31話
また時間かかってしまった。
まだまだ寒い中、皆さんはどんな過ごす方されてますか?
貧乏暇アリ……しかし、やる気と持続しない集中力を打破するために時間が過ぎていく……悪循環www
資料室で調べ物をしながら、ふと気になってた事を補佐官に聞いてみた。
「そういえば、昨日の繭になる経緯の報告の時にちょっと思ったんですけど、ジャイアントを召喚してたってありましたが、ジャイアントって使い魔みたいな契約って出来るもんなんですか? 動物とか低位の魔物くらいしか聞いた事ないんですけど?」
「そうね。低ランクの冒険者ならそこまでが限界かしら。中ランクで精霊と契約してる人もいるわよ。中には異界の魔物と契約してる高ランクの人もいてるわね」
異界の魔物と聞いて、脳裏にはあの幼女が浮かんできた。ワニの頭に鬣を持つ魔物……実物が気になるが。
「じゃあ、高ランクならジャイアントでも使い魔に出来るんだ。でも、使い勝手が悪そうですよね……連れ歩いてたら町にも入りにくいし、一般的に使われる偵察なんかも目立って使えないし。普通に考えたらあんまりメリット感じませんね?」
私の疑念にカレナが、
「確かに、大型の生物を使役するメリットって、戦闘くらいしか思いつかないわよね? でも、過去の英雄とかって竜種とか強力な魔物を使役していたって言うし、特殊な能力を持っているならありかな。空を飛べるとかも移動手段ってのでありよね」
「なによ英雄って? それって昔話が誇張された創作物なんじゃないの?」
私の主張にちょっと呆れたような表情になったカレナが、
「そうでもないわよ。ミーヤが言ってるのは本屋に売っている物でしょ? そういうものって誇張されがちだけど、資料室に功績を認められた偉人の資料とかがあるの見てないの?」
「え〜? そんなのあったっけ? 必要なものに集中してたから気付かなかったかもしれないね。ワタシ、集中してる時は他所見しませんからっ!」
別に、仕事デキるアピールとかじゃないんだからね。こんな大量の資料の中で調べ物探す仕事の合間に、私の興味を誘うものでもない限りはスルーして当然だってば。
「はいはい、ミーヤにとっての興味なんてその程度なんだから。趣味のことなら結構本気出すのにね」
「ひっど〜い、補佐官っ! 私、ちゃんと色々と勉強とか頑張ってますよ。ただ、引き出しに仕舞った知識の整理が追いついてないだけなんです」
ちょっと?! 二人して可哀そうな人を見るような目ツキ、やめてもらえます?
「話を戻すわね。確かに過去の文献には強力な魔物や竜種等を使役していたってのはあったみたいね。一般にあまり見られないのは、契約がかなり難しいとされているから。精神世界での力の強さによるみたいね。そして強力な個体ほど契約による対価も大きくなっていくわ」
「じゃあ、巨人族を使役するってかなり力のある者ってことですよね。しかも3体、いや……追加がもう3体いましたっけ?」
「そうよ。そこで問題なのが、最初に巨人を発見した時の報告を思い出してみなさい」
「たしか…………あっ、虚な感じでゴーレムみたいに単純な行動をとっているようだった……でしたっけ?」
私の回答にカレナが追加して、
「通常、契約をしてるだけならそんな単純行動を取るだけなんておかしいですよね?」
「そうよ。まだ推測の域を出ないんだけど、今回のは契約とかではなく『強制呪』ではないかと思われてるわ。この術は、主に異界の中位悪魔以上が使用しているのを確認しているわね。悪魔の使う魔術はまだ一部しか解析されていないけど、私達の使う闇属性魔術の基となったものも多いわよ」
私達が使う魔術は、この世界に満ちる魔力を自身の体内の魔力を核として変換し、魔術として発動させる。核となる魔力の圧縮効率により、術式展開に影響を及ぼす。圧縮した魔力とは、毛糸の玉にした物を思い浮かべるとわかりやすい。一本の糸で術式の紋様を展開するのだ。糸が圧縮した魔力として細ければ細い程、複雑で多才な術式を展開出来るということだ。圧縮して制御できる大きさや、術式を創造する知識によって術師の格も決まる。
そして魔術の系統は、火水土風の属性と光と闇の属性となる。精霊魔術にも類似しているが物理的な影響の違いで変わってくるのだが……面倒いので省略する。光属性は神聖魔法、闇属性は異界の魔法と類似する。
「私たちの知ってる『強制』と『強制呪』は何が違うんですか?」
カレナってば、そこまでお勉強してるの?
私が知らないってことは上位魔術って事か。相変わらず優等生なんだから。
「私達が使える『強制』は行動の制限を契約として課すものよ。対して、悪魔族が使う『強制呪』は魂を束縛し精神を傀儡化するものね」
「そう聞くと私達の方の魔術ってショボく感じますね。でも、術式による契約ってことは違反した時の罰則だったりとかはどうなるんですか?」
「契約内容に違反した場合は、最初は警告として神経に作用する軽い痛みから始まって、段階的に激痛になっていくのよ。それと使用する方にも制限があって、複数の制約はかけにくくなってるわ。普通は1つの制限でも複雑な術式になるそうよ。そういう面ではミーヤの言う通り、悪魔族の『強制呪』は傀儡とする分制約はないから強力よね」
「相手が悪魔族でなかったとしても、それ相応の知識を持ったかなり強力な敵って事になりますね? でも、繭から生まれ変わった個体にも『強制呪』って作用してるんですかね?」
さすがカレナね。良いところに気付くわ。
「どうなのかしらね? 今回みたいな魔物が繭になって変態するような事例は聞いた事がないわ。でも『強制呪』と仮定するなら、魂の束縛という点から肉体の再構築だけなら作用は変わらないんじゃないかしら? 私は研究者でもないし、魔術は本での知識でしかわからないわ。ましてや悪魔族の魔術なんて、一部にしか公開されてないんだから専門外よ」
補佐官はそう云うが、さすがの知識です。これを年の功と言わずになんと言う?
ポロッと言いそうになるが、言葉にすると激おこ案件だから内に秘めておく。
「何よ、その拍手は?」
しまったぁ!! 感心の気持ちが自然と拍手するという態度に出てしまった。
「えっ、いやぁ〜さすが補佐官だなぁって……あっ、そうそう疑問ついでに、今回のレイドはイレーヌさんが現場の状況を都度、報告してくれてるじゃないですか。前回の時のレイドって、いつくらい前なのか知らないですけど今回みたいな通信手段ってなかったと思うんですけど、連絡役とかがいて現場と本部?を行き来したりしてたんですか? それか完全に現場任せで、事後報告だったりしたんですか? 途中の作戦行動の変更とか物資の補充とかあったらどうするんですか?」
「今回の作戦行動に関しては、繭がどんな行動や影響を与えるかわからない点が多すぎたから正直現場任せになってしまってるわね。事前準備としては巨人討伐を基本としてたのはわかってると思うけど。こういう作戦行動の場合は、相手の規模、生態や種族特性などを考慮して行動の予測を立てて準備しているわ。拠点防衛とか軍事行動と違って、都度作戦行動を変える指示は現地の隊長の判断しかないからね。連絡役を出す時は最悪の状況に陥った時か、討伐完了の報告かしかないわよ」
「そう考えると、普段の依頼の大規模版ってだけかぁ。皆んな事前準備と情報収集をちゃんとしてますもんね」
なんか難しく考えてたけど、見方ひとつでこんな簡単に考える事出来るんだ。俯瞰力を養わなければいけないな。
「今回のイレーヌさんからの通信手段はありがたいですね。万が一の際に迅速な行動を取れるって事ですもんね」
カレナったら、不吉な事を言わないでちょうだい。
苦い顔した私を見て、
「そんな顔しないでよ。私だって心配してるのよ。今回の件は、今までに類をみない事が多いもの。不安になれば意図せず、弱音を吐く事だってあるわよ。それにそういう不安を紛らわすために今、調べ物してるんじゃない。手を止めて話を振ってきたくせに、不安募らせてどうするの」
怒られちゃった。
「ブゥーーー」
仕方ないじゃない。近くに誰かが居たら話したくなるのは必然だわ。黙々と作業に没頭なんて出来るわけないじゃない!
「はいはい、私が悪う御座いました。ちょっと気になってた事聞いてみただけなのに。この沈黙に耐えて、調べ物なんか出来なかったのよ〜……よよよ……」
そんな言い訳をかましつつ、作業再開しながら雑談をかわしていると、補佐官が一冊の本を見つけてきた。
遊びに行きたいストレスが……




