こうして過去の恋愛を振り返ってみると、私は、ほんと軽い女だったのかもしれないな⋯と思ってしまうね。


いや、あの違うよ。別に⋯⋯誰でも彼でもって訳じゃあ無いからね。一応、私が好き⋯ってなった男の人だけ⋯。

そう、“男の人”だけ。


はぁ⋯。私、汚れた女の子だよね、ほんと。

あんまり、良い経験値を積んできたとは言えないよ。こんな事、イゾラスには絶対言えない。言ったらどうなるんだてん。

軽蔑して、その日から直ぐにコミュニケーションを断絶されるだろう。


イゾラスには友達が少ない。いつも一緒に居る⋯(私が勝手にそう思ってるだけかもしれないけど)ルシースとレノルズ。あの二人以外とつるんでる姿を見た事が無い。

私という存在を切っ掛けに、イゾラスには沢山の人と交友関係を築いてほしいなぁ⋯とは思ってるんだけど⋯ちょっとそれは無理かも、、今は。


私がどうにかしなきゃ。


イゾラスはほんとに、良い人なんだ。

高校一年生の時、高校二年生の時。


私は、イゾラスとは全く異なったコミュニティにて高校時代を過ごしていた。こうして同じクラスにならなかった限り、たぶん、二年間の高校生活が三年生になっても継続されていた事だろう。


イゾラスの良いところは私が知ってる。

それをみんなに知ってほしいなー。


でもそれをイゾラスが望んでいるかな。

⋯⋯⋯⋯⋯⋯要らぬ動き⋯かな。


ちょっと、そういった事も今度、聞いてみる事にしよう。

明日、聞けばいいのかもしれないけど、イゾラスと一緒に居ると必ずと言っていいほど何かしらの“事件”が起きちゃうから、『絶対に言おう!絶対に言おう!聞いてみよう!』とは思わないでおく。

そしたら事後反省をせずに済むから。


ふぅ、て、、、、いま、事後反省しちゃってんじゃないの??


もう寝よう⋯⋯。疲れてんだ、私。


横になり、布団にくるまった。こうなると自然に睡魔が襲って来る。不思議と瞼に重力が伸し掛ってきて、みるみるうちに視界が暗黒へと切り替わっていく。



⋯⋯あ、そういえばだけど、

どうして私、あの生徒の大群から、人気の無い場所に居たんだろう。

そこにイゾラスは居た。目が覚めたら、てか、『目が覚めたら』ってなんだ?あの時私、眠気なんてなかったよな。

そんな眠気が起きる程、余裕のある状態じゃなかったし。

⋯⋯⋯なんなんだろう。寝ぼけてたんかな⋯。


⋯まぁ、いいや!



翌日。

昨日の件もあって、学校へはあまり行きたいとは思えない。それでも、昨夜の電話でティヒナは⋯

『明日、学校来てね!大丈夫だから!ヒナが守るから』

と言ってくれた。

『守るから』なんて、女の子に言わせていいものな訳が無いだろ。オレはもうそこまで落ちぶれた存在なんだな。

でも、実際のところティヒナがガーディアンとして機能してくれるのは、頼もしいものではある。それに⋯ティヒナが⋯⋯オレのガード⋯か。

それって⋯なんだか、オレのSPみたいな感じがしてちょっと笑っちゃう。


─────────────

『イゾラス様を護衛しろ』

『了解』『了解』『了解』

『前方に外敵を確認。二人は即座に外敵へのインターセプト対応を開始せよ』

『了解』『了解』

『お前は依然、後方への警戒を怠るな』

『了解』

『あ、あのーー』

『はい。なんでしょうか』

『ティヒナ、あの、別にそこまでしてオレって守衛するモンじゃないから⋯』

『いいえ、イゾラス様は重警備するに適したお方です。よって⋯こういったアーマード装備も準備しております故』

『あ、、、、あ、、そぅっすか⋯』

─────────────


いやいやいやいやいやいやいやいや、カッコイイけど!

見惚れるけど!

特殊部隊な所にいて、勇ましい顔で時たまこちらを見つめる・みたいな!そんなヴァルキリー感溢れるティヒナも興味あるけど!

でも、やっぱりオレは今のティヒナが一番良いな。

その為には⋯そうだな。

オレが変わらなきゃ。

そうしなきゃダメなんだ。



朝。

ティヒナと一緒に登園する事になっている。

ティヒナから指定されたのはカーマ・ノドンス高等学園の最寄り駅近くに位置する公園。大陸政府が管理している広大な公園だ。朝から多くの人間が利用し、昼前からは保育園の子供達が遊具で遊んだり、おじさんおばさんが体操・レクリエーションをしたり、花見のようなグループ飲み会をしたり⋯上げたらキリのない程に、沢山のアクティビティが満ちている憩いの場所。


朝でも、その活気には変わりは無い。

主には公園を駅までの道筋として活用している社会人が多数だが、中には犬の散歩をしている人も少なくない。


オレは、こういう所に興味が無い。湧かない。ぜんぜん。

それでもティヒナはここを集合場所として指定した。だから来た。

集合時間の十五分前に到着。

このような彼氏彼女の付き合いの場合、集合時間に男が後から現れる⋯というシチュエーションは女の子からしてみれば好感度急落下に繋がる要素を孕んでいるらしい。


そんなの嫌だ。マジで。マジでマジでマジで嫌だ。

そんな⋯時間のことごときで、ティヒナから嫌悪を抱かれるのはマジで嫌だ。


───────────

『おっそ。陰キャのくせしてヒナを待たせるんだ』

───────────


ゲエエエアアアァ!!

こんなの嫌だァァ!!!!


一番乗り!これ、マジで絶対だ。

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