プラトニック
注意事項1
起承転結はありません。短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
坂を登ったその先に、昔馴染みの神社があります。木々が本当に多くて、風が吹き付ける度に重なった葉が木漏れ日の模様を変えていきます。そこの末社として、ちょこんと祀られている神様に、そっと淡い恋をしました。
彼は私が訪れると決まって姿を表して、手の甲をそろっと撫でて下さいます。齢三十代。白金ののふっさりとした髪と、円を描いた緋色の双眸が特徴の綺麗な神様。
「□□様、□□様」
「君は何時も泣いてばかりだなぁ」
泣きじゃくって頬を濡らす私を慰めるように、親指でそっと頬を拭って下さいます。貴方様の神気がとろりと流れ込んで、熱くなるのを感じました。喉を焼くような上質な酒を煽ったような酷い酩酊感。支えて下さる貴方様だけが唯一の頼りで、ぐったりと凭れかかります。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい.......」
「ん。私が詫びよりも礼、泣き顔よりも笑顔の方が好きだと知っているだろうに。でも」
ただ貴方の顏をただ私の目に写させていただけるだけで十分なのです。寧ろそれ以上の物を下さいますと、私ではなくなってしまうのです。
それなのに貴方様は.......。貴方様はすっぽりと私を抱き込んで、神気が良く馴染むように、背を摩って下さいます。持ってはいけない感情。それが胸の奥で煮えたぎって、暴走して、貴方様を汚してしまいそうな恐怖に見舞われます。
「有難う。そんなに生粋の好意をくれて。きっと後にも先にも君だけだろうよ。私が君を愛するのは」
貴方様が何人ものお人、神様と恋をして、情を交わしても、私は決して構いはしないのです。私が勝手に恋をして、焦がれているだけなのですから。
.......でも、この願いを叶えて下さるのならば、今だけは、今だけはその美しい顏に私だけを映して下さいまし.......。
「□□様、□.......□様.......」
くらりと気が遠くなって行くのを感じます。でもこれで良いのでしょう。こうすれば、貴方様を穢す事もないのですから.......。
「おや、酔ってしまったかな? 」
腕でくったりと目を閉ざしているのは、愛しい幼子。私に対して下心もなく、ただ一途な好意だけをぶつけて来る可愛い子。安心して、神隠しなんて起こさないから。でも今この一時だけは、君は私のもの。
凄く綺麗な感情だけど、凄く穢い感情だな.......。
と思ったり。
前に私の短編で似たような物を読んだ気がする.......。
と感じた方、鋭いですね!! プロトタイプがこれです!!
本当、大好きです。
この感情を残して置くために、書き起こしました。
穢い感情なんですけどね。