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22話


またまたごめんなさい。

随分と遅くなってしまいました。



「たのもー」


 話の途中で聞こえてきた掛け声に、マスターが入り口を向き怪訝な表情をしていた。わかります。入り口に子供っぽい人が立っているんですよね? 内心で、そうマスターに語りながら、確認のために私も入り口を振り返ると……誰?


 グレーに近いブルーの胸元が開いたボディスーツに、レースをあしらった短めのスカートを穿いている背の低い女性。長めの黒いローブは胸元を強調するようにし、肩から前をはだけている。目元を強調するように切長に見える化粧を施し、ウェットスタイリングに軽くウェーブさせたセミロングの髪型の……ティッチさん……目が点になる。


 店内を見渡し、カウンターにいる私を見つけてこちらに来た。


「ここにミーヤがいるってことは当たりのお店ね。酒場系統のお店で気にいるところが少ないから安心出来そうね」


 そういうと、当たり前のように隣の席に座った。


「ミーヤ、知り合いか?」


 マスターはなんともいえない複雑な表情をして私に問いかける。その気持ちは解ります。あまりにもアンバランスな姿に、私も絶句してティッチさんを凝視してしまっていた。


「どうしたの? なんでそんなに驚いているのかしら?」


 ティッチさんが覗き込むように見てきて、我に返る。


「どうしたのじゃないですよ。どうしたんですか、その姿? いつもの姿と全然違うからビックリですよっ!」


「そう? 夜に出歩くときはいつもこんな服装だけど? 夜の酒場に行くときは大人の雰囲気を出すのは当然でしょ」


 化粧のせいもあるのだろう、艶っぽい笑顔で答えてくれる。


「自分で化粧するんですか? さすがに美少女ってのが際立って可愛いです」


「なんで美少女なのよ? 美女でしょ。まだ子供扱いするつもり? ミーヤより年上なのだけど」


 年上なのは、一歩譲って認めよう。でも、その背伸びしてる感丸出しの服装、胸元も可愛らしく、そういうところが大人ぶってるみたいでなんだか愛くるしいんですけどね。


「この美人さんは知り合いか? この街のもんじゃないだろ? ミーヤが知ってるってことは冒険者か?」


「マスター当たり。こう見えて凄腕の冒険者なんだよ。昨日だって大活躍だって聞いてるし」


「こう見えてってどういう意味かしら? ミーヤはまだ私の怖さをわかってないわね……本気出すわよ?」


 プリプリと怒った顔も可愛くて、つい頭をナデナデしていた。


「こら〜っ!!」


 ペシっと撫でていた私の手を払い、手櫛で髪を整えている。

 ニコニコと微笑ましいものを見ている私に対して、キッとひと睨みされた。


 ……あれ? 身体が動かない。笑顔も固まってるからなんだか引き攣るんですけど。


「どうかしら? 動けないでしょ?」


 怪しい笑みを浮かべ、そう言って私の靴を脱がして足の裏をくすぐり出した。動けないし、叫べない状態でくすぐられているのだが、なんだか感覚が違う。足の裏のはずなのに全身をくすぐられてる気がするのだ。身体の芯からくすぐったい感覚が全身を駆け巡る。


「アストラル体に直接干渉してるから、肉体的な感覚とは違うでしょ? どう? 反省した?」


 喋れないし、動けない私に返事ができるわけがない。身体からは冷や汗が出てるのだけはわかる。ヤバい、気が狂いそうな感覚……意識が途切れた。






 ……なんか揺れてる……


「…………ーヤっ! ミーヤっ!」


 誰かが呼んでる。私、何してたんだっけ? ……段々と意識がはっきりしていき、ティッチさんが呼んでるのがわかってきた。目の前でティッチさんが、私の身体を揺すっている。


「あれ? どうしたんですか?」


「よかった……ごめん。一般人にはキツすぎたわね。大丈夫? 意識はっきりしてきた?」


 んっ? 何されてたんだっけ……思い出したっ! なんか身体動かなくなって、くすぐられたけど変な感覚で意識途切れたんだっけ。


「なんかまだ、ボゥとしてますが大丈夫だと思います。もしかして長い時間、意識飛んでました? 何したんですか、あれ?」


「意識が飛んでたのは、ほんの少しの時間よ。一般人が、あんなにアストラル体が脆弱なんて思わなかったわ。お詫びにネタばらしするけど、拘束術式よ。アストラル体を疑似次元結界に隔離するんだけど、肉体との繋がりを維持するために結界の一部を開いた箱みたいにするの。小さな箱にアストラル体を無理やり詰め込んで、身動き出来ないようにしたのがさっきの状態よ」


「アストラル体ってなんですか? それと、なんとか結界って普通の結界と何が違うんですか?」


 問いかけてるとき、マスターがそっとティッチさんのところに飲み物を置いていた。ノールックで受け取り、ゴクリと一口飲んで驚いている。


「注文するの忘れてたのに、マスター気が効くわね。それにこれ、初めての味だわ。美味しいじゃない。いろいろなフルーツを使ってるのね。ここまでドロドロしてる飲み物は初めてよ。手間がかかってるわね」


 マスターそんなの隠してたの? 飲んだことないんですけど。常連としてなんだか悔しく、


「マスターなんですかそれ? 私には出してくれたことないじゃないですかっ!」


「あぁ? だっておめえ、いつもすぐ酒注文するだろうが。それはノンアルコールだし、滅多に出すもんじゃねえな」


 なるほど、一理ある。ジュースなら仕方ない。でも試飲くらい出してくれたっていいものだ。


「話戻すわよ。質問のアストラル体ってのは、世間一般には広まってないだろうから簡単に説明すると、精神活動における感情を司る身体よ。感覚器でもあるから肉体と密接なつながりがあるの。動物は、『肉体とエーテル体、メンタル体、アストラル体』によって構成されてるんだけど……って、何よその顔?」


「いやぁ、なんか難しそうな話になっちゃったんで」


「まだほんの序盤じゃない。仕方ないわね、次元結界はもっと説明長くなるから。簡単に言うと、位相空間において、個に関連付いてる物質を擬似的な簡易空間に拘束する術ってところかしら」


 わかんないです。さらに、位相空間とか個に関係するなんとかとか、


「聞いた私がバカでした。要はあれですね、不思議体験!」


 あっ、呆れた顔になってる。でも見てっ! マスターも私の意見に頷いてるわ。同志よ。


「まあいいわ。そんな話をしにきたんじゃないんだし、私は美味しいものを求めて来たのよ」


「どこから情報を仕入れて来たんですか? そんなに有名じゃないですよ?」


「ミーヤ」


 マスターに呼ばれたので振り向いてみると、デコピンをされた。急な攻撃に言葉も出ず、カウンターで額を押さえて悶えた。


「ここの主人の前でいい度胸だな。まったく……で? 俺にこの美人さんの紹介がまだなんだけどな」


「うぅ、マスター酷いです。不意打ちは無しですよっ。……そういえば、凄腕の冒険者としか言ってませんでしたね」


「ティッチよ。昨日この街にきたばかりだから、色々と観光してる最中ね。このお店は隠れ家的な所だと聞いて興味が湧いたのよ。ミーヤがいるとは思わなかったけどね」


「もしかして、昨日からいろんな店で食べ歩きをしてたりしないかい?」


「そうね、昨日は4件しか行けなかったわ。あのお店のデザートで酔ってしまうなんて不覚だったわ」


 やっぱり、あれで酔っちゃったんだ。


「ほぅ、あの話は本当そうだな。それにさっきミーヤが、昨日の夜に活躍していたって言ってたが、変な獣と一緒にいたって人かい?」


 さすがマスター。情報が早いな。それに気になってたことを聞いてくれてる。


「変なのとは失礼ね。まぁ一般には伝承でしか伝えられてないから、知らないのも無理はないかしら。幻獣のアミちゃんよ。顔は怖いかも知れないけど、従順な子よ」


「幻獣ってどこから連れて来たんですか? 今いないですよね」


「普段は別の世界に住んでるわよ。次元門からこちらに召喚するの」


 またえらいワードを聞かされた気がする。下手に聞いたら、また難しい話になる予感に、


「すごいのペットにしてるんですね。そういえば、昨日酔っちゃったって言ってましたけど、あの後のケーキですか?」


「ペットってあなた……どちらかと言うと友達みたいなものよ。まぁいいわ、あのケーキってミーヤはお土産に持って帰ってたわね。美味しかったんだけど、意外とアルコールが強かったわね。大丈夫だった?」


「はい、ギルドで夕方の休憩中に同僚と頂きました。補佐官にもお裾分けしてましたが、アルコールについては特に言われなかったですね。補佐官もお酒好きだし、喜んでましたよ」


「ふんっ、なにか引っかかる言い方ね。ところで、ミーヤの目の前のそれって、バジリスクの卵なんじゃないの?」


「はひっ?」


 なんておっしゃいました? ティッチさんはまじまじと目の前のこの青い物体を観察してる。マスターの方を見ると、あごを撫でながらニヤニヤとしていた。


 「マスターっ〜!!」


 悲痛な叫びが店内にこだました。




数学における理論とか、学のない私めにはさっぱりでした。

ある程度は調べてリアルなものを書いてみたかったんですが、ファンタジーにおける不思議要素による不確定因子のために証明不能ってことでwww


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