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24話


4月と言えば新入社員。

新人研修に時間と気力を取られ、また遅くなってしまった。



 ティッチさんとマスターは食材と料理の話で盛り上がっている。

 私は置いてけぼりで、会話に参加できずに1人酒だ。バジリスクの卵も無くなったので、今度はミノタウルスのすじ肉をワインでいただきながら、他のお客さんの会話に耳をそばだてた。


「そういやぁ、おめえ聞いたか? 今この街に新しい宗教の奴らがきてるらしいんだけどよ、なんでも厄災が降臨するって広めてるらしいぜ。昨日のレイスの一件も、その予兆だなんて言ってるらしくてよ」


「あれか? 女神教とか言ってる奴らだろ? 今日、広場でみたぜ。すぐに神殿関係の奴らがきて揉めてたらしいな。揉めてるところを見てただけだから何してんだって思ってたけどよ」


「それがよ、『厄災を鎮めるために女神様から新たな神が生まれ、この世界を安寧へと導くでしょう』とか言ってやがんの」


 ほほぅ。女神教って、そんなこと言って布教活動してるんだ。それはなかなか布教しにくいんじゃないかな?

 この世界の5柱って名の無き創造神達って一括りで呼ばれているの。5柱もいて何故一括りなのか? なぜ名がないのか? それは、神の発する言葉がこの世界の言葉では発音できないかららしい。では、どのようにして神の言葉が伝えられるのかと言うと、頭の中に神の思念が浮かんでくるんだって。それを言葉にして広めてきたらしい。でも、誰もが神の思念を読み取れたわけでもない。神の思念とは膨大な情報量なのだ。頭パンクするらしい。文字通り爆発。目や耳から血を流してたって聞いたことある。神の思念なんて関わりたくないわぁ。そんなの誰が伝えること出来るの?って感じだよね。

 それが出来るのが、『神子』と呼ばれる存在である。どこからか現れて神の御技を行使して言葉を伝えるんだって。


「女神教って5柱の母とか言ってるんだろ? しかも新しい神様だって? 何言ってんだって感じだよな。神様がそうポンポン現れたら、誰に感謝をしないといけなくなるんだ? だいたい昨日の今日であたかも予言してたみたいに厄災の予兆だなんて言ってるのなんか、詐欺みたいなもんだろ」


「ああ、俺も同意だな。だけどな、噂によると女神教の教祖が神子だって話があるんだよな。その神子が布教で各地を巡って、神の御技で奇跡を起こしてるってよ。昨日どこぞの冒険者っぽいのが言ってたわ」


 どこぞの冒険者? 流れの冒険者かな? ギルドには顔出してなさそうだけど……そういえば、昨日ここに知らない冒険者がいたな。店内を見てみるけど今日はいないみたい。おっちゃんらは仕事の愚痴に話が変わったので聞き耳するのはやめた。

 ふと、ティッチさんは女神教って知ってるかなと思いそちらに顔を向けると、いつの間にか何か食べてる。私も呑むのをやめにしてご飯にしよう。


「マスター、私もご飯〜一夜干しがあるって言ってたよね。それと、前に豆乳使った生姜入った香草のスープって作ってくれてたよね。食べたいなぁ」


 マスターは予想外の注文に文句を言いながらも作ってくれる。


「そういえば、ティッチさんは最近までどちらにいらしたんですか? やっぱり王都を中心に活動してるんですか? それと、ちょっと教えて欲しいんですが、最近よく聞く女神教って知ってます?」


 急に喋りかけたからか、なぜか少し咽せ込んでたが、


「そうね、今回は南の大森林で仕事があったからそこから来たわよ。普段は転々と諸国漫遊が基本ね。用事がある時だけ王都に行く感じかしら。……女神教なら知ってるわよ。教えれる範囲なら答えてあげれるけど、何が知りたいの?」


 ティッチさんが言うには、女神教の教祖は確かに『神子』だと思われるらしい。ただ、教義についての信憑性は捜査中だという。ティッチさんの言い回しは組織絡みっぽいのであんまり突っ込めないでいた。

 創世記の神話にたくさんの神がいて、今の5柱だけが残った逸話からも、まんざら作り話でもないらしい。現に魔族であるダークエルフ族は、異界の神から恩恵をもらっているので神は他にもいるからとの事。しかし、どう言う理由かはわからないが神としては信仰されておらず教義などもない。大いなる意志として崇められてはいるのだが、5柱の枠組みからは外れているそうだ。

 女神教が5柱の母であるのかは信憑性がない。では父は?ってことで揉めたらしいが、原初の神として他の神を創造したって教義らしい。昔から議論されていた6柱目の神の存在は、ただの学者達の仮説ではあったが、今回は神の思念を読み取ることができる『神子』が広めているのである。その神子も本物かというと微妙であるらしい。確かに、今まで存在していた神子と同等だろうというくらいの奇跡を起こしてはいるようだ。

 ただ疑問点があるらしく、それについては詳しく教えてもらえなかったが、神の御技と呼ばれる奇跡とは何か? これについては個々で奇跡の内容が違うらしいが、概ね魔術系統では実現できていない術式を行使する事を奇跡としているらしい。ここだけの話と言う事で、小声で教えてもらったのが今回現れた神子は、イレーヌさんやシフォールさんなら使える術式を奇跡と称して布教活動をしているらしい。お二人が使う術式は特殊なもので、一般には伝わっていないので初めてみる人達には奇跡に見えるだろうって。ただ、その秘匿されている術式をどうして知り得たのかは調査中なんだって。そして不思議なことに、接触しようにもいつの間にやら遠方に移動しているらしい。

 それってある意味、奇跡ですよねって言ったら、メッチャ睨まれた。

 厄災の件については、気になる事があるとだけ教えられた。なんかティッチさん達が気になる事って、とっても悪い予感しかしないんですけど……そんなこんなをお喋りしながら、マスターの作ってくれたスープと一夜干しをアクアパッツァ風にしたのを堪能した。もちろんティッチさんは、私と同じものを注文して食事した後、更に注文していたが……

 お腹も満たされた頃には6の鐘が鳴っていた。


「もうこんな時間かぁ。マスターご馳走様。お会計お願いします。ティッチさんはこんな遅くまで大丈夫なんですか?」


「そうね。私もそろそろ帰ろうかしら。今夜は意外と満足する食事ができたわ。他にも良いお店があったら教えなさい。満足できたら奢ってあげるから」


 ティッチさんと別れ、夕方には多かった巡回の警らの人たちが、気持ち少なくなっているのを感じながら帰り道を歩く。ふと夜空を見上げると、雲も少なく月明かりが眩しいくらいに綺麗に見えている。こんな綺麗な夜空を見ていると、ふと寂しい気持ちにさせられる。


 もの悲しい気持ちを吹っ切るように大きく深呼吸をし、お月様を見上げると…………屋根から屋根へ、何かの影が横切るのを見てしまった。



また短めですが、キリの良いところで思わせぶりな終わり方で続きます。

遅くなると待ってくれている人たちへ申し訳ない思いが……楽しみにしていただけてるのか、感想でもあれば励みになりますので、心優しい方の感想お待ちしておりますwww

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