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[#26-集合はゲールスドール駅]

[#26-集合はゲールスドール駅]



律歴4455年5月15日──。



けしさったあめ。

とどこおるおと。

どうでもいいや、とおもえるひかりのみち。

ふりおちたかげに、かちはない。

いみのないしょうどうにかられ、またふたたび、いのちがつきはてる。

みんながすきなひと。

みんながいやむひと。

おなじじかんをきょうゆうしてたら、もったいない。

ひとりひとりのあたまんなかをからっぽにして。

そうすれば、もっともっと、うえをみたせれる。

くだされたこうげき。

ししてもなお、めんどうなくちぶりをして。

あがいても、あがいても、あがいても、あがいても⋯⋯


はじめまして、はさいあくのはじまり。

ひさしぶり、はおわりをつげるはじまり。

ふたりのかんけいにはじまりとおわりをもたらす、げんきょうは、どっちにある?


こわがった。

こわがって、こわがっても、だれもあいてにしてもらえない。だって、わたしとあなたしかいないから。

あなたは、わたしをみている。

わたしはみていない。

めにしたらいけない、とかってにはんだんをしたんだ。

けいけんをつんで、それでえたきょうくんは、わたしのにんげんてきなぶぶんにふかく、ふかく、ねづいている。


しあわせになっても。

しあわせになって。

あなただけでも、しあわせになってほしい。

わたしはもういいから。

あなたがすべてのときで、えがおになってほしい。


────それで、わたしは、まんぞくだから。



「─────んん⋯⋯⋯んはぁあぉん⋯⋯⋯⋯朝⋯ぁ⋯⋯」


起床。

窓辺からの陽光。それは今日の自分の運勢を占っている。毎日、毎日、起床の度に窓辺を見る事が決まってるの。


今日は⋯⋯⋯


「うん、いい天気ね。陽射しが眩しい⋯⋯」

背伸びをンン〜っと。気持ちのいい朝。

今日一日を考えるだけで震えるような快感に包まれる。待ちに待った日だからね。

階段を下りる。既に妹は朝食に移っていた。


「ニレヒナおはよう」

「あら、お姉ちゃんおはよ。お珍じゃん」

「『オメズ』?⋯なにがよ」

「お姉ちゃん、今日学生気分ナシの日でいい日よ?」

「そうだよ?それがなに?」

冷蔵庫からオレンジジュースを手に取る。ガラス瓶に入っているオレンジジュースは、母親が好んで高級品を支給してくれる。定期便を設定してくれるので、二週間に一回は、1.5リットルサイズ×六本のボックスケースが届けられ非常に喜んでいるのだ。


「どっか行くの?」

「まぁね」

「彼ピ??」

「そうね、彼ピ」

「んへぇ〜、いいこっちゃね」

「そうね、楽しみにしてるんだ〜」

「今度ニレにも紹介してよ」

「んん⋯⋯⋯」

「なにそれ、いっつも紹介してくれるじゃん」

確かにそう。ニレヒナにはいつも新しい彼氏が出来ると直ぐに紹介している。その手段は、直接会わせるか、あるいは、携帯で撮影したツーショット写真を見せるか。

そのどちらかが過去にはあった。そしてその紹介の時期と言うのも、付き合ってから直ぐのタイミング。

イゾラスと付き合い始めてから、15日以上は経過しているが、ここまでニレヒナに彼氏の存在を明かさなかったのは初めてだ。⋯⋯⋯ニレヒナからしてみれば、『あー、また新しい男に乗り換えたのねえ』としか思っていないだろう。

だけど今回の人は違う。イゾラスと今までの男を一緒にしないでほしい。

だから⋯⋯⋯そうだね。イゾラスに相談してみよう。


「彼氏に相談してみる」

「んエ?なんでェ」

「なんでも。今回の彼氏は⋯ちょっと⋯うん、そうなの」

「なによそれ。変なのー」

味噌汁をグビっとすする。最後の一滴まで残さずに、ニレヒナは朝食を終えた。

「今って時間は⋯」

「9時20分。お姉ちゃんこんな時間に起きたの初めてだから、時間感覚狂うよねー」

「私はそんなに朝、強くないから起きてないだけ。本当は眠たいんだからずっと」

「でもさ、早く起きた方が、いいこといっぱいあるよ?私はいつも休日は朝さんぽしてるから」

「それ、まだ続けてんの?何時から?」

冷奴、卵焼き、ウインナー、味噌汁、そしてオレンジジュース。朝食をテーブルに置くまで、妹に視線を合わせてはいない。妹は朝食を食べ終わっても尚、私と向かい合って話す事を望んでいるのか、着席状態から解かれようとはしなかった。


「6時には起きてるよん」

「え、マジで?すごいねニレヒナ」

「まぁねぇん、お姉ちゃんみたいにズボラじゃないんでわたすィ」

「そんなズボラなお姉ちゃんよりも、保体の成績、うまいこといってんでしょうね?」

「ギクッ⋯⋯⋯⋯⋯うー⋯⋯⋯それリゃ⋯⋯────」

「⋯⋯⋯ニレヒナは今日、なんか用事あんの?」

話を変えよう。私は私で、妹と喋るこの時間が好きだ。てか、妹・ニレヒナが好きだ。妹が言葉に詰まっているのは好きではあるが、長く見たいか⋯と問われたらそうでも無い。沈黙より、得られる物が多い“会話”というツールの方が圧倒的に私は好きだからね。


「⋯⋯今日は、友達と買い物してくるよ」

「私、10時半には出るけど」

「一緒に行こう⋯っこと?悪いけど、それ出来ない」

先読みされてしまった。そんなに顔に出ていたのか⋯と思った。

「どして?」

「今から彼氏に会うお姉ちゃんのホワホワ顔面に付き合ってられないよ」

「そんな顔しないって」

「自分の顔だから分からないだけ。他人には判るの」

「そう⋯?なら、うん、分かった」

「そんじゃ、彼ピとの時間楽しんでね〜、いつもみたいに無茶しないこと」

「言われなくても分かってますぅー」



約束の時間は11時。

集合場所は、ゲールスドール駅。

ヒナの住んでいる家の近くだ。つまり、イゾラスはこっちに来てくれる⋯ということ。

うん⋯⋯⋯嬉しい!

結構嬉しいんだけど⋯⋯!イゾラスは女心分かってる!もしかしたら、この一週間で色んな事、勉強してくれたのかな⋯⋯⋯あ、いけない⋯⋯。

基礎知識として、こんなことぐらい知ってたかもしれないよね。

本当なら、これから行くところを集合場所に指定してもいいのに⋯しかもわざわざ、ヒナの近くまで来てくれる⋯⋯。なんだろう⋯⋯⋯⋯こんな事でも、イゾラスが尽くしてくれたって感じれる。


こんなの初めてだ⋯⋯⋯。

いや、なんか、、、、おかしいぐらいに感じるんだけど。

イゾラスを想像するだけで、胸が締め付けられる。不思議な人だ⋯⋯⋯ほんと。病気なんじゃ無いかって疑ってしまうぐらい。

早く会いたい。



時刻は10時50分。


十分前に来れば、大丈夫だろう⋯と思っていた中、駅の近くに見覚えのあり過ぎる人影を発見する。携帯を左手に握り締め、あちらこちらに眼球を移動させている。顔面の挙動も激しく、不安を覚えてしまうほどに、オドオドとしていた。


「ンフ⋯かわいい⋯⋯」

ずっと遠くから見ていよっかなぁ⋯と思ってしまった。それじゃあ可哀想だね。────行こう。


ただ目の前に“待ち侘びた彼女”が現れてもつまらない。こんなにも今か今かと、彼女の到着を楽しみにしている彼氏に対して、ちょこっとのドッキリは行っておこう。

ヒナの悪戯心が純粋人間に迸った。


イゾラスは今、駅近くのバスターミナルに設置されている時計塔の直下にいる。単純だが、後ろからコソッと忍び足で近づこう。どんな反応してくれるかな⋯⋯⋯⋯。


よし。遠方にて、イゾラスを肉眼で確認。


そおっとそおっと⋯⋯そおっとそおっと⋯⋯。

はぁ⋯⋯緊張なんて、こんなことでしてどうすんのよ⋯。

あと40メートルぐらい。

⋯⋯⋯⋯⋯てか、こんなにも離れてるなら、普通に歩いてもいいんじゃないの??⋯⋯そうだよね?

だよね?

⋯⋯だよなぁ???


行っちゃおっか!


さっきまで続けていた忍び足は何なのか。

そんな事、していなかったかのように、ヒナは駆け足でイゾラスの後ろへと回った。


「──────」


「イゾラス!」

「───!ビックリした⋯⋯ティヒナ──」

「お待たせ!⋯⋯てか、まだ集合時間じゃないけど」

「うん、でも男は集合場所に先に来ないといけないかなって思ってさ」

「イゾラス⋯⋯」

見惚れちゃった。

なんて優しいの⋯⋯人間って無駄のない優しさを受けると逆に身体が硬直しちゃうんだよね。変に“人間”⋯と作り纏めて申し訳ないけど、ヒナはそうなんだ。自分には無い優しさの形。イゾラスからはそれを無量大数に浴びれると思う。確信があった。

「まだ時間まで9分早いけど、もう行こっか?」

「うん、じゃあ⋯⋯⋯⋯あ───」

「ヒナたち、付き合ってるもんね♡」

「う、、、うん⋯⋯⋯い、、、いいの?」

「うん!」


イゾラスへ大胆に接近するティヒナ。彼女の左手は彼氏である相手の右側を陣取る。突然の出来事に事態への把握が遅れてしまう。イゾラスの感情爆発は今に始まった事じゃない。ティヒナが後方から接近してくる事が、三分前から推測出来ていたので、ドキドキが止まらなかったのだ。後方からやって来て、いったい何を計画しようとしているのか⋯⋯⋯。

その、足を緩やかに一歩一歩進ませる行為。

そんでもってそれに飽きたのか、急にスピードを速めた。


『これが、ドッキリ⋯てやつか⋯⋯⋯』


「いこ!」


イゾラスは彼女・ティヒナの格好を上から下まで見つめる。その言葉のままだと彼女の外装を超直視しているようになってしまうが、イゾラスにはジャイロスコープモニターが備わっている。その場に留まるだけで多角的な視点で視界を拡大させる事が可能な特殊能力。超越者の血を継承する人物として、備わっているのは当然のこと。


いつもと違うティヒナの姿。カーマ・ノドンス高等学園の制服は赤い。てっきり、彼女のテーマカラーが“赤”として認識してしまっていたのは本人には言えない。

赤色を纏うティヒナに見慣れてしまっている(実際は見慣れてなどいない)から、違う色彩を身に付けている事は、イゾラスの気分というものを臨界点に持ち上げた。

急激に。


『白ドレスの純白を基調とした美しいデニムシャツ。下半身もデニム生地の⋯⋯スカート。それもかなりのミニ。ミニ。ミニ⋯⋯ミニスカート。その向こうって、アレだよね⋯アレがもう、ほんのちょっとの風が吹けば見えそうな感じがスるんですが⋯⋯(この妄想は妄想でスクリプトしていったとしても激ヤバな文体なのでしょうか)。負けじと美しいアクセサリーを身に纏い、格段に華やかさが高まっている。とにかく肌の露出が高い。目のやり場に困る。春服って、こんな肌を露出大丈夫なのかな。夏、だったら何となく分かるんだけど⋯⋯⋯。腰周りも美しいなぁ。ベルトかっこいい。なんでこんな細いんだ女の子って。普段、制服着てるから分からなかっただけか?みんな、こんなもんなの??⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ティヒナ、内臓の数、オレと同じよね??⋯⋯⋯クビレ、これがクビレか⋯⋯⋯クビレ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯』


「ん??イゾラスー?」

「ンァァア!!?」

「え、────どしたの」


⋯⋯⋯まぁだいたいは予想出来る。イゾラスは恋愛経験が無い男子だ。こうして彼女の私服を見る事がほぼ無いのも色々聞いていた。だから、ヒナはそれを武器にしてやろうと心に決めたんだ。

この白デニムのシャツとミニスカート。

めっちゃ可愛いよね。イゾラスの今の心の内を紐解きたい!この感じだと、“ヤラれてる”ように思えるんだけど、、、どうなのかな⋯⋯。チョイと、あざと過ぎ⋯かな。


『クビレ⋯⋯⋯クビレ⋯⋯⋯⋯⋯クビレ⋯⋯⋯⋯』


「どしたのって、それはコッチのセリフよ。固まっちゃって、大丈夫??」

「うん、大丈夫。大丈夫だよ」

冷静を取り戻す。かなりの攻撃的か見た目となった事が、予想外過ぎた。見慣れた格好でも充分な破壊力を兼ね備えていたのに、現在のティヒナは想定外のステータスを付加されて、ここに現れた。

「そ・れ・でえー?」

「ン!?」

「まずはどこいくの??」

密着感の上昇。腕に抱き着かれる⋯。その際に彼女の弾力性の高いモノが当たっているのは否定出来ない。もはや彼女は確信犯的に実行している⋯とみた。そしてこの顔である。

殺人級だ。大型連続殺人鬼。見るものすべての思考を狂わせ、相手の記憶に不特定多数の“刻み”を入れられる。

可愛い⋯と安直に形容してはならない。それでは価値が下がる。言葉の域を超越したモノがそこにはあった。


「じゃあ、行きましょ、、か」

「うん!いこ!」

たどたどしい言葉。終始、イゾラスは正気を保っていない。ティヒナにはそれが見え見えだった。ティヒナじゃなくても、イゾラスの人間性を全くの無知な人間ですら、そう思えてしまうだろう。それでもティヒナはこれ以上、イゾラスを詰めるような事は言わない。


『きっと緊張してるんだろうなぁ⋯。今日いっぱい考えてくれたのかもしれない。それで頭がパンパンなんだ。⋯⋯可愛い⋯。ほんと可愛いなぁ⋯今すぐにでも抱き着きたい。腕だけじゃ我慢出来ない。もう、ぜんぶ、ぜんぶぜんぶぜんぶ!ヒナのぜんぶをイゾラスの身体に預けたい!⋯そんな瞬間、今日あったら良いなぁ⋯!あるよね?⋯⋯ね!』


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