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平和な薬草採取に行こう(予定)

 なんとか登録して冒険者ライセンスを発行してもらえた私は最初の依頼を受けることにした。ちなみに冒険者ライセンスは3000マニだった。価格としては1マニ1円。わかりやすくて助かるなぁ……


 しかし私のお金は全財産で残り42000マニである。1週間生き延びるのが限界ってところだと思われる。


 私はなんとか身振り手振りだけで宿泊の意思を伝え、振り絞った勇気の代償と言わんばかりの深い眠りについたのだった。夜ごはん食べてないや……


 翌朝。


 空腹のあまり5時に目覚めた私は朝ごはんを食べて冒険者ギルドに直行した。


 人は稼がなきゃ生きていけない。3食と宿、その他経費を考えれば日に5000マニは稼ぎたいところだけど……


 ちなみに今の私の装備は「ぬののふく」と「銀のナイフ」くらい。心許ないにも程があるけど、あくまでも目的は薬草採取、しかも《叡知》補正を考えれば全然安全のはず。


 昨日見た限りでは薬草は指定したものを指定量採ってくる依頼型と、指定されてなくてもギルドの判断次第では高額で買い取ってくれたりする。


 なので私としては依頼分+希少な薬草をもって稼いでいくスタンスである。お金があるに越したことはない。もしこの国が滅んでも逃げ出せる資金が欲しい……


 依頼掲示板を見ると普通に薬草採取はそこそこの数の依頼があった。一旦ギルドを出て人目につかないところで《叡知》で周辺地理を調べ、この辺りで採りやすい薬草の依頼を選ぶ。


 いや、人がいるところに耐えられなかったなんてことはちょっとしかない。でもそれ以上に目立つし、何より《叡知》はチートだ。私は安全な生活と老衰のためにこの能力を使う気しかないけど、持つ者によっては値千金……どころか万金、なんなら億や兆くらい価値がある、かもしれない。


 そんな私が見つかって誘拐でもされようものなら私は99%死ぬだろう。間違いない。だから人目につかないところでやってるんです、人目なんて怖くなごめんなさい怖いです。


 とりあえず当たり障りない依頼を取って昨日の受付嬢の人に渡す、無言で。私の勇気はまだ回復してない。する予定はわからない……


「えっと……この依頼を受けたいのかな?」


 返答は難易度が高いので、首を縦に振って肯定の意を示す。


「あ、わかった。受理します……ところで」

「!?」


 声のトーンが変わった。まさか私がここに来たことに文句を呈するのだろうか。あるいは私が会話をしないから一人で喋らせてしまっていることに気づきぶちのめそうとでもするのだろうか……


「私、何かしちゃったかな?」

「……ぇ?」


 何を言ってるんだろうこの人は。むしろ虫けらのような私としっかり会話をしてくれたり会話中に舌打ちしたりしないいい人なのに……


「ほら、全然声を聞かないし。」


 すみません、喋る勇気がないんです。


「話してくれても臆病というか……なんか上擦ってたりするし。」


 すみません、会話経験が少ないのでビビってるんです。


「それに何より……視線が合わないし。」


 すみません、視線を合わせると頭の中が真っ白になるんです……!


「だから……なんかしちゃったかなぁって。」

「ぃ、ィエソンナコトハ……」


 私がコミュ障のせいで受付嬢のお姉さんに迷惑をかけてしまっている……お姉さんが罪悪感を感じる必要なんてないというのに……生きてるだけで申し訳ないのに人に迷惑かけるとかもう切腹じゃすまないかな……


「しゅ、しゅみませんでした……煮るなり焼くにゃり好きにしてくぁさい……」

「え!?そんなことしないよ!?」


 こんな私を許してくれるなんて……この人は神様かもしれない。というかたぶん神様だ。女神様だ……


「ぁの、自分、会話が、苦手で。なのでお姉さんは悪くないというか私のせいで迷惑困らせて申し訳ないというかほんと生きててすみません、はい……」

「え、いや全然謝らなくていいんだけど……」


 マズい、早口が出ちゃった……これもコミュ障にはあるんだよなぁ、しっかり意思を伝えようとすると無駄に早口になっちゃったり……


「じゃ、じゃあ今度からは筆談とかにする?話すの苦手でも、それならできそうじゃない?」

「……!」


 この人……やっぱり女神だ。私に筆談という対人コミュニケーションにおける希望を教えてくれるなんて……本当に最高の人だ……崇めなければ……


 しかしだからこそ筆談は甘えだろう。私はできるだけ自分で言葉を発する覚悟を決めた。


「えっと、確かネガちゃんだったよね?これからよろしくね!私は冒険のお手伝いはちょっとしかできないけど、会話が苦手なのの克服とかなら手伝うから!」

「う、うぁぁ……」

「!?泣かないで!私何かした!?」

「ぃや、あの、感涙ですはい……」

「そ、そっか、それならいいけど」


 こんなにいい人が世の中には存在していたんだ……!というか私ごとき虫けらにもその慈愛を向けてくださるとか……最高の人すぎる。


 しかし、しかしである。


 これだけお膳立てしてもらったのだ。私はやらねばならない。


 名前を聞くということくらい、私自身がやらねば……


「あ、あの!」

「んっと、どうしたの?」

「えっと、その、お名前を……」

「あ、そうだったね……私はマリーだよ。」

「マリー、様……」

「なんで様付け!?普通にさんでいいよさんで!」

「いやその、おお恐れ多い」

「えぇ……でも様はやめてほしいかな……」

「善処しまふ……」


 こうしてやり遂げた私は普通に満足感から帰ってしまい、その後依頼を受けなきゃだったことを思い出した。でもなんか2度顔を出すのはアレな気がして行けなかった。


 ──つまり、たとえマリー様、いやマリーさんと話せたとしてもコミュ力の上昇は足りてないって事だ……明日はちゃんとやりましゅ……

 なんか+1話書けました

 さすがにさらに+1話は期待しないでください

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