第一章 まずは、ファンタジーの世界を救えって!?
目が覚めると、1面真っ白い世界が広がる。
此処が部屋なのかわからないほどの空間だ。
朧気になってた思考がだんだんクリアになっていく。
そして、確証する。
「見たことある天井だ!」
そう、ここは転生モノでありがちの転生前に神様に特殊なスキルとか貰って旅立つための部屋なんだ。
きっとそうに違いない。
……多分セリフは違うけど。
ということは、そろそろ神様的な存在の人が出てくるに違いない!
期待に胸躍らせて待ってみる。
しかし、待てど暮らせどでてこない。
「あれ、おかしいな…」
この展開は聞いてないな。
多分もうそろそろ、転生モノなら神様出て、もう転生先であれこれ工夫してるところだし、元々ファンタジーの世界で例えば勇者パーティーでいらなくなった人が追放された瞬間覚醒する場面だろうし、もう男1人でこんなに待ってる場面見てたら読者がいなくなっちゃうよ?
さすがにまずいと周りを見渡してみると、僅かばかりだが部屋に違和感を感じる。よく目を凝らしてみると扉らしきものがある。
「とりあえず、待ってるのもそろそろまずいな。歩いてみるか。」
僕は、一先ず歩き始めた。
「はぁ…どんだけ遠いんだ…」
やっと辿り着いた。なんで転生先でこんな苦労しなきゃいけないんだよ…、そもそもまだ転生してないのか…。とりあえず、この扉を開けるか。
大きい扉を開けると、眩しい光が差し込んできた。
目が慣れてきてよく見てみると、
おっさんの背中だった。
「あ?なんでそんなとこにおるんじゃ?」
神様こと中年のおっさんは、振り向いて話し始めた。
「あ…れ?誰だおっさん。」
「誰だとはなんじゃ、ここの神様だぞ。」
まさかの神様だった。
「いやもうちょっとお約束な神様で出てこいよ。髭が長い白髪のじいさんとか、すごい綺麗な女神様とか!」
「おう、悪かったな、喋り方だけはそれっぽくしてやるよ。」
「もう言葉遣いも乱れてるじゃねーか!キャラ守れよ!」
「お前の妄想上の神なんぞ知らん。そもそも俺はなんでお前がそんなところに居たのか聞いてるんだ。」
「もうキャラ守る気もねーな、こいつ…。」
とりあえず、ここに来た経緯を話し始めた。願望も込めて。
「つまりお前は、転生して来たもののお約束な展開は尽く訪れず、今に至るから早くお約束の展開をくれと言ってるんだな?」
「話わかるじゃねーか、おっさん!」
「おっさんじゃねーわ。まぁ、言いたいことはよくわかった。じゃあお望み通りお前を転生させてやろう。しかも喜べ、ファンタジーの世界だ。」
「おお!!本当か!!」
ファンタジーの世界ってことは、魔法やら何やら使えて、剣術とか特に何もやってなくても強く、現世の知識で作った料理とか娯楽を提供するだけで持て囃されてモテるあのファンタジーか!
「お前の考えはわかるが、悪いがそんな展開はない。」
「うわー、どうしよーどうやって世界救おう!どんな子がいるのかなー!……ん?なんて言った?」
「そんな展開はないと言ったんだ。」
「なんでだよ!?じゃあ何しに転生するんだよ!?」
「まぁ落ち着いて聞けって、これは主人公より、もしかしたら凄いかっこいいことかもしれないぞ?」
「そんなことあるのかよ!?聞く聞く!!」
「お前はモブとして転生するんだ。」
「…え?」
この世界は僕にはまだ早かったみたいだ。もう1回転生してやり直そう。
「待て待て、ナチュラルに2話目でもう1回死のうとしてるんだよ。そんなやつ初めてだよ。」
「主人公になれない世界なんて興味無いわ。俺だって魔法使いたいし、剣術とかで王国にいる騎士団長を片手で倒したいし、見たことない料理とか作って皆から持て囃されたい!!」
「まぁお前の言いたいことはわかる。因みにお前は前世で料理作ったことあるのか?」
…ぐっ、カップ麺とコンビニ弁当が主食だった…。
「碌な知識も持ってないやつが持て囃されると思うなよ。」
くそ、なんで転生モノファンタジーの主人公はあんなタイムリーな知識持ってるんだっ!
「話を戻そう。兎に角お前は、モブとして転生しろ。そして、主人公をあるべき姿へ誘導するんだ。」
「なんだその役目。」
「誰にも察されることもなく、主人公を既定路線に戻せと言ってるんだ。むしろ、お約束の展開をよく知っているお前ぐらいしか、この役目は果たせない。」
おいおい、何言ってんだこいつは。
「まぁ百聞は一見にしかず、だな。とりあえず、行ってこい。」
足元から雑に光始めた。
「えっ!おい何だこの光!もうちょっと雰囲気良く送り出せないのか!?」
そして、俺はファンタジーの世界の良くある村の外れの森に、村人Aみたいな姿をして転生した。
やたら長くなってしまいましたが、やっと導入部分です。
モブの奮闘記をこれからよろしくお願いします。