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23話


お待たせしました。

内容がなかなか進まない……いいんでしょうか?



「あっ……」


 つい、我を忘れて叫んでしまった。そろ〜っと周りを見渡してみる。


 うん、注目されていますね。

 ヒィー、恥ずかし〜。そろっと立ち上がり、皆さんにペコペコと高速で頭をさげた。




「あ〜恥ずかしかった。マスターのせいですよ。見た目からして怪しい卵だと思ってたんですよ。百歩譲って、爬虫類系はいいんですよ。どれも美味しく食べること出来るんですから……でも、バジリスクってアレ、ですよね? ヘビの王って言われてる猛毒の、アレですよね? そんなのの卵って大丈夫なんですか? 後で高熱でたりとか、お腹壊したりとかないですよね?」


「大丈夫だよ。猛毒があるのは体内器官から生成されて体表面が猛毒であって、内臓は意外と毒がないらしいぞ。身体が出来てない卵に毒なんてないって。それにアルコールで消毒されてるだろうから、毒があったとしても消えてるよ」


 ガハハッって笑ってるけど、それはマスターなりのジョークなの? 本気で言ってませんよね? きょうび、お酒のアルコールで毒が消えるってそんなにないでしょ。しかも猛毒の持ち主の卵だよ。どんな副作用があったとしてもおかしくはない。

 ジト目でマスターを睨むが、無視して料理してるし。


「これをどう調理したの? 聞いてる限りお酒に漬けてたようなこと言ってるけど。こんな青くならないでしょ? 元はもう少し緑っぽかった気がするのだけれど? しかも、生臭かったんじゃなかったかしら」


 ティッチさんが、疑問を投げかける。


「実物見たことあるんですか? 他の調理されてるのを食べたとか?」


「見たことは、もちろんあるわよ。遺跡の廃坑に巣食ってたのを討伐する時に、全部潰したもの。その時の異臭はたまったものじゃなかったわ。後々聞くと、珍味として好事家が欲しがってるのを聞いて失敗したと思ってたのよ。調理すればどんなふうになるのか興味深かったんだけど、さすがに流通するのはなかったから食してみたかったのよ」


 バジリスクは廃墟、砂漠地帯や森の奥深くの人が踏み入ることがないようなところにいることが多い。体長は80センチくらいと小柄の魔物なのだが、集団で行動している。トカゲに8本の足が生えている見た目で、猛毒を周囲に撒き散らしており、近寄るのさえ困難なためBランク以上の討伐対象として認知されている。人里周辺の森なんかに出たら大変である。なにせ、常時毒を撒き散らしているんだから、環境汚染が甚大だ。そんなのに近寄りたくないよね。でも、なぜにヘビの王様なんだろ? 足の生えたヘビって、もうトカゲでいいんじゃない? そういえば、伝承ではかなり大型のバジリスクがいて、それがヘビだったらしく由来の元になってるとか。蟻さんみたいに女王みたいなのがいて、巷に生息してるのは子供って説が有力らしい。発見されてはいないみたいだが、痕跡はあったとか。


 それにしても、バジリスクの討伐までこなしてるなんて、凄いな。毒のせいで準備が大変って聞いてるけど。毒耐性のある魔獣が天敵って本で読んだな。けど、かなり強い神経毒って耐性があっても徐々に身体を蝕んで、行動を制限されるとか聞くし。


「バジリスクってかなり厄介な魔獣なんでしょ? どうやって討伐したんですか?」


「そうね、アータルって知ってるかしら? 火の上位精霊なんだけど、ところによっては神としても祀られてるわ。それに力を貸してもらったのよ」


 また知らない名前が出てきた。メモして明日調べよ。


「そんなことより、それどんな味に仕上がってるの? マスター、同じのはあるのかしら?」


 ティッチさんてば、随分気になってるみたい。マスターにスプーンをもう一本出してもらい、一口サイズにすくってティッチさんの口元に近づけた。

 キョトンとした顔をしてたけど、パクッと頬張るティッチさん。モグモグしてる姿が可愛いなぁ。


「あらっ?! 甘いわね。臭みもないし口溶けもいいわ。後に残らない甘みは好感触ね。同じのはないの?」


「残念ながら、試食でそれしかないんだ。元々、数が無かったからな。あと卵は3個はあるんだが、他の仕込み中だな」


「そうなの……なかなか手に入るものでもないしね。残念だけれども仕方ないわ」


「仕方ないですねぇ〜ティッチさん、はいア〜ン」


 今度はちょっと大きめにすくって、またティッチさんの口元に持っていくが、なんだか不機嫌な様子だ。


「どうしたんですか? はい、ア〜ンして」


 パクッと食べながら、


「なんだか子供扱いされてるみたいで、気分は悪いけど食べ物に罪はないわ。それにさっきのお詫びもかねて許してあげる」


「これしかないですからね。シェアしましょう。お酒に合うけど、ティッチさんにはまだ無理ですね」


「そんなことないわよ。ちゃんと呑めるんだから。あなたの呑んでるその透明なのもお酒?」


「そうですよ。これも限定ものですって。でも、ティッチさん呑んだらまた酔っちゃて、ご飯どころじゃなくなりますよ」


「酔ってもいいことなんかないのに、なぜみんなお酒を飲みたがるのかしら? 理解不能だわ」


 昨日は、イレーヌさんが居たから酔っ払ってもなんとか出来たんだろうが、今日は誰も居ないもんな。


「そんなことないですよ〜。お酒ってのはコミュニケーションツールです。会話を盛り上げてくれる楽しいひとときを与えてくれます。もちろん、飲み過ぎていらない本音を出しちゃう時もありますけど、普段聞けないような会話も出来たりして、仲良くなれたりもします。酔うことによってリラックスした気持ちになり、会話も弾みます。無礼講とは違うんです。マナーを守って呑まないと、楽しい雰囲気も台無しになっちゃいます。嫌だと思ってた人の内心を知れたりもします。余計に嫌いになっちゃうこともあります。語らいの起爆剤なんです!」


「あなた、酔ってるわね? ほどほどにしときなさいよ」


 そういえば、ちょっと酔ってるかも。和酒を呑んだあたりからかな? ワインよりもキツいかなとは思ったんだが飲みやすくて、話をしながらちびちびと呑んでました。

 うんっ! 今は楽しいっ!


 お酒に美味しいおつまみ、楽しい会話で夜は過ぎていく。



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