[#10-どうしてイゾラスなの?]
[#10-どうしてイゾラスなの?]
「そんなの当たり前でしょ」
「はぁ⋯流石にそれはあるよな」
「ヨカタヨカタ⋯未知数の男だから、恋愛に関して無知なのかと⋯⋯」
ファイウェルとチスポーは安堵。それに対してティヒナはユーモアに満ちた怒りを上げる。
「二人とも、いくらなんでもイゾラスの事バカにし過ぎだよ?イゾラスはしっかりと真っ向勝負してくれた。『好きです』てね」
「えェ!?イゾラスくんが??」
「あの、、、陰気な⋯あいつが、、、、、」
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「信じられなん」「信じらんねぇ」
【二人の頭の中でビジョンされているのは、ダークマターエネルギーをフルパワーで搭載された男の化身。もはやそれは人間では無い。漆黒のただの二足歩行の化け物だ】
「こにゃのが、『好きです』と言うとんか???」
「しかも、、、あの、ティヒナに⋯⋯⋯??」
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「ティヒナ?ほんとにマジでイゾラスが『好きです』なんか言ったの?」
「言ったんかえ?」
「だから何回言えばいいの!言った!じゃあどうやってヒナはイゾラスに落ちたのよ!!」
「ぐゲゲ!!?!」
「カァー⋯⋯⋯⋯」
「何よそのリアクション。チスポー」
「はい!⋯ごめんさい⋯⋯」
身体を仰け反らせたチスポー。ティヒナの気分を害してしまった事への謝罪を行う。チスポーらしく呑気に。
「ファイウェルもらしくないわね。なにが『カァー』よ」
まるで夜の嬢王様かのように、上から目線で問い質すティヒナに、ファイウェルは足掻こうにも『確かに良くない反応だった⋯』と自省。
「で、でもち⋯なんでイゾラスくみたいな男好きになったんちょ?」
「ティヒナ、私も単純に気になる。どうしてイゾラスを?」
「うーん⋯理由はシンプル。元々好きだったから」
ファイウェルとチスポーは驚愕する。今までティヒナから『イゾラスの事を気に掛けてる』等の素振りを一切感じ取れていなかったからだ。
「そんな話聞いたこと無かったな⋯」
「え!ティナちゃん⋯わっぽに隠し事しとったんかな!!」
「別にわざわざ周りに言うことでも無いでしょうが!」
物理的に突っかかって来たチスポーを受け止めるも、ティヒナは反論と共に、チスポーをリフレクト。
「ぐすん⋯」
「あーあー⋯あいつ、『ぐすん』なっちゃったら最低でも五分はあのまんまだぞ」
「はぁ⋯もお⋯⋯⋯」
チスポーは体育座りになって廃駅のベンチに腰掛ける。そう、両足をベンチまで持っていき、コンパクトに身体が丸々となっているのだ。つまりは、廃駅の向こう側からはスカートの中身がほぼ丸見えのような状態。太腿もしっかりと視認出来ることが可能で、中々にハレンチな様相となってしまっている。現在の彼女に、そこまでの対処が可能な余裕は無いのだ。そのぐらいティヒナの言葉には相当落ち込んでしまっている。
「チスポー⋯」
「ぐすん、、、、」
「悪かったよ⋯。⋯⋯⋯⋯ヒナ、もうね、あんまり恋愛ってしたく無かったんだ」
「⋯⋯⋯?」
チスポーが顔を上げる。二人の目線が合う。そしてファイウェルもティヒナの言葉を受けて近づいた。
「そっか⋯⋯うん、確かにティヒナは、前から恋愛の話になると直ぐ心のシャッター下ろしてたかも」
「あれ、ファイウェルには伝わってた?」
「わっぽも気づいてた!!」
「嘘つけーえ、チスポーはのほほんと聞いてただけでしょ」
「、、、、、」
「図星かよ」
「ンフフフ⋯いいのいいの。気づいてほしかったらヒナの方から言ってるし。別に大して面白い話でも無いから二人には⋯というか、表には出てなかっただけ。でもすごいねファイウェルは分かってたんだ」
「ティヒナの整い顔にほんの少しでも歪さがあれば、私なら気づけるね」
嫌な視線を送るファイウェル。その先にいるのはチスポーだ。
◈
「⋯ンァア!もお!それで!?なんで恋愛ショボンムーブだったのにイゾラスくんと付き合ってるわけね?」
ファイウェルからの嫌悪の悪行を打ち消そうと、チスポーが声高らかに問い掛けた。
「さっきも言ったけど、イゾラスの事ちょっと好きだったんだよね。でもこれが“恋愛方向の好き”なのかは分からなかった。なんか不安定な感情だったのは、よく憶えてる。胸の奥がドキドキでも無く、ムギムギでも無く⋯ドゥリュドゥリュって感じ」
「ドゥリュドゥリュって⋯」
「なんだが説明の難しい表現ですな⋯」
「そ、まさにそれなの。表現が難しいの!」
「イゾラスの事、前から気になってたって、ティヒナとの接点なんかあの男に無いんじゃない?」
「うん、直接って感じのタイプは無いかな。でもさ否が応でも、同じ学年の生徒だから、すれ違ったりとか、遠目から見えたりとか⋯そんなんはあるじゃん?」
「イゾラスくん影薄人間だから気にもとめてなかった」
「私も」
「あははは⋯そ、そっか⋯」
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乾いた笑い。二人に幻滅したつもりじゃないが、もっと周りを見て行動してほしいとは思った。それに何回も言ってくれやがるけど、イゾラスは影薄く無いから!
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⋯⋯と、こんな事が言えるはずもなく。ティヒナはイゾラスとの心の邂逅を語り始めた。
「イゾラスの事を初めて見たのは、高校一年生、一昨年ね。まだファイウェルとチスポーとは友達じゃなかった時」
「え?じゃあ夏より前って事か?」
「そう、忘れもしない⋯6月1日」




