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幕間3(1)


お待たせしました。


でも、幕間です。


 時は少し遡る。




 3の鐘が鳴り響く中、とある高級宿の一室でイレーヌは目を覚ました。


「もうこんな時間かぁ。ちょっと寝過ぎたわ。それにしても昨日はハズレだったか」


 ため息を一つつき、そうグチをこぼす。昨日のレイス襲撃事件で、デミリッチを捕縛し情報を仕入れてはいたが、予想とは違う結果に少し落胆していた。

 てっきり、自分達が所持しているモノを狙って襲撃をかけてきたと思っていたのだが、それとは別にこの街に、問題のあるモノを持ち込んだ者がいるようであった。

 とある遺跡から持ち出されたソレを狙って、デミリッチは現れた。正体はわからないが、デミリッチを使役できる者の存在も確認している。


「年寄りってホント頑固よね。素直に喋ってたらこんなことにならないのに」


 起きて身支度を整えていたイレーヌは、机の上のペンダントをそっと指先で撫でている。


 六角柱水晶を両側から龍の爪を思わせる4本の爪で挟み、爪の先から伸びた細い銀糸で包まれて繋がっている。チェーンの部分も銀糸を編み込まれた物だ。水晶の内部が虹色に揺らめき、まるで生きているかのようだ。


「フィラクテリーごと貴方を改変するの大変だったんだから」


 まるでペンダントと話をしているように独り言を続ける。


「わかってるなら結構。そこでなら研究も捗るでしょ? 貴方の思考は全て私に繋がってるから悪さも出来ないしね。……そんな悲観しなくてもいいじゃない? 『人』としての欲求も満たしてあげれるんだから、前の雇い主より得してると思うんだけど?」


 そうしてペンダントを首からかけ、宿を後にする。


 向かう先は盗賊ギルドであった。盗賊ギルドとは、一般では公に出来ない仕事を生業にしている組織である。場所によって善悪があり、一般人の認知ではあまりいい印象ではない。治安の良い街は善側の盗賊ギルドが仕切っている。犯罪発生とは、環境に左右されることが大きい。もちろん個人の野心などによる欲求もあるだろうが、生活が満たされているものはそこまで考えないものだ。表立てれない特殊な技術を、街の人のために役立たせ、承認欲求を満たし成長欲求に昇華させる目的の更生組織としている。

 実は、商業ギルドの裏の顔でもあった。もちろん冒険者ギルドも一役買っていたりする。通常の街は、ギルドが連携し街の治安を守っている。王都や領主のいる街では、ギルドが裏方として騎士団の補佐をしており、支援金や自治権を確保していたりもする。


 イレーヌは商業ギルドに到着すると、手の空いている受付に『合言葉』を伝えた。受付は奥の職員に声をかけ、イレーヌを奥の部屋へと案内させた。案内された部屋から隠し扉を通り、地下への階段を降りていく。降りていった先には5メートル四方の部屋があり、見張りであろう屈強な男たちが3人たむろしていた。上の隠し扉を開けば、ここに合図が送られて来る仕組みになっているので、男たちは誰が降りてきたのかと待ち構えていた。


「邪魔するわよ」


 イレーヌは扉を開けると同時に、そう声をかけた。

 不躾な物言いにいきり立った3人であったが、リーダー格らしい男はその姿を見ると驚愕の表情を浮かべ、入ってきたイレーヌに対して頭が膝につくのではないかと思うくらいの深いおじぎをした。周りの男たちは、リーダー格の男の態度に一瞬唖然としたが、男の1人が入ってきたイレーヌに対して凄みを効かし、


「おい、ねーちゃん。まずは俺らに挨拶が先だろうが。ここに通されたってことは、おめえもギルドの一員だろうがっ! どんな用事があるのかしらねえが、礼儀は弁えないとダメだよな?」


 言葉遣いは悪いが、至極真っ当な意見である。リーダー格の男はまだ頭を下げたままだ。2人の男たちは、イレーヌの姿をマジマジと観察し生唾を飲んでいた。


 今のイレーヌは冒険者の装備ではない。薔薇小路の娼婦のような扇情的な服装をしている。スタイルの良さを際立たせ胸元を露わにし、丈の長めのスカートは脚の付け根まで大きくスリットを開いて太ももを覗かせている。


「どこの所属だ? ここいらのもんじゃねえだろ? この街で仕事するならここに挨拶しにきたのはわかるが、ここは研修するところじゃねえぞ。それとも仕事前に俺たちと『お突き合い』でもするつもりなのか?」


 下卑た笑いを浮かべながら、2人はねっとりといやらしい視線で見ている。イレーヌは妖艶な笑みを浮かべて、


「相手してあげてもいいけど、もうちょっと教育が必要かしら?」


 その言葉を聞いたリーダー格の男が慌てて、おじぎをしたまま謝罪する。


「勘弁してください、イレーヌさん。こいつら、まだ教育中なもんでここの受付も満足に出来ないからここに居させてるんですよ。もうソレ解除してもらってもいいですかね? 俺でさえもイレーヌさんのソレにやられそうなんですから。この体勢キツいんです』


 2人の男はリーダー格の男の言葉に戸惑っている。この男は王都からの教育係であり、鬼教官として有名であった。この盗賊ギルドでも3番目にえらいのである。そんな男の低姿勢な様子に不味い雰囲気を感じとるが、なぜだか下半身は猛り情欲が抑えきれなくなっていた。


「どうしたんですか、アニキ? この女、何者ですか? この女見てると、身体が…………」


 そう言って、イレーヌと目が合った瞬間に下半身で猛っていたモノは暴発した。2人は股間を抑え、止まらない快感に身悶えていた。


「ちょっとぉー、ドランっ! 教育の仕方、甘いわよ。男連中しか相手してないからこういうことも疎くなるのよ。ジェンヌにも言っとくからプログラムを見直しなさい」


「一応、本部からこの街用に組んでもらってるやつなんですがね。イレーヌさんの基準で見られたら逃げ出すヤツ続出ですぜ。……にしても、教育途中でもこのザマじゃなぁ。イレーヌさんもちょっと加減してくださいよ」


 ドランと呼ばれた男は、ようやくおじぎを止め身体をほぐした。


「流石に貴方はすぐ気づいたから、合格にしといてあげるわ」


「抜き打ちの監査ですかい? この街に昨日来たことはわかってたんですが、正面からくるとは思わなかったですな。で、今日はそれだけじゃないんでしょう?」


「話が早くて助かるわ。調べたいことあるから、キーを呼んでちょうだい。この街に来てることは昨日知ったんだけど、探すのめんどくさくて。ここなら連絡取れるでしょ? それと、マグは居る?」


「キーなら今いますよ。ボスのとこに行かせますんで、奥で待っててください……って、俺が行かなきゃダメじゃないですか。こいつらいつ復帰できます?」


 床で白目を剥きながら、ヘコヘコと腰を振って悶えている2人に冷たい視線が向けられる。イレーヌもあまりの惨状に、こめかみから汗が出てきていた。


「あの〜ここまでするつもりじゃなかったのよ? 昨日、ちょっと本気の仕事しちゃってその反動で手加減が……」


「昨日の一件のですか? 姉さん方が助けてくださってたのは報告に聞いてましたが、教会の件だけが詳しい報告無かったもんで。でも、イレーヌさんが本気で仕事するって相当ヤバかったんですかい?」


「それも含めて、マグに話しとくわ。こいつら、この様子だと早くても2日は腰が立たないわね。奥にマグが居てるのなら勝手に行くわ。キーを呼んできてちょうだい。それと、帰るまでに掃除お願いね?」


 イレーヌはそそくさと奥に進んで行った。


 残されたドランは、逃げるように立ち去ったイレーヌを見送りながら、ため息をついていた。




この幕間ってプロットでは入れてなかったんだよな。

補足に必要ってことで。

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