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[#27-無尽界縫穿虚神樹セフィリファ]

[#27-無尽界縫穿虚神樹セフィリファ]


ゲールスドール駅から電車で移動⋯。かと、思いきや、どうやら最初はここ周辺で済ますみたい。確かに、ゲールスドール駅の近くはショッピングモールもあれば、様々なアクティビティもある。この駅で待ち合わせした理由はそういう事か⋯と思った。

移動中、会話は弾んだけど、やっぱり緊張しているのはヒシヒシと感じる。もっと気楽になってもいいのに。でもそんなイゾラスが可愛くて、ヒナは好きだ。横に居られて嬉しい。肌で、イゾラスの温もりを感じれる事がこの上ない幸せ。

多幸感に満ちた今日が良い一日で終わる。

そんな事が示唆されているような気がしてならない。

イゾラスとは他愛もない話をしていた。学園での生活だったり⋯案外、イゾラスがそこまで地頭が無いという事を知った。成績優秀⋯っていうわけじゃ、無いらしい。

それは知らなかったなぁ⋯。ヒナはまだイゾラスのことを上辺でしか知り得ていない。

イゾラスは、自分で開示しようとしないのも、攻略に難しい所。

⋯⋯⋯こっちがリードしていかなきゃ⋯⋯⋯⋯⋯⋯んてぇ、イゾラスが止まった。


「ここは⋯⋯」

「ラブラベリージュ・キッシュ・ガーデン」

「え、、、、ちょ、、ちょ────ちょいまち⋯⋯」

「あ、、、ティヒナ、もしかして⋯⋯こういうとこ、苦手?」

「──ううん!!違う違う!ぜんぜんぜんぜん!てか!むしろ大好き!すっごい好き!やばい好き!⋯⋯⋯ここってさ⋯⋯」


ラブラベリージュ・キッシュ・ガーデン。

果樹園だ。


「ここ、、、凄い予約で⋯もう、半年間は予約で埋まってるとこじゃないの??」

とんでもない所を初っ端から提示されて、戦慄を覚えるかのごとく、震えた口調で述べるティヒナ。しかしその瞳の奥には、『感動』という爆発的な好意の気持ちが、溢れ零れかけていた。


「うん、取れたんだ」

え、、、取れた⋯⋯⋯いやいやいやいやいやいやいやいやいや⋯。ちょっと待ってって⋯⋯⋯嘘でしょ?

「いやいやいやいや、イゾラス、半年間埋まってるんだよ?ヒナだってここ行きたくて、ネットで何回も予約ページ見た事あるんだから。その時は⋯⋯あ、半年以上も予約埋まってたし」

「それって、何年前?」

「まぁ⋯⋯二年前とかかな」

「今は違うみたいだね」

「え?、、そ、そうなの⋯⋯⋯?」

ティヒナは直ぐに携帯で当果樹園のホームページへアクセス。予約ページを開いた。

「て、半年どころか八ヶ月以上も予約で埋まってんじゃん!!」

来年の一月までは予約で埋まっている謎の現状。ティヒナがデートプラン考えて!⋯と投げたのはたったの一週間前である。決して無理難題⋯とは言えないものの、さすがにこの内容は驚きを隠せない。

「イゾラス⋯もしかして、ラブラベリージュに知り合いとかいる?」

ティヒナはこの果樹園に知り合いがいて、優先的にチケットを購入出来るよう仕向けたのか⋯と問い掛けた。

「ううん、ちょうど取れたんだ。誰かがキャンセルしたんだと思う」

「⋯⋯⋯え、そうなんだ⋯⋯それは、運良かったね⋯そんなことあるんだ⋯⋯ここ、ほんと超有名なデートスポットとしても有名だから予約取れたらキャンセルなんてしないと思うんだけどなぁ⋯⋯」

「ティヒナ、ここでも大丈夫?」

「あ!うん!!もちろんもちろん!イゾラス嬉しいよ!ありがと!」

まっ、そんなことどうでもいいか!超人気のフルーツ果樹園に来れたんだ!それに大好きな人と!こんな幸福感のあるスタートダッシュは無い!

チケットが購入出来たのは、単純にイゾラスの運が良かっただけ。とんでもない幸運の持ち主だイゾラスは。


「じゃあ入ろっか」

「うん!」

二人はラブラベリージュ・キッシュ・ガーデンの入口を通る。



中に入れば、世界は一変。透明な壁でもあったのか、入口を通った直後から匂いの激変っぷりがこれでもかと襲いかかって来る。

「んんん〜〜良い匂い〜〜」

クンクン⋯と、匂いの正体を嗅ぎつけるティヒナ。真横でそんな事をやられてしまえば、正気じゃいられなくなるのはイゾラスだけじゃない。

「そんな可愛い顔しないでくれ───」

「え、なんか言った?」

「⋯⋯!??!う、ううん!何にも!言ってません!」

心に留めておこうと思っていた言葉ほど、表面張力のようになってしまう。一滴の文字。換算しなくても分かるが、一滴どころの騒ぎじゃ無かった。イゾラスは心の中で反芻させようとしていた言葉を肉声化させてしまったのだ。これが当人に聞こえていたのかどうなのか⋯。

彼女の当反応を鑑みるに、聞こえている節は無さそうな感じはある。


『──────乱れてる⋯オレの力。ティヒナの心が読み取れない』


対象人物の心情を読み解き、その時、相手が何を思っているかを把握する事が可能な変態能力。イゾラスはそれを行使した。使うべき時だ⋯と思い、使ったものの、能力を最大限に発揮出来ないほど、酷い心拍数の乱れを引き起こしてしまった⋯⋯。


『⋯⋯情けない⋯⋯⋯⋯⋯』


『イゾラス、いま、ヒナの事、言ったんだよね?⋯⋯⋯ヒナ、そんな零しちゃうぐらいイイ顔してたってこと??────ンヒヒィ⋯⋯今日のメイク、ダイセイコウ!!⋯⋯おっといけないイケナイ。イゾラスみたいに声にしちゃうとこだった』


筒抜けだったティヒナ。ティヒナはイゾラスの反省を活かし、Vサインを“心の中”で作る。(Vサイン⋯訳:やった。やってやった。歓喜のポーズ。ジャンケンのチョキを言い換えたもの。だが、チョキの意味との互換性は無い)


「それにしても、結構な人で賑わってるね」

「そうだね、けっこうな人、いるね⋯」

「イゾラス、大丈夫そう?無理してない?」

「ううん、大丈夫。ありがとう、心配してくれて」

「うん、イゾラス、体調崩しちゃったら元も子無いからね」

「ありがとう」

「うん!んっでぇー、パンフレットとか無い?かな?」

「安心して。ラブラベリージュのガイドマップは全部頭に入ってるから」

「え!記憶してくれてんの?!すごっ!」

「今、オレたちが歩いているのはメインロード。もうそろそろ複数のルートに分かれるセントラルタウンだよ」

「“オレたち”⋯⋯⋯」

「うん?なんか変?」

「なんか、イゾラスって変なとこで“オトコ”を感じるから、不思議だなあってちょっと思ってね」

「一人称昔っから“オレ”なんだよね⋯」

「かっこいいよ!」

「ありがとう」


セントラルタウンに到着し、二人は苦悩の表情を浮かべることとなる。


「うーーーーーーーん⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「ティヒナ、オレはどっちでもいいよ?ティヒナが行きたい所を優先的に考えてるから」

「ほんと?それは嬉しいんだけど⋯⋯⋯ううううううんん⋯迷うなぁ⋯⋯⋯。イチゴ、ブドウ、パイナップル、梨、ミカン⋯⋯⋯どうしてこんなに人を悩ませるんだあああ!!」

「酷な事するよね。一人につき、二つまでのエリアを選択する事が可能⋯⋯⋯って」

「こんなの選べるわけ無いじゃん!!!苦渋の決断過ぎる!!」


二人が頭を悩ませる中で、次々と他の客は中へと入っていく。基本的にはどれも人気のエリアらしく、客入りはどこもほとんど差異は無いように思えた。だが、イチゴとパイナップルは異様な盛り上がりを見せているようにも感じる。それは、ラブラベリージュの入口を通ってからの事。イチゴとパイナップルの匂いを必要以上に感じだからだ。きっと客はこの匂いに取り憑かれている状態。こうやってイゾラスとティヒナが頭を悩ませるのは比較的に珍しい光景では無い。

二人以外の来園者も、苦悩の表情を浮かべているのは事実。ラブラベリージュ側としては、さっさと各エリアに入ってほしい⋯それ故の“誘い”という可能性は考えられないものでは無い。


「ティヒナ?」

「ううううううううううう」

「けっこう人、入っちゃってるから、もうたぶん、決めた方がいいかもしれない」

「分かってる!!イゾラスはなんでもいいんでしょ!?」

少し声を荒らげる。そんなティヒナの表情は本気だった。その“マジ”の顔を形成しつつ、コメディチックな要素も取り入れられているのは、彼女のベースにあるユーモアセンスの露呈だ。


「───決めた!イゾラス、決めた。ヒナ決めた!」

刻みの良いリズム。決めたのでサッサと足を進めよう!⋯と言いたげな口調。

「コッチ!」

イゾラスの右手を握り、急いでその場から離れようとする。イゾラスはティヒナに力に驚く。ティヒナ程の人間が編み出す力なぞ、少しの振るいに掛けてしまえばどうってことは無い。その場で留まる事も容易に可能だ。

でも、彼女の引っ張る力には、それをさせてもらえない謎の技法があった。ティヒナにそんな意識は微塵も無いにしろ、イゾラスは彼女の特異的な人間性に慄きつつもある。


『人を好きになる。オレが彼女の事を好きになったのは間違いない。ティヒナはどうだろうか⋯ここに来るまで、半信半疑な状態が続いていた。だがその感情は現時点で無駄であった事に気づく。彼女は、オレを好意対象として認識してくれているんだ。引っ張ってくれた時の力。優しくも、“あなたとどこまで行きたい”⋯という、意志の表れを感じた。そこに代替品は無い』


ティヒナが選んだ先は⋯

「イチゴパーク!」

安直な選択。

「人多いから、サッサと並ぼ!」

「うん、分かった。それでもティヒナ、どうしてイチゴを選んだの?」

「それは単純だよ。イチゴが好きだから!二番目に好き!」

「一番目は?」

「それは、次でのお・た・の・し・み♡」

「────わかった」


『オレは本当に正気を保てているのか?ティヒナは、頼むから普通の顔でいてほしい。これ以上のものを繰り出そうもんなら、オレは大量の吐血をしながら、死んでしまうかも⋯⋯⋯言葉も流れるように。いちいち区切ってしまえば、ティヒナの攻撃力は格段にパワーを上げる』




イチゴパークに着いた。セントラルタウンからは50メートル歩いた事になる。その間の道では、ラブラベリージュ・キッシュ・ガーデンの今まで“あゆみ”が刻み込まれた巨大な巨大樹の壁が、来園者を圧倒。


「この⋯デッカイ木、どうなってんのよ⋯⋯⋯」

ティヒナはこの巨大樹に興味津々。巨大樹⋯なのに、セントラルタウンではその様に圧倒されることはなかった。

『ああ⋯なんか見えてるなぁ⋯』程度のものとして、ラブラベリージュのメインオブジェクトとしてのモニュメントだと認識していた。だが、巨大樹の恐るべき本質は、各パークに続く“中道”で判明。

「この巨大樹は“セフィリファ”。全長は336メートル。でもラブラベリージュ園外からはその模様を視認する事は出来ない。現に、オレたちもそうだったよね」

「うん、このデカイ木⋯ヒョコっと木が生えてるなぁって事は思っていたけど⋯⋯」

「セフィリファは、各パークの中道に続いている。幹は地中へ根を這うように続いていて、その巨木が、地上へ露出してしまっている。こういった巨大樹は、ラブラベリージュ以外にも複数が置かれてるんだ。巨大樹は、戮世界テクフルの守護聖人として、崇め祀られている。七唇律聖教が逐一一般にも公開している“祝祭”。それも巨大樹の見ている周辺にて行われている事もあるんだって」

「へぇー、詳しいねイゾラス」

「うん、暗黒の時代“アインヘリヤルの朔式神族”が活躍していた時の事を詳細に纏めた資料とかを読み漁っていた事があるんだ、昔に」

「七唇律聖教が祀っている神様ね。でもそれ、今の王朝らに見つかったら大変なんじゃない?」

「そうだね、今はアルシオン王朝が戮世界テクフルを統治してるから⋯⋯⋯⋯⋯うん⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯⋯あ!なんか凄い事書かれてるよ!」


イゾラスの沈黙。暗い話になってしまいそう⋯と思い、ティヒナは話題の変換を試みた。巨大樹はずっと道の両脇に続いている。巨木に刻み込まれた文字や数字に古びた様子は無く、まるで先程彫刻したんじゃないか⋯と視覚しかねない。

そんな新鮮さを備えている巨木。セントラルタウンから各フルーツパークに拡大しているその様は、観測衛星からの写真でも見てしまえば、その神々しさに歴然してしまうに違いない。生憎、イゾラスとティヒナはその事について現時点では触れられていない。ただ、こうして眼前で巨大樹“セフィリファ”について間近で見ている事が、得た知識としては充分なのだ。


「『ラブラベリージュの食物は、歴史に華を添える重要な資料的な価値のある産物です。戦乱の天地を駆け抜け、血の時代として語り継がれている争いの記録。そんな中でも人々は生きよう⋯と心に誓いました。一人の願望は、多くの人間へと伝播していき、絆が生まれ、豊かな生活を確立化させます。アルシオン虐殺王から継承された釁られた歴史は無辜なる民にとって、喜ばしい時間とは言えません。しかし、そうした圧政が敷かれた状況で、人間の個の力が団体の結束力を高め、文明の崩壊を防ぐのでした。その文明は繁栄と感染を創成。会得された技術を受け継ぐ為、人々は日々協力の時を欠かしません。こうして“発祥”が生まれます。鉱物、木材、薬草、超技能力、食物。あらゆるモノは、先人たちの努力の賜物です。ラブラベリージュにて、収穫されている果物も同様。生きる事を模索し続けた結果、朔式神族様たちは微笑みを授与してくださった。その結果、ラブラベリージュでは新鮮で濃厚、味に一切の妥協が無い満足感豊富な果物が採れるのです。皆様も是非、先人たちへの感謝を忘れず、今に生きる事への尊大さを胸に抱き締めて、頂きましょう』」


「───ほう。────要は、⋯⋯⋯美味ぇゼっていう事ね!」


「かなり要約したね」

「うん!先祖のみなさんへの感謝を忘れずに!それは絶対ね!」

「うん⋯そうだね。感謝⋯しようね」



イチゴパークの本丸へとやって来た。各フルーツパークの方面でも巨木の根は続いている。巨木がビニールハウスの役割を高めているのだ。巨大樹“セフィリファ”から枝分かれしている多数の枝。それはビニールハウスの照明を始め、日射光のレベルを操作する特殊な役目も請け負っていた。ビニールハウスの天井を眺めれば、そこは巨大樹の中にでも入ったかのよう。縁力を知ると共に、イチゴの馴染み深い香りが漂う、自然な笑顔と温もりがそこにはあった。


「イゾラス、受け取った?」

「うん、受け取ったよ」


ビニールハウスへ入るとチケットの確認と所持品の一時的な回収シークエンスがあった。確かに、イチゴを収穫し、食べるだけの為、荷物は必要無いように思える。一時的な保管⋯という事もあり、貴重品類は自分で管理をしよう。

⋯⋯⋯と言っても、イゾラスにこれといって大きな荷物は無く、携帯とハンカチ、それにティシュ⋯と最低限の持ち物しか持参していない。対するティヒナは、高級ブランドの小物鞄が良く目立つ。ティヒナも携帯だけ、貴重品という意味で、肌身離さずポケットへ締まった。


ラブラベリージュスタッフから、イチゴを回収する為のフルーツバサミとお皿を提供された。更には一人一人、一本100グラムの練乳まで支給が成される。


「練乳。これ、イチゴ収穫体験で絶対必須アイテムだよね!」

「うん、よく見るヤツだね。その場で採ったイチゴ練乳をかけて、頂く⋯みたいな」

「うん!そうそう!それ!ヒナ、“練乳かけかけ”やってみたかったの!」

「練乳⋯⋯⋯かけかけ⋯⋯⋯」


『やばい⋯かけ良からぬ妄想をしてしまう。ティヒナの綺麗な唇に、赤い赤いイチゴが取り込まれていく⋯⋯⋯。オプションとして追加補正されるのは純白な色彩。赤色に突然生じる、白い悪魔の影。孤影とも言うべきそれは、間違いなく、卑猥な被写体へ劇的な進化を進める大発明品。ティヒナが練乳を口にする時、オレは必死こいて、周りの目からカノジョを守る必要性があるんだ。絶対にティヒナが練乳を手にした時、その瞬間から、周囲の男どもは目を引くだろう。⋯⋯⋯⋯確認した。オレらと同じように男女ペアで来園している人間もいるが、男友達のグループも少なからずいる。更に言ってしまえば、オレとティヒナがビニールハウスへ入った時、待機列から“なにあの女の子、めっちゃ可愛いじゃん”という言葉を耳にした。あんな下劣で品の無い男にティヒナの麗しい姿を見せたくない。⋯⋯⋯だが、オレは見たい。⋯⋯⋯よし、やるぞ。戦いの始まりだ』


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