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小説 二代目王女モドキ物語

作者: 矢城白也

[1391] 【小説 二代目王女モドキ物語】 


挿絵(By みてみん)



王女モドキは、もうこの世にいない。


そんな世界の昼ごろ、1人の女性が本がたくさん沈む沼に願う。


「アタシを王女モドキにしてくれ。アタシが王女モドキを引き継ぐ」


そう言い終わると沼に飛び込んだ。


その女性の名は、ていかく・こえ、デコルテに第三の目がついている特異体質の黒髪の女性だ。



緑色に濁る沼に身を任せると、彼女は、全身に生ぬるい熱を感じ、その日の夜に、沼の中央に浮かびあがってきた。


沼は、にごりをなくし、池に変わっていて、容易に抜け出せた。



水から上がると、振り返り、池に映る自分を見る。



「アタシは王女モドキになれた。今は亡き王女モドキに。だけど変だわ、アタシの元の姿の時からある黒髪がところどころ残っている。なにより、デコルテの目もある。完全な王女モドキの体は再現できなかったのね……」



それでも、ていかく・こえは、これから、自分のことを王女モドキと名乗ることに決める。



かつて、剣土国(けんどこく)にいた、第三王女に似た姿を持つ、王女モドキという男の通り名を引き継ぐのだ。



「アタシは、王女モドキ、かつては、彼の側室だったけれど、今は彼自身にかなり近い存在。悪い気はしない。彼の力で世を支配するわ」



ていかく・こえは、二代目王女モドキになった。彼女の野望は、強い力を手にいれ、刀土国で、堂々幸せに楽しく暮らすこと。



彼女は、迫害を受けた、かつては、弱者。けれど今は違うんだ。



二代目王女モドキは、上を向いて、つぶやく。



「アタシは革命を起こすんだ。私が生きやすく堂々と生きるために、自分のことは、頑張って変えてきた、良くなるように。けれど、それも、限界が来た。次はこの世を変える番だ。力を見せつけ、世を変えるんだ。アタシみたいな特異な者が生きるために。」







ていかく・こえ、いや、二代目王女モドキは、刀土国(とうどこく)という、瓦屋根で木製の家が並ぶ国に来た。


まずは、国の人間に、自分の生き方を認めてもらうには、自分の生き方を詳しく知ってもらわなければ、二代目王女モドキは、自分が世をどう思っているか、書いた日記を何枚も、何枚も書き写し、町にいる人々に配った。


書いてある内容は、特異体質な私は力を示し、尊敬を得ようと考え、名刀ひとめという刀を手にいれようとしたこと、ひとよらずの怪物の力を手に入れたこと、それから、自分の生き様は、素晴らしいのだと認めて欲しいと書いた。


たくさん、たくさん、書いた15000枚は、自分が書いた思いプラス、日記を写して、配った。手書きで綺麗な字じゃないけど書いた。



配って、渡して、繰り返す。春夏秋と。



そんなことをしていると、わつやし・そえなという名前を聞けば震えあがる。女性に声をかけられた。


「貴方、ひとよらずの怪物が、熱心になにしているのかしら?」



二代目王女モドキの赤い二本のしっぽが握られていた。

わつやしという、隻腕で青い着物を着た黒髪の女性に。




わつやしは、胸元にある、目をにらむ。


「アタシが生きやすい世の中にするために、アタシを理解してもらおうと本をくばっている」


「恐ろしい見た目の怪物ねあなたは、そんな姿じゃ、誰も愛してくれないでしょうね」



わつやしは、それだけ言うと、しっぽから手を離し、二代目王女モドキが書いた本を一冊受けとると帰っていった。


二代目王女モドキは、それから、来る日も、来る日も思いを書いた本を配りつづけた。


そして、ついに、二代目王女モドキは、少しずつ認められ始めた。



彼女の産まれながら特異体質で偏見にさらされた事実を理解し、同情し、民衆は、となりに座りおしゃべりしたり、食事を一緒に食べたりした。


人間らしい。かつて、一代目王女モドキやキラメア、香乃といた日々を思い出すそんな時を過ごした。



やっと故郷の人間と楽しい時間が過ごせたのだ。



あきらめずに自分を理解してもらおうとするのは、大変だけど、悪くないのかもしれない。


【end】

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