チーム(ただし3:1で別れているものとする)
私がこのようなスタイルになったのにはもちろん理由がある。
一つはもはや皆さん予想済みであろうコミュニケーション対策である。シンプルに目を合わせたくないのがまず一つ。これならギュッと目を瞑っててもバレることはない。
そして何より……この外見のやつに話しかけたいと思う人は少ないだろうからだ。もし私だとしても頭に紙袋被った不審者に話しかけたいとは思わない。言ってて私にダメージが入るけどそのダメージ以上のメリットがある。
二つ目はシンプルに《叡知》バレ対策。《叡知》の使用中はほのかに目が輝く。それを見れば何かしら思う人はいるかもしれないけど、紙袋を被っていれば……光は漏れないか、漏れたとしても目が光ってるとは思われないであろう事が理由である。いや、もしかしたら思われるかもしれないけど。
あとこれはついでだけど、紙袋被ってるやつが突如目部分の穴をぴかーんと輝かせたら完全に関わりたくないだろう。コスプレイヤーで変な学校に見慣れているであろう日本ですらお巡りさんに拘束されかねない。異世界の人ならなおのことだろう。
ただ早速私は困った。「なんでその格好を……」の質問は予測してたけど、よく考えたらその良い感じのアンサーが見つからない。てか見つかったところで会話なんてできない。
なので私は視線を逸らした……さもそうしなければならない理由があるかのように。
余談ではあるけど、この行動はそれっぽい戦士がやるから意味ありげに見えるのであって7歳児がやったところで困惑が勝つのみである。全く気づいてなかったけど。
「とりあえず、俺はゼンです。このパーティ、『紅の四剣』のリーダーやってます。それで他は……」
「私はフレア。このパーティで主に遠距離から燃やすのを担当してるわ。」
「……ガイだ。後方支援を担当している。」
「あともう一人ニアがいるんだけど……知ってると思うけど、今は重症で休んでる。」
……一応知ってるんだけど、まぁ確認にはなったからありがたい、かな?
しかし『紅の四剣』か……リーダーの人が真っ赤な装備だからわかるけど、残りの人はどうしてなんだろう?フレアさんは髪の毛も目も青いし、ガイさんは、髪の毛……は無視するとして、神官服は白と金だ。赤要素が見つからない。
まぁそれはどうでもいいとして、とりあえず礼儀“自己紹介されたらしっかり返しましょう”を私は守らねばならない。
でもそれができるなら今こんな格好してないんだよなぁ……どうしたものか。
私はちょっと悩んで、とりあえずよろしくの意味をこめてペコッと首だけ曲げて挨拶だけした。名前知ってるっぽいしいいでしょ。駄目?はい、コミュ障ですみません……これを理由に因縁つけられてあとで囲んで叩かれたりするかもしれない……そうなったら全力ね逃げよう……
「ええっと……とりあえず、俺達が探している薬草を探すのを手伝ってくれるんですよね?」
私はまたしてもコクッと頷いた。会話ができない……!主に理由は私のコミュ力ですけどね、はい。ごめんなさい。
「何を探すかはご存じかと思いますが、念の為。僕たちは水霊草と呼ばれる物を探しています。」
水霊草か……
水霊草はアレだ、なんか草だ。でも水霊なんてつくだけのことはあって、葉っぱ一枚に水がたっぷり入ってる。絶対入りきらないはずなんだけどそこら辺は魔力でしょ、きっとそうだよ。
アレから取れる水は量が多いうえ新鮮で、なんなら飲むとちょっと体調良くなるとかの恩恵がある。昔見つけたときはマリーさんに話しかける前と後で心を落ち着かせるのに使ってたなぁ。
確かに見つかりづらいけど、所詮《叡知》の敵じゃない。私は無能だけど、《叡知》は有能だもんね!言ってて悲しくなってくるからやめよ……
とりあえず私はまたしてもコクッと頷き歩き始める。正直なところ魔力+《叡知》全開でバッと行ってピュッと終わらせたいんだけど、なんかそれは駄目な気がするのでやめておく。
こっそり《叡知》を発動させて近くの水霊草を探る。あった。思ったより近いのですぐ終わりそう。助かった……!長引くと私は死ぬかもしれない。
私が動き出したらちゃんと『紅の四剣』の人達はついてきてくれたので目的地に向かう。私が先導してるけど地味に距離が離れてるので4人組ではなく実質1と3人組……適度に後ろからついてって終わりを待つ修学旅行の前後が逆転してるだけ……う、頭が……
3人がヒソヒソ話をしてるのも非情にキツい。短時間ならなんとかなるとか思ってすんませんでした、やめてください普通に効きます……
どんよりとした空気を纏った私だけど、案内はちゃんとした。空気を読んでか魔物も出てこない。放棄して帰らなかっただけ中1の校外学習の頃より成長してってこれ以上はいけない!このパーティといると黒歴史が刺激されすぎる……
「おぉ、本当に水霊草だ……!」
「こんなにすぐに見つかるなんて……凄いわね。」
「……まるで知っていたかのようだ。」
「!?」
ビ、ビビった……《叡知》バレしたかと思った。心臓に悪い。普通の感心かなんだ……
……いや、あるいは忠告……いや宣言かもしれない。「お前のことなど知っているぞ」とか、そんな感じの。怖い。
私はそんなことを考えながら水霊草片手に喜んでる彼らを、別の世界を見ているような気持ちで見ていた。……羨ましくない。ないったらない……
突然ですが、読んでくれる方も増えたとこのことで仮タイトルだった今のタイトルから
「語らずの災女~転生コミュ障の明日は何処へ~」
というタイトルに変更します!
4時頃には変更しますので把握していただけると幸いです