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[#4-今までの“愛”の在り方を根幹から捻じ曲げる]

[#4-今までの“愛”の在り方を根幹から捻じ曲げる]



警備員を振り払うように、イゾラスの元へやって来たのはティヒナだった。近くに居た警備員には目もくれず、周辺の野次馬なんて一切気にもとめず、ティヒナはイゾラスに抱き着いた。

「ねぇ?イゾラス⋯!何してんのよ!?⋯⋯ヒナ、もう⋯どうすればいいのかって⋯心配してたんだよ⋯」

「ああ⋯ごめんね⋯心配かけちゃって⋯」

「ちょっと見せて?」

ティヒナはオレの顔を見て、怪我が無いかを見ている。かなり顔面の細部まで目を通していた。

「これは?元々のアザ?」

「あー⋯うん。そうだね。これは大丈夫」

ゼイファー達から受けた理不尽なアタックはもう回復している。それなのにも関わらず、ティヒナはオレの身体を心配してくれた。周りの目なんて一切お構い無しに。周りの人間⋯オレの事を知らないような人間からしてみれば、この状況は“異常”としか言えないだろう。学校一の美少女。男女問わず誰もが憧れる才女が、学校一のど陰キャの顔をじっくりと凝視し、触れ、言葉を掛けているのだ。それも“優しさ極まりない言葉”を。


生徒達は2人に視線を向ける。向けずにはいられない。その中にはルシースとレノルズの姿もあった。2人はどうにかしてこの状況を打ち砕きたいと懇願する。だが⋯自分らみたいな中途半端なスクールカースト順位の生徒が動いて収まるような状況じゃない事は、自分ら2人が一番よく分かっている。かなりの展開だこれは。

何度でも言おう。これは恐らく今後、何回でも使われる文言だ。


────────────

『学校一の美少女』が『学校一のど陰キャ』に最接近し、怪我が無いかの確認だけで無く⋯アフターケアに及んでいる。

────────────


ルシースは先陣を切って、レノルズを呼び出す。人集りが出来てしまいサークルが形成されている。その中心地にイゾラスとティヒナがいるのだ。ルシースは辛うじてティヒナとイゾラスの現在を肉眼で確認する事が出来た。だが、あまりにもな人の詰め寄りで、押されてしまい、奥へ奥へと追いやられてしまう。レノルズを呼び、帯同する形で、何とか2人の元へ⋯と思ったのだが、そんな簡単に物事が上手くいくような現状では無かった。2人は奥へ奥へと追いやられ、中心地から大きく離れた場所へと吹き飛ばされてしまう。そのサークルの外縁部には、ルシースとレノルズ同様、“追いやられ者”か“まだ到達出来ていない者”や“中心地を目指してはいないが興味はある”や、“ティヒナ好きの者”がいた。

「なんだよ⋯コイツらと俺らは同じかよ⋯⋯」

「まぁまぁ⋯しかたないよ⋯これじゃあ⋯⋯」

「つーか、これぇ⋯なんなんだよ⋯コスプレイヤーの撮影会みてぇじゃねぇか⋯」

「2人とも⋯怪我とか無きゃ良いんだけどね」

「怪我を心配しに行ってんだろ?ティヒナは」

「そうだけどさ⋯」



ルシースが『コスプレイヤーと撮影会』と比喩した場所の中心地。そこではティヒナによるイゾラスへのアフターフォローが行われていた。それを囲うようにカーマ・ノドンス高等学園の生徒達が見つめている。ティヒナは周囲の事なんて他所にして、まったく気にする様子も無かった。しかしティヒナが気にならなくても、イゾラスはさすがに現状から『脱出したい⋯』と思っている。

「ティヒナ」

「ん?⋯⋯んぇ?ちょちょっと⋯!?なにぃ??!」

オレは立ち上がり、その勢いのままにティヒナを抱っこした。自分としては思い立った行動では無かったが、ティヒナのリアクションを鑑みるに、中々予想外の行動を取っていたのだと思う。取り敢えずは⋯ここから抜け出したい⋯。その一心だった。とは言っても、どうするか⋯?このままサークルをジャンプで飛び越えるか⋯。いやいや。そんな事をするまでも無い。こんな所で“自分”を見せびらかす訳にもいかない。

もっといい舞台がある。これ以上の舞台がある。さて⋯ティヒナを⋯これは“お姫様抱っこ”とでも言うんだろうか。オレらを囲う生徒達の視線は先程よりももっと“釘付け”眼差しとなっていた。あ⋯そんな表情になるほどの行動なのかこれは。じゃあ失敗だ。オレの失敗⋯。普通に背中に“抱っこ”の類の方が良かったのかな。

でも、お姫様抱っこをされている時のティヒナの顔面が破壊的に可愛かった。眼球はトロンとしているから、つい、真正面へ視線を向けることを忘れてしまう。ティヒナの方⋯意識を下方向に傾けると、目玉がそのまま落ちてしまいそうだ。そのぐらいに彼女の当該状況を受けた反応は見る者を絶命に追い込む程の殺傷能力がある。やめよう⋯。なるべくティヒナに意識を向けるのは。

ただ、ティヒナ。とてつもないレベルでオレの行動に驚いている。やりすぎなんだな⋯これは。心臓の鼓動がものすごく伝わる。“ティヒナ自体”が心臓のようだった。



「イゾラス?どうしたの?ねぇ!どうしたの?」

ようやくオレのモノローグに終わりが訪れ、現実世界へと意識を集中させる事が出来た。オレを現実に呼び戻そうとしたのは他の誰でも無いティヒナ。オレは直立し、そのまま不動となり、胴体部には美少女を抱えている。そんな天使からの声が鮮明になっていく。

「ティヒナ、出るよ。ここから」

「う、うん⋯出るのは⋯そうだね。構わないんだけど⋯これ⋯⋯」

ティヒナは“お姫様抱っこ”の現状に、何かの違和感を覚えているようだ。そうか、やっぱりこれは突拍子も無い行動過ぎて、驚かせてしまっているんだな。

「イゾラス⋯ちょと、恥ずいかも⋯」

「あ、、、、」

言葉、出ない。あ、、、そういう感じね⋯⋯。


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「ん?イゾラス⋯?大丈夫??」

お姫様抱っこを実行している両手は下ろされていない。然しながら、ティヒナの反応を見るにこの状況に適切な行動でない事は分かった。オレは少し⋯少しだけ意気消沈してしまう。

「イゾラス?イゾラス⋯⋯ねえ?」

彼女は同じ言葉しか投げ掛けて来ない。別にそれが不満って訳じゃない。ただ今の自分が放つ閉塞的な空気感を打破するのにはもっと突飛な言動が必要だと思った。自己中心的な願いだとは分かっている。だけど、今⋯彼女には“自分だけを見てほしい”。

こんだけの生徒がいる中で、オレだけに集中してくれる存在⋯の可能性が一途でもある人なんだ。オレはティヒナを“試す”ような、“実験体”のような、扱い方をしてしまっている事に、気づいた。嫌な気はしなかった。不思議とこれが、オレの愛情表現なんだと理解している。自分から発動している感情なのだから、理解していて当然なのだけど⋯。


『お姫様抱っこ』。このワードを頭の中で描く度に、口にしたくなる。『お姫様抱っこ』。『お姫様抱っこ』。『お姫様抱っこ』。『お姫様抱っこ』。『お姫様抱っこ』。


『』を⋯「」に変えたい。是が非でも、『』から「」に変えたい。今すぐにでも、オレの口からこの言葉をティヒナにぶつけたかった。だって、今、それを行ってるじゃないか。心だけの言葉に留めたくない。口にしたい。



「⋯⋯⋯んぐぅ」

「⋯ティヒナ⋯?」

「イゾラス、このまま⋯行って?」

「⋯うん」


お姫様抱っこのティヒナが、右手をオレの背中へ向けて届けに来た。

オレの視点から見るに、ティヒナの頭部はオレの左腕で支えられている。足はオレの右腕によって支えられ、ガッチリとホールドが施されていた。そんなティヒナからの“アプローチ”に興奮を覚えてしまい、たった一言の『⋯うん』としか言えなかった自分を責める。ティヒナは視線で、『まっすぐ』という表現をし、このまま直進する事を望んだ。


「みんな、ごめんね。ちょっと道開けてくれる?」

ティヒナが、そう言うとサークル状の溜まりを形成していた生徒達は、少しずつ、まばらに、ティヒナの願いを受け入れた。“一斉行動”で無かったことに対して、彼等の固い意思が、感じられた。

もうちょっとこれを見ておきたい⋯なのか。

困惑⋯なのか。


定かでは無いが、取り敢えず、ティヒナからの発言を受けて行動に移すまでは少々の時間を要する事になった。


「ありがとう。みんな」


道がひらけた。⋯とは言っても、生徒達が消え失せたわけでは無いので、オレたちに掛けられる言葉がゼロになった⋯なんてことは有り得ない。

何を言ってるのかはまったく分からなかった。分からないように⋯?届かないように⋯?音声調整が実施されながらのウィスパーボイスは、少しムカついた。その中に段々と訪れてくる、音の拡大。

声というのは伝播していく。誰かが音量を上げると、『自分も』『なら自分も⋯』と伝わっていくのだ。

『周りに合わせなきゃ』という、謎の使命感に駆られながら、次第に訳の分からない病が感染していった。

前列。つまりはオレとティヒナを間近で見れる、言わば“アリーナ席”のような場所。伝播の感染源は外縁部方面の連中。きっとこちらの状況を最大限に把握出来ていない中での行動だったのだろう。それが前列までに伝わる。当然、前列の生徒からもオレとティヒナへの声掛けは成されているのだが、どうもその内容と言うのは他の生徒とは種類の異なったものだった。

基本的に投げられる言葉というのは“暴投”。オレへの圧を掛けるような文言が主だったり、ティヒナに対しての“疑問”を直接的にぶつける言葉が多くあった。そんな中で前列⋯一番近い場所にいる生徒達は、ティヒナを心配している声が多く散見され、オレは安心する。かといって、オレに対しての視線は冷ややか。『え、マジで??』と言わんばかりの中々の鋭い目線を突きつけられた。



このまま教室へ戻る訳には行かない⋯。と思い、足を動かす。だが、普通の人間なら、たとえ体重の軽い女性を抱っこしたとしても長時間のダッシュは不可能に近い。オレは如何に周辺の人間から“身元がバレずに”、ここから脱出出来るかを考えた。

案の定、サークルを抜けても尚、背後からついてくる生徒はいる。今は昼休み。もうそろそろチャイムが鳴り、午後の授業が始まるような時間だ。ティヒナは問い掛けを続けている。

「イゾラス?どこ行くの?ヒナ、もう大丈夫だと思うんだけど⋯」

「⋯⋯⋯⋯⋯」

オレは無言を貫いた。ティヒナには悪いけど、今は自分を“表示”させる事が出来ないのだ。だから最低限の信号だけを点灯させておく。万が一のために。


だいぶ歩いた。校舎の裏。未だについてくる生徒がいる。その生徒達をどうやって振り切ろうか⋯。

────────────

⋯⋯⋯⋯⋯今、明かすか?

────────────

いや、そのタイミングでは無い気がする。もっと、オレのこと知ってくれた後にじゃないと⋯これはダメだ。せっかく、こんな最高の人と付き合えたんだ。どうせならもっと彼女と一緒に居たい。ここでブラックアウトはあまりにもシチュエーションとして出来すぎている。

「ティヒナ」

「う、うん??」

やっぱり可愛いなぁ。今の返事の仕方も完璧だった。うっとりとした表情に、視線が定まらない恥ずかしさを秘めた声。頬が赤く火照っていて、今すぐにでもその頬を触りたい。だが今オレの右手はティヒナの太腿、左手は胴体を支えている。まぁこれでも十分幸せだ。

「目、閉じててくれる?」

「目?」

「そう。目、いい、、かな?」

「⋯⋯うん⋯分かった☆」

今の『分かった』も可愛いかった。もう何でもかんでも反応するのはやめにしよう。もう、埒が明かないぞ。

よし。ティヒナは目を閉じている。⋯⋯あんまりこういう事は思いたくないんだけど、致し方あるまい。ティヒナの瞼にグラビティを施させる。そしてこのグラビティを実行する直前に、彼女へ睡魔を襲わせた。『睡魔に襲われる』なんて言葉がこの世には存在するけど、オレは実際に“睡魔”に人を襲わせる事が出来る。ティヒナが目を閉じ、それを上書きするように睡魔が彼女の全員を覆う。これでティヒナは異常を感じたとしても、急激な眠気の発作によって、視覚をオンに出来ない。そして一応のプラスアルファ要素として瞼に重力エネルギーを発動。これで、瞼は重くなった。どんな事があっても、彼女は目を開くことは出来ない。後を追って来る奴らは、死角を使って何とか逃げ切った。⋯というのは、結構端折った説明だ。本当は、空間転移を使って、学校内で全く人気が無い場所を高速的に捜索。オレの胸に抱えられている眠り姫に危害を加えないよう、慎重に空間転移を実行していく。特別教室を選ぼうとしたが、他の生徒がまだ居ることに気づいた。音楽室、図画工作室、美術室、視聴覚室⋯どの特別教室も先客が居て、オレとティヒナの前に立ち塞がって来る。まぁ、空間転移で特別教室に降り立つ寸前に、状況を確認しているので、先客達と遭遇してしまう⋯といった事は無い。

空間転移の瞬間を見られてしまえば、オレの素性が明らかとなり大変な事態に発展する。オレはいいが、この天使を最悪の事態に巻き込む訳には絶対にいかない。


色々と学校内を探しまくった結果。ここしか無いことが分かった。それは⋯学校の屋上だ。昼休憩にも関わらず、何故か屋上には一人足りとも生徒が居なかった。これをオレは“運がいいな”と簡潔的な文言で片付ける。⋯⋯⋯いや、そりゃあ不思議だよ。昼休憩時は屋上に設置されている生徒が多く居るっていうのに、オレが空間転移を発動させここへ現れると⋯誰も居ない。

もう、、、今はこんな深く考えてる時間は無いだろうが。取り敢えずは⋯彼女を睡魔から救わなければ。


「遺伝子能力、解消」


ティヒナをベンチに横たわらせる。仰向けに。

ティヒナの胸の隆起が気になり過ぎて、集中が切れそうになる。

いいや!!何考えてるんだオレは⋯!バカか!大バカか!!さっさと彼女からSSC遺伝子を解除するんだよ。

ティヒナの身体から、オレの成分を回収する。力の入れようをミスってしまっているな。ここまで含有させることは無かった。誤算だ⋯。かなり強い睡魔に襲われている。

“襲わせてしまっている”が本来か。


ティヒナの瞳が見えてきた。とても綺麗な瞳。自分の穢れた表情が反射で映り、恥ずかしくなる。

「イゾラス⋯」

「ティヒナ、もう大丈夫だよ」

「⋯⋯ん、、ヒナ、寝てたの?ここって⋯⋯屋上?」

「うん⋯」

「あのさ⋯⋯イゾラス?」

「心配掛けちゃってごめんなさい」

「え?なんでイゾラスが謝るのよ。謝るのはこっちだよ」

「⋯?いや、それは違うでしょ⋯。オレがティヒナを巻き込むような事にしてしまったんだから⋯それに、オレなんかと付き合ってる事が周りに知れちゃったし⋯」

「そんなの、ゆくゆくは知られていく事なんだから、ぜんぜん気にしてないよ。それにヒナの方からイゾラスに近づいたんだから、全部ヒナの責任だよ?」

「⋯⋯⋯あの、、、なんで⋯そんなオレに優しいの?」

「優しい?ヒナは普通だと思ってるけど⋯⋯イゾラスの事が好きだから、かな」

「こんな事告白したオレから言うのもアレなんだけど⋯どうしてオレと付き合ってくれてるの?」

「えぇ〜⋯⋯ちょっと⋯⋯それはさぁ⋯イゾラス⋯⋯女の子の事考えてなさ過ぎじゃない??」

「あ⋯ごめん⋯⋯なさい⋯オレ、そういうのホントに判ら無いんだ⋯」

イゾラスの謝罪に対して、ティヒナが彼の失態を正すと共に優しくフォローする。

「そんなにまでなって謝らないで?⋯なるほどね。イゾラスの人となり、ここに来てけっこう分かってきたと思う!」

「え、、、、」

「ヒナ、イゾラスを矯正してあげる!」

「きょ、矯正⋯?」

ティヒナは立ち上がる。それと共にイゾラスの右手を掴み、身体を引き寄せた。

「んそ!ヒナがイゾラスの気になるところを指摘してあげるの。どう?」

ティヒナが迫る。

「⋯⋯⋯いや、それは⋯⋯⋯今は大丈夫」

「そう?本当に?」

「うん⋯」

今のままで良い。今のままが良い。たとえティヒナが指摘しようとも、オレは多分それを完璧に理解出来ないと思う。それに『矯正』という言葉が少しばかり怖いと感じてしまった。あのティヒナか⋯カーマ・ノドンス高等学園最大の美少女が、オレのようなゴミクソみたいな男に構ってくれる時点で嬉しい。ただ、オレは自分を大事にしたい。まだ、彼女色に染まりあがりたくはなかった。別にそこまでの価値が無い人生だったのに⋯何故なんだろうな⋯。オレ、ティヒナの要望を拒否しちゃってんじゃん⋯こんな事有り得ないだろ⋯。

「わかった!その気になったら教えて。いつでもヒナはイゾラスの味方だから」

「うん、ありがとう」

「それで⋯一緒に教室戻る?」

「ううん、それはやめておこうよ」

「え、でもさ、どうせみんな知ってるよ?」

「⋯⋯⋯⋯⋯それは、そうだけど⋯」

「ヒナは別に何も思ってないからね」

「え、、」

「イゾラスがもしかして、ヒナの事を思って⋯とか何とか思ってたら嫌だなぁってなるから一応言っておくよ。ヒナは、イゾラスと教室に戻りたい」

「⋯⋯⋯⋯ありがとう、い、いこうか⋯」

「うん!」


視線が気になる屋上から教室までの道中。5階(屋上)から2階の高三フロアまで多くの生徒の視線の的になってしまった、オレとティヒナ。しかもティヒナはオレに密着して来るんだ⋯。やめて欲しい⋯⋯⋯てか、なんでこんな事が出来るんだよ⋯。告白したのはオレだ。付き合えるなんて信じられなかった。今でも自分の横にあのティヒナ・プラズニルがいる事を不思議に思ってならない。

⋯⋯⋯⋯別れようかな⋯。



守れなかった⋯。ヒナが守ってあげるべきだったのに⋯。イゾラスの事を⋯守れなかった。酷い仕打ちを受けただろうにね。

私ってば、何やってるんだろう⋯。

憧れの人と付き合えているのに、どうして何も出来ずに⋯なんだったらちょっとイゾラスを追い込むような事を言ってしまった⋯。私としてはそんなつもりは毛頭無い。

なんだけど、イゾラスの人間性を踏まえると、色々勘繰ってしまうのは無理もない。

最悪だ⋯。私ってば⋯。イゾラスから嫌われたりしてないかな⋯明日、何事も無かったかのように私の元を尋ねてくれるのかな⋯。たぶんだけと厳しいだろうな⋯だって普通の時でもイゾラスから来てくれた事は一回もないもん⋯。

もちろんね、その理由は分かってるよ。周りに見られたく無いから⋯だよね。

もうさ、いいじゃないかなぁ⋯と私は思ってる。屋上から教室へ戻る際にも色んな生徒、それは学年問わず沢山の生徒に囲み取材された。イゾラスは先に行ってった。良い感じに“取材陣”の間を回避して行ったんだ。私が「先行ってていよー」と言ったので、イゾラスは先行。その姿を見た生徒達だけど、イゾラスに興味を示す者は誰一人としていなかった⋯。

本当に申し訳ない⋯。きっとイゾラスは私と一緒に教室まで行きたかったに違いない。私の、色んな人と交流をする⋯という心掛けが仇となってしまった。

馬鹿だよね。馬鹿だよ、馬鹿馬鹿⋯大バカだ。

⋯⋯⋯⋯⋯彼氏と歩くよね。

絶対そうだよ。どんなことがあっても、絶対ら彼氏と手繋いでさ、一生離れないんじゃないかっていうぐらいの力強い握り手を感じたいよね。

イゾラスも⋯そう、だよね?

私、、、、イゾラスの事、何も知らないや⋯。

知ろうとしても、中々自分の方から話してくれない。私の接近の仕方が間違ってるんだよ。

あなたはそんな冷たい人じゃない。今のイゾラスは、本当のイゾラスじゃない気がする。

⋯⋯いけない。私、イゾラスの現在を否定しようとしている。だけどね、違うの。私が感じた事のあるイゾラスって、もっと⋯もっと⋯なんていうか⋯特別な人なの。今日だって、明らかにおかしかった。それなのに、なんか普通の時間だった⋯と言わんばかりの雰囲気を醸していたのはやはりおかしい。

何かを隠している⋯?

イゾラス、私の知らないところがまだある⋯。

そう思っちゃうと、もう戻れないんだよなー。これ、私のいい所でもあるけどちょと面倒な性格でもあるんだ。一つの物事に、集中したくて掘り下げなくてもいい段階まで掘り下げたくなる。それでいて、別にその答えに辿り着いたからって、満足感が得られるのはその時だけ。

結局は、こうして自省。

まただ⋯またやっちゃった⋯って。

誰にも迷惑掛けてないんだから、別にそこまで考えなくてもいいのにね。ほんと、嫌だよ⋯私のこの考え方。


イゾラスって、、なんなんだろう。

私が憧れた一人の男性であることには違いない。私は一昨年、高一の時からずっと気になっていた。それなのに、イゾラスと接触出来ない時間が続く⋯。早く出会っていれば、もっと早くに⋯そうしていればイゾラスの性格は変わっていたのだろうか。

私が本気でイゾラスの人間性を矯正すれば、多分ではあるけど、、、、、、やめた。『矯正』なんて偉そうに⋯。

これってさ、ただの自己満足の一種だよ。

イゾラスには、どうやって接すれば正解なの、、、、、


久々の「Elliverly's Dead Ringers」。また少し間を空けます。本来ならここからノンストップで書きたいのですが⋯。

本篇に注力します。


疲れてきました。もう、早く戻りたいです。何故私は今、ここにいるのか判らなくなっています。本当に早く戻りましょう。

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