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14話

ブックマークが増えていた。

うれしい悲鳴あげてます。感謝です。

楽しんでいただけたら幸いです。


 危なかった。あそこでギルドマスターに捕まったら、ご飯食べれなくなっちゃうとこだった。

 今日の晩御飯は、いつもの酒場にしよう。遅くなったが、あそこのマスターなら何でも作ってくれるはずだ。




 お店に到着して、いつものカウンター席に向かう。こんな時間だからだいぶ人も捌けている。いつもなら定時の5の鐘がなってから来るから、仕事終わりのお客さんでごった返しているのだが、もう6の鐘が過ぎてるからいつもの半分くらいしかいない。ここももう少しお客さんが減ってきたら、ラストオーダーになるからあんまりゆっくりも出来ないな。

 見知った常連のおっちゃんが、


「どうしたこんな時間に? やけ酒なら付き合うぜ!」


 なんて言ってるが、


「こんな遅くまで呑んでて大丈夫? そっちこそ、奥さん怖くてやけ酒してんじゃないの? チクっちゃうよ」


 軽くあしらうように言うと、おっちゃんはガハハと笑って、お連れさんとまた飲み始めた。

 カウンターに座ると、


「今日はどうしたんだ、いつもよりだいぶ遅いじゃないか? こんな時間に来るのはいつ以来だ……1年ぶりくらいか? あの時はやけ酒だったかな。流れの冒険者にひっかかったとか愚痴ってたな」


 なんでそんな昔のこと覚えてるかなぁ……あれは私も遊びだったもん。ちょっとタイプだったんで、食事のお誘いに乗ってあげたらダブルブッキングどころか、トリプルよ! トリプルッ!! 遠征先だからって、手当たり次第に声かけてたみたいで、たまたま私含めた3人が当たっちゃったのね。知ってる冒険者も近くにいたから、立会いお願いして3人に慰謝料払わせてやったわ。

 そのお金で呑みにきて愚痴ってたの。久しぶりに体力ありそうな男だったのに……


「よく覚えてますね? さすが、客商売は情報が命。記憶力凄いですね。でも、もう1年ですよ? あの時は私もまだお子様みたいなもんですもん。いい経験話ですよ」


 フッと、ニヒルに微笑んでみた。


「おいおい、まだまだお子ちゃまが抜けてないぞ。いい女ってのはそこで変な微笑み浮かべねぇから」


 なんですと!? カレナにも内緒でここ1年いろいろしてたのに……

 呆れ顔でニヤけてるマスターを、キッと睨んで、


「ふんっだ。マスターも知らない大人な私がいるんですぅ」


 まだ注文してないのにエール酒が出てきた。よくわかってらっしゃる。

 グイッと半分ほど呑み干し、


「プハァ〜駆けつけの一杯目はやっぱ美味しいわ。マスター、いつものまだある?」


「残念、今日は売り切れだ。この時間にはいつも残ってないな。その感じだと仕事終わりか? だとしたらメシだろ? 何食いたい? それか酒メインで行くか?」


 お気に入りの燻製がないとは……この店でしか食べれないイチオシの数量限定もので、魔物の魚卵の燻製なのだが、お酒にもごはんにも合う珍味なのよ。ごはんなら3杯はいけちゃうわね……太るからそんなに食べないけど。


「そっかぁ、残念。ちょっと呑んでからご飯かな。今日は、事務仕事多くてストレス溜まってるもん。お肉ってなにかある?」


「ツマミにするなら、今日は珍しいのでミノタウロスのすじ肉があるな。明日に出すつもりだったからまだ煮込んでる最中だが、特別に出してやろう」


「相変わらず変わった食材試してるね。固いし弾力ありすぎで、ゴムみたいなんじゃなかった?」


 ここのマスターってば、変わった食材を仕入れては試行錯誤してるんだよね。よくタダで試食させてくれるから、私はアドバイザーとして貢献している。私の舌を唸らせるものを大いに期待している。


「そこは腕の見せ所だな。まだじっくりと味は染みてないが、柔らかさは保証するぞ」


「ほほぅ、それは自信作っぽいですね。でも、ホント変わったの好きね? 普通のも美味しいのに」


「客商売ってのは、他所と同じことしてるだけじゃ長続きしねぇの。この街に何軒、酒場があると思ってるんだ? ウチは看板娘もいないし、酒はどこも似たようなもん置いてるからな。料理は好きだから、どの酒にどんなのが合うのかって作るのが楽しいんだよ。ひとりで切り盛りしてるから、あんまり忙しくなるのは勘弁だがな。ミーヤみたいな常連と、のんびりお喋りしながらが性に合ってるな」


 マスターはそう言って、奥から小鍋を持ってきて料理してる。

 いい匂い。この香りはワインかな? ワインで煮付けしてるみたいだけど、変わった香辛料の匂いがある。スパイスの香りは食欲をそそるなぁ。


 初めて訪れた時の事を思い出す。

 カレナと呑んで別れた後、小腹空いたなと思いながらの帰り道で、この店から漂ってきた香りにフラフラ〜と入店。こじんまりした店内は、20人も入れば一杯になる。呑みの後だったからか、今くらいの時間帯で程よく空いておりカウンターに腰掛けた。

 初めてのお店だし、呑んだ後だったけれど果実酒を頼み、香りの元を聞いた。スパイシーな焼き物の香りに吸い寄せられたと笑っていると、その焼き物と呑んだことのない蒸留酒を出してくれたのだ。

 

 胃袋をつかまれた瞬間であった。


 それからはカレナともたまに来てるが、もっぱら1人で来ることが多い。

 一般の人や職人さんが常連のこのお店は、冒険者も来ないから仕事を忘れることが出来る憩いの空間だ。


「ここってウエイトレスとかバイト雇わないの? 忙しい時とか常連の若いのをこき使ったりしてるじゃない? 私もその口だけど」


「募集はかけてるんだよ。でも、なんでか誰も応募してこねぇ……他の店ではすぐに人雇ってるのにな。なんでウチだけ来ないのか不思議だよ」


「あぁ〜…………」


 推測であるが、多分マスターの見た目だろう。熟練の戦士並みにガタイがいいのだ。料理は力仕事だから体力がないとやっていけないとか言ってたな。竜泉の酔いどれ亭のマスターも元Bランク冒険者でガタイがいいらしい。ここのマスターは子供の頃から料理人だったらしいが。


 前にカレナときた時に、よそからきた冒険者達がたまたま入ってきて、私達をナンパして騒いだことがあった。静かで落ち着いた雰囲気がぶち壊しになり、喧嘩でオモテに連れ出されそうになった時、常連の職人連中とマスターが助けてくれた。その冒険者達3人を、マスターとガタイのいい大工の棟梁2人で、オモテに連れ出していた。凄い悲鳴が聞こえてきていたが、3人が無事に帰ってきたのでなにもなかったことにして呑みなおしたな。いい思い出だ。


 そんなことを思い出してると、マスターが料理を出してくれる。

 空になったエール酒のお代わりを頼むと、これが合うぞとワインを出してくれた。


 お喋りもいいが、まずはお腹を満たそう。


読んでいただきありがとうございます。

変なネタ入れてるところを笑っていただけるか心配です。

読み手がどのように感じてるか気になるところ。

よろしければ感想などいただけると精進の糧になります。

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