集団……行動……?
その後の私は特に何があるでもない平和な生活を一ヶ月ほど送った。
ちゃんとしっかり《叡知》でDランクなら倒せるラインを見極め、薬草を刈り、時には魔物を不意打ち10割で仕留め……
マリーさんと日常的に話せる程度にはコミュ力も上昇……したらいいと思ってたけど、この世界で1からせーのの能力面ならまだしも私のコミュ障は前世からの継続である。無理無理。解決はする気がしない。生きててすみません。
とりあえずその日暮らしが安定し、貯蓄もちょっとずつ貯まってきていて順調に思えていた。
あの日までは。
「ぁの、すみませ、もう一度……」
「えっとね、ネガちゃんにはある冒険者チームのヘルプに入ってほしいの。」
何を言ってるんだろうマリーさんは。ちーむ?ちょっと知らない概念なんですけど……
「ネガちゃんと同じDランクの冒険者チームなんだけどね、こないだ希少な薬草の採取依頼を受けてたんだけど……」
マリーさんの話を要約するとこうだった。
希少な薬草採取依頼を受けたものの、主に薬草を探すジョブ?でいいのかな、その役割の人が森に入ったときに魔物にやられて重症らしい。
彼ら彼女らは希少な薬草を見つけられるような技術を持っておらず、冒険者ランク上昇間近での失敗はかなり痛いと。
その事でマリーさんは相談を受けて……何故か私に矛先が向いた。なんでぇ?
「私じゃ、役、立たなっ。」
「そんなことないよ!ネガちゃんよく普通の採取と一緒に希少なやつ採ってくるでしょ?その感じでやってくれるだけでいいんだよ!」
マリーさんのキラキラした視線が痛い……身体が焼かれる……
以前も言った気がするけど、私は期待されるとどうにかしてやってやりたくなる系のぼっちである。期待に応えると僅かながら私という人間の価値が認められたような気がするのだ。
だけど、それでもさすがに……!知らない人、しかも完成されているコミュニティに入るのはキツい!
黒歴史の一つがフラッシュバックする。
校外学習、林間合宿、修学旅行、etc……それらの全てにおいて「どのグループでもいいんだけど、余ってる子がいるから入れてあげてくれない?」と言われせめて彼ら彼女らの楽しい空気を壊さないように背景に徹した記憶が……!この話はよそう。
とにかく、私がチームに入る?それはもはや拷問というか地獄なのだ。
私は、ソロ行動しかできないと言っても過言ではないと言うのに……!
「ぁの、申し訳ないん、ですけど……」
「駄目……かな」
「…………」
「そっか……無理言っちゃってごめんね。実はその重症を負った子が私の友達でね。」
え。
「責任感じちゃってるみたいだからなんとかひてあげたくて……ネガちゃんならもしかしたら、って思ったんだけど」
え゛……
「まぁ私にも心当たりがないわけじゃないから、他も当たってみるよ。」
…………
そんなの言われたら……私に断れるとでも……?
「やります……」
「え?いや、無理強いとかはできないし!」
「やります……」
「そ、そう?ならよかったんだけど……なんか申し訳ないなぁ……」
私には残念ながらこれを拒否する術なんてなかった。はぁ……やりたくない……でも断れない……
というかそもそも私が希少薬草を見つけられるのは探索が得意だからでも運が良いからでもなくてただ《叡知》のチートに頼ってるだけなんだけど……
人前で《叡知》は使いたくない……絶対に。そしてできればコミュニケーションも取りたくない。いや取らないのは無理だと思うけど、少なくとも会話をしたくない。嫌いだからとかじゃなくて、コミュ障だから。
私はマリーさんに言われた内容をしっかり聞きつつも、どうしたら良い感じにお手伝いを終わらせられるかを考え始めた。
翌日。
できるだけ早い方がいいということで、本日既に集まることになった。
《叡知》の無駄うちはしたくないということで、足りない頭で考えた。いかにして私はコミュニケーションをできるだけ取らずになおかつ《叡知》がバレることもなくこの依頼を成し遂げるのか。
結果……
私は集合場所に既に集まっている3人組を見つけた。重装備の男の人と、魔法使いっぽい女の子、あと……神官服のハ……禿頭の人。
私が彼らに近づくと、彼らも私に気づいたようだった。
「あ、もしかしてマリーさんの紹介してくれたネガさんです、か……?」
彼らがまるで物の怪でも見たような奇怪な物を見る視線を浴びせてくるのがわかる。まぁ気持ちはわからないでもない。
とりあえず聞かれたので首を縦に振る。意思疎通はジェスチャーで済ませると今日は固く誓っている。当初手話も検討したけどそもそもこの世界に手話はなかった。当然だけど。
あとなんかちょっと手話をせざるを得ない人に対する冒涜のように感じたので気が咎めたというのも、ある。
「その……」
来たか。私に対してまず100%来るであろうと予想していた質問が。
「なんでその……紙袋を頭に被って目の部分だけ穴を空けて……?」
そう、私は今、紙袋を頭に被るどこかで見たスタイルをしていたのだ──このためにわざわざ無駄にリンゴもどきを買い込んだのは若干悔やまれる。
だいたい決まりました!
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