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19話



「「ごめんなさい」」


 今、カレナと2人で正座をさせられている。

 受付カウンターの丸椅子の上でだ。座るためのものであって正座する為のものではない。バランスも悪く落ちそうになるのを堪える。しかもいつも使ってるクッションが無しで、木板の上に直である。


「まったく、カレナがついていながら何してるの? ミーヤはいつもの事だからしばらくそのままね」


「えこひいきですぅ。一蓮托生の関係なんですぅ」


 つい反発したら足の裏をハリセンで叩かれた。


「はぅ〜ぅ、痺れはじめた時にこの仕打ち……オニッ!」


 さらにもう一発。補佐官は容赦なしである。ついでにカレナからは3回叩かれた。

 正座から解放されたカレナが、


「すいません。ミリアさん達とのお喋りで時間を忘れてしまって」


「そうなんです。楽しかったのもあるんですが、今日は接待って事で奮発して、竜泉の酔いどれ亭に行ったんですよ。そしたらティッチさんと合流して、フォードルさんと皆さんがお知り合いだったらしくて何故か大部屋に案内されたんですよ。それが遅刻の原因です」


「説明がなってないわよ。正座時間、追加されたいのかしら?」


 はい、反省します。

 あの大部屋は、通常ならば貴族や商会などが会合で使う為の部屋だそうだ。時間を気にせずに話し合いや談話をするために砂時計は置かないようにされていたらしい。ティッチさんが大食いなのを知ってたフォードルさんが、通常の部屋では料理が置けなくなるのをわかってて、あの部屋に通したとのことだ。

 では、貴族や商会の人達は、本当に時間を気にしないのかというとそんな事はない。執事などが時間管理を任されており、主人に教えるそうだ。

 どこの食事処でも、客の目につくところにあるものだから失念していたわ。女子が5人も集まれば話は尽きないものだもの、時間なんて忘れます。


「まぁいいわ。今回は接待ということで大目に見てあげます。でも、それだけ仕上げてからね。カレナも手伝ってあげてもいいわよ」


 正座の最中でもやらされていた今回の冒険者への報酬に関する精査である。そんなにかからないだろうから助かった。足が痺れて集中できなくなってきていたもの。

 補佐官の監視の目はまだ免れそうもないが、私達がお昼に行ってる間のことなどをお喋りした。お昼過ぎたくらいから、昨日徹夜していた冒険者もチラホラと顔を出してきたそうだ。事前に交代組が決まっていたので、5名が出発したとのこと。恐らく帰ってくるのは日が暮れる5の鐘のあとくらいだろう。


 お喋りしすぎて、余計に時間がかかったのは愛嬌としておこう。痺れて動けませんでした。




 あとは、特に急ぎすることもなく時間が過ぎ、5の鐘が鳴った。今日は平和な一日だった。残業せずに帰れるぞ〜と喜んでいたら、入口のベルがチャリンと鳴る。

 森で監視任務についてた冒険者5名が帰ってきた。タイミングがいいのか悪いのか、


「お帰りなさい、お疲れ様でした。ちょっと待って下さいね」


 まずは補佐官に報告だ。補佐官はすぐに冒険者を3名連れて上に行った。残りの人は腰掛けてさっそくエール酒を頼んでる。


「ねぇ? 今んところ慌てることないみたいだけど、何か新しい報告あるんですか?」


「そうだな、昨日の夜は随分と動き回ってやがったが、特に問題はなさそうだぞ。今日は朝方から寝てるのか休憩してるのかわからねぇまま、3匹とも立ったまま動かなかったからな。今頃はまた活動し始めてるんじゃねえか?」


 軽く前倒しで報告聞いとこうと思ったが、大した情報はなさそうである。彼らの方も、交代の時に聞いたのだろう、昨日のレイス騒動について聞いてきたので軽く説明した。


「でも、フォレストジャイアントって夜行性じゃなかったですよね? やっぱ行動がおかしいから、早く何かしらの証拠が欲しいですね。昨日のレイスとかリッチとかも目的わかってないみたいだし。なんでこう悪いことって重なるんだろう? 意外と何か繋がりがあったりして?」


 そういえば、報告書の中にお姉さん達の報告書がなかったな? 特にイレーヌさんのデミリッチとのその後が気になるんだが。シフォールさんとミリアさんからの報告でギルドマスターは知ってるはずだから、補佐官の耳にも入ってるはず。でもさっきお喋りしてる時に報告の件は教えてくれなかった。何かあるのだろうか?

 神妙な顔になってたのだろうか、冒険者の1人が、


「おっ? どうした、急に真面目な顔して考え込んでるみたいだが? あんまり不安な表情見せるもんじゃねえぞ。変に下っ端が誤解していらん騒ぎ起こすかもしれないからな。どんと構えて、俺らを元気に送り出すのも嬢ちゃんらの仕事だ。俺らはこういう時に安心させるため、やってるんだからよ」


 なんか気を遣わせちゃたみたい。カレナも、


「そうですよね。私達が皆さんに出来ることって、元気に帰ってこれるようにちゃんとした情報を与えてリスクを減らせるように計らうことだけですもんね」


「私が悩んでも何もできないですもんね。皆さんに任せっきりって、いつもはあんまり思わなかったんですが、こんな時もどかしいですね」


 はぁ、とため息出ちゃう。だってしがない受付嬢だもん。


「任せとけって。ジャイアントの3匹くらいなんとかしてみせるさ。だから、ギルマスに報酬を弾んでくれるように計らってくれ」


 そう言って、ガハハと笑ってエール酒のおかわりを頼んでいた。

 みんな頼もしいばかりである。気持ちを切り替えて引き継ぎをすまし、帰り支度をしながらカレナを晩ごはんに誘う。


「ごめん。今日もディルムの所に行ったげないと……朝、不安がってたしね。今度埋め合わせするから」


 そう言って急ぎ帰っちゃった。今日もボッチである。なんだ言って仲良くやってるよね……いいもん、寂しくないもん。今日はまたマスターのとこ行って、昨日のすじ肉のワイン煮を堪能するんだ。美味しいもの独り占めだっ!


 背中に哀愁は漂ってないからっ! 



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