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[#28-イゾラスソナーに感あり]

[#28-イゾラスソナーに感あり]


「うわぁ⋯⋯圧巻だね!」

イチゴ、イチゴ、イチゴイチゴイチゴイチゴイチゴイチゴイチゴイチゴイチゴイチゴイチゴ⋯⋯⋯⋯。

当たり前だが、とにかくイチゴ。目に入ってくる情報は単一に制限された。イチゴ、とにかくイチゴ。

あと、前に可愛い女の子。

ティヒナがオレの元から少し離れてしまったのは、『あぁ⋯』と思ってしまった。でもずっと横に居ても、イチゴの収穫に支障が出るだけだ。今は、イチゴへ集中する為、⋯⋯それの為に、ティヒナはオレの元を離れ⋯⋯⋯て⋯⋯⋯⋯


───────────────

「イゾラス、ごめんね。ヒナ先に行っちゃった⋯⋯。──一緒に行こ」

───────────────


「─────あ───う、う、、ウン⋯⋯⋯」

先行していたティヒナがとつぜん戻って来た。ティヒナは既に多くのイチゴを提供された更に採っている。そんなイチゴ収穫に集中した中で、イゾラスの横へと帰還したのだ。お皿を持っていた手を右手に置き換え。左手は、イゾラスの空白となっていたはずの右腕の部分へ。こうしてティヒナは、イゾラスとの行動を優先。

驚愕的な現実だった。

帰ってくる時の瞳の揺れ。

振り返った瞬間のあの瞬き。

『いけね⋯』とでも心の中で言っていたのか⋯相変わらず、イゾラスは自分の能力をマトモに使える状態では無い。

『イゾラスの事忘れてた⋯!』そう言いながら戻って来ているように思えた。トコトコと勇み足で。


『可愛過ぎたな⋯⋯⋯───────』


「うーーーん、こうしよ?⋯⋯恋人繋ぎ。こっちの方が、ヒナの肌、感じやすいでしょ?」

「⋯⋯⋯ウン」

「うん!じゃあこっち」


矢継ぎ早な展開。休む暇も与えられず、イゾラスはティヒナのマリオネットかのように操られる。


「ヒナはこんなにも採ったんだけど⋯⋯イゾラスはまだ一つ、二つ、三つ⋯⋯まだこんだけしかとってないじゃん!」

「いや、ティヒナが早いんだよ。まだ始まってから四分しか経ってないよ?」

「こういうのはスピード優先!こんなにも沢山のイチゴがあるけど⋯ほらみて、ヒナたちがこうしている間にも、歴戦の猛者は次々とイチゴを“回収”してるよ。しかも、あの眼力。ありゃあきっと査定が入ってるね」

イゾラス、ティヒナと同様のカップル。年齢層は二人よりも高め。それ故に、ラブラベリージュに何回も来ているようなベテランっぷりがだいぶと伝わって来ていた。そのカップルに会話はほとんど無い。

────マジだ。アレは、本当にマジのやつ。ちゃんとイチゴ狩りをしに来ているのだ。と、言うよりも、イゾラスとティヒナが勝手に“カップル”として認識しているだけで、実際は単なる友人関係なだけかもしれない。


「でもまぁ、ヒナはガチ勢みたいな感じじゃないし、気楽に採っていこ?」

「うん、そうだね」

ティヒナが喜んでくれれば何でもいい。

イゾラスには確固たる意思がある。それが、彼女の歓喜への結び付き。

女の子が何で喜ぶのか⋯。インスピレーションを得た作品は沢山ある。恋愛小説も、タイムスリップ恋愛映画も、今日のデート作成プランの着想元となっている。


最初に、果樹園を選んだのは⋯⋯特に深い意味は無い。それに倣って、今後展開されるプランに順番等の考えはほぼ無い。これ行けたらいいな、あれ行けたらいいな⋯。願望は次々とクリアされていき、イゾラスの思い通りのワンデが完成した。

後は自分の力量次第。どこまでティヒナを満足(笑顔に)させられるのか⋯⋯。


【アラート音】


「あ、終わっちゃった」

アラートブザーがビニールハウス内に鳴り響く。これは現収穫グループ終了の合図だ。

「短かったね⋯⋯⋯って思ったけど、案外時間経ってる。三十分かぁ」

「確かに、時間経つの早かった気がする」

「だよね!てことは、この時間が楽しかった⋯て事じゃない?」

「楽しかった⋯⋯⋯うん、そうだね、楽しかった」

「うん!ヒナもイゾラスとイチゴ採れて楽しかった!───でも、まだお楽しみが残ってるからね!ブレイクルームに行こ!」

イゾラスからの応答を待たずして、ティヒナはイゾラスの腕を引っ張った。

イチゴ収穫タイムでもそうだったのだが、ティヒナは異常にイゾラスとの距離感を強めて来た。その所為で、他のグループの注目の的となってしまったのは否めない。まるでティヒナは、一方的な愛の強さを見せ付けているかのようだったのだ。

イゾラスも本来なら、ティヒナからの愛情に応えたい。しかしイゾラスにはその想い応えるまでの愛情表現へのレパートリーが無い。ティヒナと同じような行為をしても、真新しさを感じ無いし⋯なるべくだったら新鮮さをお届けしたい。

イゾラスには、そうした苦悩を抱えたまま、ティヒナとのコミュニケーションを行っていた。


『─────一方的な愛になってしまっているのは、判っている。オレが一番判っている』


「───────⋯⋯⋯だからと言って、ヒナが失念したって訳じゃないんだよ?最近は、友達からほんと執拗いんだ⋯。イゾラスは何も悪くないのにすぐわるぐ⋯⋯イゾラス?」

「──────ん⋯⋯⋯」

「話聞いてた?」

「あ⋯⋯ごめん、ボーッとしてた⋯⋯⋯」

「はぁ⋯⋯もお、彼女が真摯に彼氏さんの問いに答えてるんだよ?」

「───え」

「え⋯⋯⋯って、まさか質問した内容忘れちゃった系?ウソでしょ??」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「イゾラス、ほんと大丈夫?なんか考えてる事あるなら、ヒナに言ってよ?低脳な頭でも良いなら力になれると思うし」

自分の事を下に見過ぎだ。ティヒナほど、力になってくれる人間はいない。逆にティヒナみたいな人間が“低脳”な部類に属する生命体なら、オレのような社会的不合理な存在はどれだけのゴミ屑なんだよ。


「⋯⋯⋯大丈夫、なんだね?」

「⋯⋯⋯」

イゾラスはまだ何も発言していない。そんな中で、ティヒナが口にした言葉は、イゾラスが喉奥から吐き出そうとしていた言葉だ。

「うん、ほんとごめん⋯色々、なんか⋯⋯⋯ティヒナはすごいなぁって思ってさ」

「凄い?なにが?」

これはイゾラスが違う所へボールを投げただけ。本当にティヒナの人間性にはいつも驚かされる事だけは確か。だが今ここで話す内容としては不適格なものだと言える。そんなのは重々承知の上で、イゾラスは“当たり前のこと”を投げた。思考を違うベクトルへ持っていくために。

そんなティヒナの反応は『???』といったものだ。


「オレが持ってないものを全部持ってるから」

「人間はそれぞれ、違う特性を持つ生き物だよ。ヒナにはヒナの特性があると思うけど、イゾラスにはイゾラスで、また違った特性があるんだよ。それを善し悪しと判断するのも仕方の無い事だけど⋯。同じ人間ばっかりがこの星にいちゃあ、つまんなくない?違うモノを持ってるから、人は人を頼るし、一人では決して生きていけない。支え合う事が、各々の能力を覚醒させる手立てなんだと思うな、ヒナは」

「⋯⋯⋯⋯⋯ティヒナの言う通りだよ。ダメだねオレは⋯何でもかんでも、悪い方向で考えようとする⋯⋯」

「うーーん、確かにイゾラスは、至急、矯正しなくちゃならない性格面がある。それは正直なところ否めない。ヒナの課題だと思ってる。現状維持にさせるつもりは無いからね。いつかイゾラスが一皮も二皮も剥けたイイ男になれるよう、ヒナが鍛錬してあげるから。覚悟しておいてよね!」

「⋯⋯⋯はい────」


「イゾラスとヒナのこれからの方針が決定した事ですし⋯⋯食べましょ食べましょ」

「うん、いただきます」

手を合わせるイゾラス。ティヒナはそれに倣って、手を合わせた。

「いただきます」

ブレイクルームは各グループで分けられるほど、余裕のある座席数が用意されている。二人席、四人席、大広とした八人席なんかもあった。主要的な座席構成としては二人席が一番数は多い。この座席構成の違いで、如何にラブラベリージュに来園するグループ構成に“二人組”が多いかがよく分かる。


「はんむ⋯⋯⋯⋯⋯ンン!美味しい!こんな美味しいイチゴ食べた事ない!」

「美味しい⋯⋯⋯」

食べ物を食べて、味覚に刺激が伝わるこの感覚⋯。ただイチゴを食しているだけなのに、それ以外の“味覚”を感じてしまう⋯⋯。噛み締めている感覚では無い。

目、耳、鼻。どの感覚器官にも同様の“それ”は伝達。

波状攻撃。


「ンンン〜〜〜美味しい!!ヒナこれ好きかも!いや!メッチャ好き!」

オレも大好き。

「ンンンンン〜!甘酸っぱいのに、濃厚な深み!舌にビビッとくる刺激の調和がたまらなく好き」

オレも大好き。

「イゾラスも好きでしょ?」

─────

「大好き」

─────


「あ、、、、、うん⋯あり、がとう⋯⋯⋯」

向かい合わせになって二人はイチゴを堪能している。イゾラスは突然、味の違う“大好き”という言葉を口にした。それよりも、イゾラスの語録に『大好き』との言葉がある事に、ティヒナはビックリした。驚きの時間は短く、句点を強く感じさせる感謝の言葉が述べられた後、イゾラスはイチゴを頬張った。

食したあとからは、イゾラスがティヒナに目を合わせることは無く、十四秒の沈黙が続く。


「そういや、忘れてた忘れてたーん。⋯⋯コレ!練乳」

「⋯⋯!」

始まった。ティヒナが如何わしく練乳をイチゴにかけ、食べる確率は高い。これはティヒナをエロい女の子⋯として捉えている訳じゃない。だが、ティヒナは天然でそういった“惨劇”をやりかねない人間性質を持っている。


「ティヒナ!」

「ん?ナニ?」

「練乳、どうする気?」

「────は?」

ティヒナからの『は?』。優しさの裏側に位置する表現方法として、これはこれでかなり、刺激的な感情が備わっていた。

ティヒナからそんな攻撃的な言葉を吐かれたのは、イゾラスにとって初めての経験。

「いやあの⋯⋯えっと、、、」

「イゾラス、イチゴに決まってんじゃん」

「そよね、そうだよね⋯そよね⋯うん、絶対そうだよね⋯そうに決まってんもん、うん、そう、まちがいないよね、うん⋯⋯そのはずだよ⋯⋯」

「⋯⋯⋯かけるよ?」

ティヒナはイゾラスのどこか、“興奮”したような姿を不安視している。

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「───なにイゾラスぅ?そんなジロジロ見るもんじゃ無いって!」

「いやいやもう全然!気にしないから!気にしない!」

「別に気にするようなものじゃないでしょうよ、元から」

「仰る通りです」

練乳がかけられる。一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ。ティヒナは残りのイチゴ全てに練乳をかけた。ティヒナはイチゴへ直接、練乳をかけるタイプ。お皿の中心や、縁側にタラーっと水溜まりのようにしてディップ形式にするのでは無く。

イゾラスは気にしない素振りを見せながら、暴力事件が起きる兆候を時たま確認する。


「イゾラス、もしかしてさ、ヒナがエッチに食べると思って、ソワソワしてんの?」

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