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[#16-軌道修正ポイント]

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〈そこまでにしよう〉

〈なにゆえ?〉

〈残酷な身分になりたくはないだろう?〉

〈ここまでやったからには、より多くのデータを集合させる事が必要悪なんです〉

〈まだ実験体は無数と存在している。彼女に固執することは無い。それに、当該個体への精神侵食はリスクがあり過ぎる〉

〈そんな事、ラヴが忘れているわけが無いでしょ〉

〈⋯⋯⋯⋯本当に、このまま進めるのか?〉

〈はい。お願いします〉

〈何処まで領域犯となりうるつもりだ?〉

〈彼女、ティヒナ・プラズニルが好意対象者として認識している相手のイゾラス・ヴァルマンへ、意識の素養性を与えていく〉

〈⋯⋯イゾラスへの好意は、我々が干渉していいフェーズなのか?〉

〈当然でしょう。当シナリオの真核たるパートには、そろそろの手入れは施した方が効果的な流動作を見せれると思います〉

〈判った。それでは当該地域に“アゲインスト”発動〉



ティヒナが微動だにせしない。そんな状態が続いていく中で、何故か一向に出現する気配が感じられない列車。走行音が聴こえてきたのは、15秒程前。音が近づいてきていたのにどうして⋯?ファイウェルとチスポーは、それぞれの思考の流れで同じ疑問を抱くことになる。

作業員たちも、それぞれの思考を答え合わせしているかのようだった。それは表面的に。

ファイウェルとチスポー側は、単純に『聴こえてた⋯よね?』といったシンプルなもの。有識者としての意見交換は、女子高生が抱く疑問の更なる上をいく疑問だ。


ティヒナが線路に侵入する。バースノード駅のプラットフォームにて、その身を不動のものとしていたティヒナが、突然、なんの前触れ無く線路へと飛び込んだ。駅と線路の間には、駅として使用されていた時の名残とも取れる、段差が存在している。

それは至極真っ当。乗車する利用者と停車する鉄道の狭間に存在する、あって当たり前のもの。

その段差は1メートル以上。ティヒナは1メートルある段差をジャンプし、目先にロックオンしている線路へと侵入。


「ティヒナ!危ないって!!」

「ティナちゃん!!」

二人の声掛けは、女子の通常音声量の六倍は出力されていた。それもそのはず、目の前で友人が接近直前線路へと歩行を始めたからだ。二人以外にも、ティヒナが飛び込む姿を見ている人間は、向こうにいる男性たち。だが、ティヒナの線路飛び込みには一切我関せず⋯。

何故か、止めようとしていないのだ。更に言ってしまえば、五人はファイウェルとチスポーの“ティヒナを呼ぶ声”を綺麗さっぱり“無視”していた。


絶対に聞こえている。そのはずだ。

間違いない。いくら女子と言っても、あの声が50メートル以上先に居たとしても、聞こえていないはずなんてない。障害物なんてものは無い。女子高生三人と、貨物列車乗車作業員らの間にあるのは、使用中、未使用、廃線となった線路があるのみ。壁も無ければ、音を阻害する妨害電波のようなものもジャミングされていない。


簡単に言ってしまえば、彼女たちの声が届いているのは世界の摂理というもの。人間として生物として、危機察知能力が敏感な生物として星の上に立つ生命の頂点に君臨する者として。

それなのにも関わらず、この作業員らは女子高生二人の“叫び”を完全に無視。自分たちの内々の会話が行われているのか、何なのかはバースノード駅からは断定する事は難しい。


そして、最悪な段階へと突入していく。

なんとその五人は貨物列車の中へと入っていき、そのまま走行させてしまった。いったいどういう事なのか⋯。少しぐらいの挨拶はあってもいいだろう⋯とファイウェルは嘆いた。チスポーも同意見なのだが、あまりにもな絶句する光景を前にして、何も開口出来ずになってしまった。

チスポーがここまで沈黙してしまうのは久々の事だ。


対人関係を構築する上で、チスポーは相手の弱点だったり、強みだったりするポイントを瞬時につく事が出来る。彼女なりのファーストアタックはこの時点で始まっている。でも、チスポーは当該コミュニケーションを完結させるのが、けっこう下手くそ。それでいて、相手のウィークポイントだったりを探ろうとしてくるので、相手はそのチスポーに困惑してしまう。その反動で、チスポーとの関係を構築したい⋯と願う同期は減少傾向にある。

チスポーは好かれている方の人間だ。但し、“イヤ”と判を押す者もいる⋯という事だ。その事実を本人が知った時。

それが、チスポーの失墜した表情を見た最後と言える。

今回のチスポーはその類に分類される表情を整わせていた。


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