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2章 38話 「達人の動きは訳がわからないって話」

先週はお休みいただきまして申し訳ございませんでした。再会でっす!



どうもこんにちは、キアーラ・カサッツァです。

下手の考え休むに似たりと言う言葉があります。

囲碁や将棋が下手な人が長考しても、いい手が思い浮かぶわけではないという意味ですね。

しかし、誰かに物を尋ねたい場合は、まずは自分で考えるのが礼儀だと思うのです。

まぁ、私はすぐ聞いてしまいますが。



「グァ!」

「ごはっ!」

「避けろ……っ」


次々に隊員が呻き声を上げながら倒れていく。


王虎のカーテンで弾丸を絡め取って払い落とすという非常識な所業に、隊員の誰もが意識を停止させ、そのまま瞬時に意識を刈り取られる。

もちろん刈り取っているのは刹那の間に距離を詰め乱戦に持ち込んだ王虎だ。

まぁ、刈り取ると表現するには聞こえてくる打撃音は、車が突っ込んだんじゃないかというくらい重い物だが。


「固まるな! 射線を確保しろ!」


唯一、即座に王虎に銃口を向けたリーダーらしき男が叫ぶが、仲間が邪魔で撃つことが出来ていない。

フレンドリーファイアを恐れずに銃撃すればあるいは王虎に傷を負わせられたかもしれない。

しかしリーダーは誤射をしないように指示してしまった。

これで隊員は王虎()と仲間の両方を意識しなければならなくなった。

その一拍の手間は王虎相手には致命的な隙となる。


「その指示じゃあ、仲間を盾にしてくださいって言っているようなもんだぞ?」


その圧倒的な機動力を持って、常に誰かの背後を取るように立ち回る王虎に翻弄され続け、そして瞬殺されていく隊員たち。いつの間にか隣にいた仲間が重い打撃音と共に吹き飛んでいくことで一瞬体が硬直し、そして自身も同じ末路を辿る。

中にはうまく距離をとれた者もいたが、それも王虎が投げつけた人間手裏剣(仲間)を食らって昏倒する。


災害のように理不尽に隊員達を蹂躙する王虎だったが、その前に影が躍り出る。

刹那に王虎の殺気が高まったかと思うと手がぶれて残像を引くような速度でその影に向かって抜き手を放つ。


「舐めるなぁ!」


叫び声と共に金属同士が激しくぶつかる様な爆音が響き渡る。

王虎の鋭く伸びた爪による抜き手を、右手に持っていたアーミーナイフで受け止めたのは、部隊のリーダーと思われる男。


「おぉ! 止めるかよ!」


だが攻撃を止められたというのに王虎はどこか嬉しそうに感嘆の声をあげる。

マジか! 王虎の攻撃を片手で止めるのかよ!


「心の臓も止めてくれる!」


言いながらリーダーが、もう片方の手に持つ銃を王虎の胸に向ける。

しかし片手が空いているのは王虎も同じ。

手の甲で下から跳ね上げるように銃を弾く。

同時に発砲音。王虎にあたる事なく空に向かい放たれる銃弾。


そして王虎が一歩退いて、リーダーが追撃のため踏み出したように見えた瞬間、いつの間にかリーダーの頭が吹き飛んでいた。


「え?」


何が起こったのか瞬時に脳が認識出来ず、本日何度目になるのか、俺は間抜けな声をあげてしまう。

今俺の目に映っているのは、いつの間にか振り抜かれている王虎の拳。

多分……裏拳?

そしてよく見れば吹き飛んだと思ったのは、リーダーの頭ではなく彼が被っていたヘルメットだった。

直撃は避けたが脳震盪でも起きているのか、額に手を当て仕切りに頭を振っている。

そして王虎は素早く動けないでいるリーダーの後ろに回ると、チョークスリーパーの要領で首を絞め落としながら、他の隊員への盾としている。


何が起きたんだ……。


『あれは太極拳にある技と歩法に似ているね?』


俺が訳がわからずに呟くと、さっき意味ありげな感じで消えていったルナが解説のために出てきてくれる。

まぁ、このタイミングで俺から離れる意味ないしね。いるよね。


それよりも、あれを知っているのかルナ電……?!


『左様……今起こったことを解説するとね? 王虎君は拳銃を跳ね上げた後、そのまま重心を後ろ足にかけながら、跳ね上げた手を体の外側に半円を描くように丹田へ戻したんだね? そして、それと代わるように、もう片方の手もナイフを払うように円を描いたんだね? 相手のリーダーはには体制を立て直すために一歩後退したように見えただろうね? しかし下がっているのは重心のみで、もう片方の足は半身外に残っていたんだね? そして追撃しようと一歩踏み出したリーダーの虚をつくように、王虎君は体を捻りながら今度は残っていた前足に重心を移動したんだね? その様はまるで狭い通路で慌ててよけながらすれ違う時のようだね? リーダーからしたら、後ろに下がったと思ったら、いつの間にか横に移動していたように感じられたはずだね? 彼は驚きながらもその背中に銃を突きつけようと咄嗟に反応したけど、その時には捻りにより丹田にためられたエネルギーを解放しながら放たれた、王虎君の裏拳が眼前まで迫っていたんだね? それでも、王虎君の体に隠されて死角から放たれたのに直撃されなかった相手のリーダーの反射神経にも目を見張るものがあるね?』


___え? なんて?


未だかつてないほどに早口で饒舌になったルナにドン引き。

俺が聞き返しちゃったことにより、さらに語り始めるルナ。


『つまり、特殊な歩法によって相手の虚をつきつつ、その動作自体も回転により丹田エネルギーを増幅させることとなる動作で、そのことでコンパクトな動きでも恐ろしいまでの破壊力を生み出すのと同時に、死角からの攻撃により対処自体を困難にさせているという……』


あぁ、うん。わかった。ありがとう。とてもわかりやすかった。

どこまでも続きそうな解説をぶった切ってお礼を言うと、少し不服そうにしながらもルナが黙る。心なしか頬も膨れているような気がする。


何? 格闘技が好きなの?

いや、民明書房って言ってたから適当か?


『僕は80年代の漫画が好きなんだよね? 現実の男がクソだからね? 二次元こそ至高だよね?』


やっぱり適当っぽいな。

そしてぶっちゃけたな。思考が完全なオタクじゃないか。

俺に憑いている悪魔がサブカル女だった件。

うんざりして、一昔前のラノベタイトルみたいになことを言ってしまった。


『ラノベといえば、最近のラノベはタイトルで作品の内容を説明しないと、読者に読んでもらえもしないという現実がありながらも、どうしても出オチ感が否めず、読者の期待以上のものを提供できないということになり得るし、万が一書籍化が決まっても、初版は買ってもらえたけど、良い意味で期待を裏切れずに、後が続かないと言うことが往々にしてある中で、それでも作品を提供できる場が増えていることで業界自体は盛り上がっているんじゃないかと思えるけど、その反面実績がある作品でないとスポンサーがつかないのでアニメ業界は逆に衰退し始めているのではという懸念と、オリジナルアニメをもっと増やしていってもいいのではないかと言う希望もあるね?』


また語り出した……。

長い。ただただ長い。お前は中身のない杞憂民か。

お前が心配せんでも業界は回るわ。

そしてタイトルで出オチになるのが嫌なら、書籍化したらタイトルを変えろ。

まずはPVとユニークを増やせ。そして新規さんがどこの話で剥がれたのかをきちんと把握して、分析しろ。そしてそれをもとにニーズに合った改稿をしろ。

そして初版で打ち切られたとしても次の作品を書け。

昔からアニメは原作付きが多い。オリジナルが多いように感じるのは監督が改変する傾向が高かっただけだ。今は改変すると炎上するからできないだけでスポンサーの意向は変わっていない。

そしてそしてオリジナルアニメが見たいならNe○flixに入れ。


『長いね……?』


……長いな。


まぁ、長くルナと遊んでいたのには訳がある。俺もこの間ただ棒立ちしていたわけではない。まだ意識のある隊員たちの目に止まらないようにジリジリと王虎の方へ移動していたのだ。

追い詰められた隊員がいつ何時俺を人質に取らんとも限らんし、最悪暴発した奴に撃たれる危険もあるから、慎重に素早くゆっくりと可及的速やかに王虎の元へ行くべく、命懸けのだるまさんが転んだに興じていたわけだ。

それでその極度のストレスを誤魔化していたのだが、いよいよ王虎との距離が縮まってきたことで、スニーキングも終了となる。


「おう。どうだった俺の活躍は?」


軽い感じで声をかけてくる王虎は緊張した様子など微塵も感じられない。

……これが修羅場を潜ってきたマフィアってわけだ。


「まぁ、いいんじゃないか? 失点を取り返すほどじゃないが」


「あっはっは! ちげぇねぇ!」


むぅ。余裕じゃないか、俺の揶揄にも動じやしない。

俺でなきゃ、嫉妬しちゃうね。


「なんだ、むくれて?」


「むくれてねぇ! あいたっ!」


イラッとしたので脛に蹴りを入れてやったのだが、鉄骨を蹴ったかのような硬さに俺のつま先の方がダメージを受けてしまった。解せぬ……。


「さて、ここまでは持ってこれたが、こっからどうしたもんか」


王虎が真面目な顔でスワット(仮)の方を見るのに合わせ俺もそちらを向く。

流石にリーダーとのやりとりの間に体制を立て直されてしまっている。

王虎無双で草刈りをしたと言っても、まだ数十人が残っている。

今は人質がいるため銃を構えるにとどまっているが、それこそ何が引き金になって撃たれるか分からない。


背中を見せるなんてのはもってのほかだ。一斉掃射されたら俺なんか粉微塵になっちゃうだろうな。


「定番どころで人質を盾に下がらせるってのはどうだ?」


「それくらいしかないか……」


数の暴力の前に大した案も出せないが、王虎も同じようで消極的賛成と言ったところか。


「じゃあ、せいぜいあいつらが震え上がるような恫喝を見せてやるかね」


そう言って王虎が叫ぼうと息を吸おうとした時、今一番聞きたくない最悪の声が聞こえてくる。


「何をやってんだぁ! さっさと撃ち殺さねぇか! ボケどもがっ!」


声の方を見ると劇場の方から署長が顔を真っ赤にしながらやってくる。

ギャンギャン騒いでいる割に腰でも抜かしたのか、劇場内にいた隊員に情けなく縋りつきながらだが。隊員の背の方が低いのでかなり情けない。


「だっさw」


その姿につい本音がポロリしちゃう。


「あぁ?! なんだとガキがぁ!」


「おぉ? なんだお前、やんのか? ああん?!!」


「うひっ」


こんな幼気な幼女に大人気なく恫喝してくるので、幼女らしく恫喝し返してやると署長が情けない声を出す。


「そんな恐ろしいプレッシャーを放つ幼女なんてお前くらいだよな……」


王虎が独り言のように何か言っているが、それよりも署長を煽るのが先だ。

マジウケたので声を出して笑ってやるのだ。

プギャーwwww マジwwww ウww ケwww ルwwww


「くすっ」


抱腹絶倒と言っても過言でもないくらいに俺が爆笑してみせると、隊員の一人が吹き出してしまう。


「ヒューーーーーーー」


一拍おいてまるで薬缶がお湯が沸いたのを知らせる時のような音し始める。

そして一斉にざわめきだす隊員達。

俺たち()の前だというのに、わかりやすく動揺し始める隊員達に一種の危機感を覚える。


怯えてすらいる隊員達の視線を追うと、どうやら音は俯いて震えている署長から聞こえているようだ。

これは……息を吐いている音なのか?

その音は段々と甲高くなっていって、不意に音が止まった。

数秒の沈黙。誰もが固唾を飲みながら署長の動向を伺う。


そして静寂を切り裂くように突然ガバっと署長が顔を上げる。

そこに浮かんでいたのは悪鬼のように醜く歪んだ凶相。


「ヒィ!」


びくりと後退りながら短い悲鳴をあげるのは俺の笑いに釣られてしまった隊員だ。

署長はその隊員の方に向きやると、懐から銃を取り出し額に突きつける。


「た、たしゅけて……」


懸命に命乞いをする隊員にしばらく署長は無言でいたが、にこりと笑顔を浮かべる。


「あ……、たすかっt」


___パン


安堵した表情を浮かべた隊員のセリフを遮るように乾いた音が響く。


___パンパンパン


崩れ落ちる隊員に笑顔のまま発砲し続ける署長。


___パンパンパン

___カチッカチッカチッカチッ


それは隊員が動かなくなっても、銃の弾が尽きても暫く続いた。

そして署長はその笑顔のままこちらを向くと、照れたように言う。


「ふぅ。いや、いけませんね。つい指導に熱が入ってしまいました。私、後進を育てるのに熱心な達でして。いや、本当に」


お読みいただき誠にありがとうございます!

先週は案の定、超絶副反応でした。

痙攣かってくらい震えがきて、一瞬これ本当に副反応?って思いましたw

結構みんなそう思うみたいですね。

3回目はどうなっちゃうんでしょうか……。

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