怖いのはお帰り頂きたく……
私はその後も普通に森で薬草を刈り続けた。
私が行く度にペースが速くなりつつも、《幻惑の霧》は《叡知》を前にするとあまりに……相性が悪い。
だから私は慣れてしまった。「あーはいはい、いつものやつね」と軽く流してしまった。
……まぁ、それが間違いだったんだろうね。慣れと言うのは恐ろしい。最初は出る度ビクッてして慌てて森から出ていたのに最近は気にしなくなってたし……
それが気に入らなかったのだろう、私の目の前には【幻帝】さんがいた。ほんとすみませんでした調子乗ってました許してください……
だけどまぁまだ戦わなきゃいけないと思うのは早計。私は対話を試みる事にした。
「えっと……どぅーゆーすぴーくじゃぱにーず?」
反応はなし。うーん困った。日本語は通じないかぁ……謎翻訳も機能しないし……
どうしたものかと悩んでいると、突如【幻帝】の姿が消えた。
……撤退した?ならいいんだけど……アホ毛レーダーがビンビン反応してるんだよなぁ……
私はなんとなく嫌な予感がして《叡知》を発動させた。すると視界に即イメージが反映されていままさに私に噛みつかんとする【幻帝】さんの姿がっ!
「うひゃあっ!?」
なんとか転がるようにして回避。無意識下でもちゃんと魔力で強化できたみたい。私偉いぞ~。今だけは自分を褒めて気分を上げないとやってられない。
……思い返せば辺境が焼かれた時以外で死の危険がここまで近くに迫ったのは始めてかもしれない。ゴブリンとかオークはすぐに勝てたし……
あと私は《叡知》で世界が10分の1の速度で見えている。それを持ってしても【幻帝】の動きは速かった。
……つまり素の私なら即死である。
あとついでに私がスペック10倍化して戦うのを強いと思ってる人もいるだろうけど、私の場合あくまでも一般的な7歳児の10倍なので実はそんなに凄くもない。あと速いと本当に見えない。ヤバい。
え、というかこの森にそんな化け物が出るとか……というか遭遇するとか思ってなかったからいろいろと足りない物が多いぃ。いまだに私は「ぬののふく」と「短剣(使いすぎでだいぶボロい)」だけだぞ!
でもそんな都合は【幻帝】さんには関係ないんだよね、知ってる。ほら今分身生み出したし……分身?いやアレ幻覚じゃん。本体は1人かぁ……
なら本体の攻撃だけとりあえず気をつけて、あとは回避しつつ距離取って逃げよう。そしてここにはしばらく近づかないようにしよう……
一方ネガが逃げきってなんとかするというあまりにも消極的な行動を取っている相手、【幻帝】は困惑していた。
綺麗に自分本体の攻撃だけは避けられる。もうかなりの量攻めていることは確実だが、それが1発も当たらない。
そもそも【幻帝】は素の強さで言えばSランクでも下位に属する。それでも危険とされているのは《幻惑の霧》による翻弄が厄介なことこの上ないからだ。
もちろんそれでもSランクな以上強いことには間違いないのだが……《幻惑の霧》が効くのと効かないとではとてつもない差が出る。
その差を埋められないことにじれったさを感じつつ、【幻帝】は速度を上げた。
私は紙一重で【幻帝】さんの攻撃を避けて避けて避け続けた。
攻撃を受けたことがないので気づかなかったんだけど、《叡知》様には回避能力まで備わっていたのだ。嘘みたいだけど本当だ。
【幻帝】は速いとはいえど目で追い切れない速さではない。そもそもたぶんスペック自体がかなり下がってる。
それは恐らく……もはや身体と同化しているような1本の大剣にある、と考えている。まぁ今の状況は有効に働く物はじゃんじゃん使っていきたいのでありがたいんだけど。
そしてその肝心の攻撃なんだけど……“見え”てるんだよね。攻撃の軌道?っていうのかな、それが視界に映ってる。……確率付きで。
よくわからないけど次の攻撃の軌道とその確率が複数視界に表示されるのだ。私は《攻撃予測》って呼ぶことにした。ちなみに当たりそうな可能性があるやつを全力で距離取って1個も無くすのが現在の戦闘スタイルである。消極的だよね、私もそう思う。
でも当たらない。当たる可能性があるものは全部避けちゃってるから。……イキり主人公みたいだ。なんかやだ……でも攻撃当たるのはもっとやだ……
とりあえず私は弱点を探る事にした。この図体な以上どっか突いたくらいじゃ止まらないだろうけど……止まるんじゃねぇぞ?団長はお帰り頂きたい。
とにかく少しくらい動きを遅くしたりはできそう。現状は私がちょっとアドバンテージがあるけど持久戦になると有利なのはあちらだし、ハンデでも貰うつもりで……ん?
私が見抜いた弱点、それは思ったより簡単なもので……そして【幻帝】を、倒せるかもしれないものだった。
「蒸気でホットアイマスク」なるものを買ったら寝過ごしてました
誠に申し訳ありません、すみませんでした
てことで遅れて投稿です




