8話 『魔術あるらしい話』
お母さんの名前はクレアというらしい。
優しそうな名前だよね。
実際に優しいと思う。
だって傷心の俺を優しく包み込んでくれるもの。
母性の象徴で包み込んでくれるもの。優しい。
今現在、我が肉体はゴツゴツした父親の元を離れ、あるべきところであるお母さんの腕に抱かれております。
「あなたが大きな声を出すから泣いてしまったのよ? 」
「いや! 泣き出した時に俺はしゃべっていなかったんだ!! 」
「ほら、また大きな声。 おっかないよね〜、キキ? 」
ニッコリ俺に同意を求めるお母さん。
おっかなくはないですが、うるさくはあります。
「ぐぬぬぬ! 父さんは怖くないぞキキ! 」
怖くはないけどうるさいです。
あのあと大騒ぎしだした父親の声を聞いて、お母さんが駆けつけてきてくれた。
どうやら俺のオムツを洗いにいっていて、一時的にお父さんが俺のことを見ていたらしい。
ちなみに父親の名前はドルネオであることが発覚。
父親の名前についての所見はございません。
「キキは全然泣かない子なのに、あなたが抱っこすると泣いちゃうんだから、あなたのあやし方がダメなのよ」
激同。あやされた感も皆無故に。
「そんなことはない! 俺があやしても上の二人は泣いてなかった! 」
「上の二人は男の子ですものキキとは違うわ。 それにあなたはソニーもフレドも泣かせてましたよ? 」
「記憶にない! 」
ダメだこりゃ。そしてまたも新事実。
兄が二人いるらしい。
家族みんなで船に乗って旅行か何かかな?
お母さんは俺のおしめを洗いに行ってたらしいが、船の上だと水とか貴重じゃないのかな?
海水で洗ったにしては塩臭さがなかったし。
そう言うのが問題にならないくらいの豪華客船なのかな?
これは、もしかして割と裕福なご家庭なのかもしれん。
「そんなんだからキキに嫌われちゃうのよ」
「なっ! 嫌われてなどいない! むしろお父さん好きすぎが極まって泣いてしまったのだ! そうに違いない! 」
クレア母さんの鋭い意見に心なしか声が震えているドルネオ父さん。
うへぇ。こりゃ娘が年頃になったら洗濯物一緒にしないでと言われるタイプの御仁。
俺は男だから言わないと思うけど。多分。メイビー。
「ほら。 キキも嫌そうな顔をしてるわ」
あ、顔に出ちゃった?
「ぐぬぬぬぬ! もう知らんもん! ぬおぉおおおおん! 」
俺に嫌そうな顔をされたのがよほどショックなだったのか、父親は男泣きしながら走って行ってしまったようだ。見えないから知らんけど。
「仕方ないお父さんですね? キキ? 」
お母さんは呆れ声で言うが、いや、結構お母さんが追い込んでましたし……。
もののあはれと言うかなんと言うか。
かかぁ天下なのかな?
父親を憂いていると誰かが近寄ってきたようだ。
「お母さん、お父さんが走って行っちゃったけど、なんかあったの? 」
「泣いてた」
どうやら男の子二人のようだ。
と言うことはこの子達がお兄さんかな?
「おかえりなさい、ソニー、フレド。 お父さんは放っておいても大丈夫。 お腹が空いたら帰ってくるわ。 それよりお湯は沸かしてきてくれた? 」
「うん。 沸かしてきた」
「僕も手伝った」
そういって、兄たちが何やらお母さんに渡している。
茶色く見えるから木のコップかな?中に入っているのはお湯らしいが。
……船の上でお湯か。わりと近代的だよな?
悪魔が厳しい環境って言ってたけどそんなでもないのかな?
そこんところどうなの?船の上でお湯を沸かしても大丈夫な技術があるの?
教えてアックマン!
『そんな占いのおばあさんのところにいる格闘家みたいな呼ばれ方されてもねぇ……』
だって俺、オマエの名前知らないし。
『おやおや、悪魔の名前を知りたがるなんて欲しがり屋さんだね? 』
なんでだよ。
悪魔がニヤけた面で思春期の子供をあやすように言ってくる。
『悪魔は名前を教えちゃいけないんだ。 名前を知られた相手に支配されちゃうからね? 』
!!マジかよ!!
教えて!!
『いや、なんでさ……。教えるわけがない』
そう言うなよ〜。俺とオマエの仲じゃないかぁ。
『君の中で僕との仲はどんな風になっているの?中々の仲なのかな?』
うっわ。また出たよ。ダジャレですよ。
ドヤ顔うぜぇっす。
『君はもう少し情緒というものを学んだ方がいいね? 』
肩をすくめる悪魔に俺は言う。
悪魔に言われても。俺ほどウィットに富んだ男も珍しいというのに。
『今は女の子だけどね?』
はい、揚げ足〜!
そういうの良くないと思います。
円滑なコミュニケーションを取る上で不適切ですよ?
『ドヤ顔うぜぇとか言う方が不適切だと思うよ? 』
過去のことなど知らぬ。俺は未来に生きる男。
『今は女の子だけどね? 』
天丼ウゼェ!
そんなのはいいから質問の答えと名前を言えや!
『質問というのは船の上で湯を沸かす技術があるかどうかということだね? 技術はない。 他のものがある。 そして名前はルナ・インヴァイトだよ? 』
おぉおお?
キタ!名前キタ!
これで勝つる!
『当然偽名だよ? 』
……知ってた。
悪魔が、ルナがクスクス笑う。
ちっ。
どうも気安い掛け合いをしてしまうな。
___ゲームを提示した時に見せたコイツの表情がなぁ……。なーんか既視感があるっていうか。ほっとけないっていうか……。敵は即滅殺しなきゃならんというのに。
俺がまたまた難しい顔をしている横で、お母さんがもらったお湯をフーフーして冷ましている。
「うーん。 ちょっと熱すぎるわね。 フーフーしただけじゃダメみたい。 ソニーちょっとキキを抱っこしてて? 」
そういって俺を兄に渡す。ちょっと大きいからこっちが長男かな?
なかなか堂に行った抱っこっぷり。父親とは違うな。
そう俺が父親のランクをもう一段下げていると、お母さんが驚くべき行動に出た。
「ウォーター」
ああ!
手から!
水が!水が!
そして木のコップにフェードイン!!
ど、どういうこと?!もしかして!
こりゃぁあ!もしかして!!
『うん。 これがさっきの答え。 技術はないけど魔術がある』
おっほほ〜い!!
これはテンションが上がるぜぇ!
いや、転生って言ってたからあるんじゃないかと思ったよ?
チートのプレゼントもあったし?
こりゃぁ魔法無双きちゃうんじゃない?!
『魔法じゃなくて魔術ね。 一応すでに君も魔術を使っているよ? 』
マギか☆マジか?!
なに?なんの魔術使ってんの?!
『言葉がわかるだろ? 翻訳の魔術さ。 一応唯一無二の魔術だよ。 僕という外付けのハードディスクを参照して翻訳する魔術って言うところかな? 』
なるほど!言葉わからないと困るもんね!基礎中の基礎のやつだ!
他には?!他にはなんの魔術が使えるの?!
『使えないよ?』
……え?
『使えない』
……え?
『チートをあげたじゃないか』
……うん。
『だから使えない』
どゆこと?
『この世界の魔術は魔法と違って、種と仕掛けがあるタイプなんだ。 ゼロからは結果を生み出せない』
うん。
『君のお母さんは空気中にある魔素っていう分子に働きかけることで、水分子を運動させて、この場合は結合っていう運動だね? それをさせることで水を出した』
ファンタジー。
『まぁ、魔術は科学的な何かとファンタジー的な何かの融合だと思ってくれていいよ』
ケミストリー。
『それは化学ね。そっちの方が適当か。 つまり世界にあるものに干渉して結果を出すと』
I see。
『魔術を行使するためにはそれ用の機関が体内に積まれてないといけない。この世界に生まれたものは大小あるけどそれが積まれてる』
ファンシー
『で、君のチートはその理とは違う原理でできていて、それ用の機関が積まれていると。つまりチート用の機関があるから、魔術用の機関が積めなかったんだね。翻訳機能は外付けの僕がいるからこその例外』
かなしー。
『お後がよろしいようで』
よろしくない!!
あほか!!
魔術の方がチートやろがい!!
不思議エネルギーによるチート三昧やろがい!!
『過酷って言ったじゃないか』
そういう意味?!劣等生的な?!
なにこれ、劣等生のレッテルを貼られたので這い上がってみた的な転生もの?!
『違うけど』
違うのかよ!
『心配しないでくれ。ちゃんと世界環境が過酷だよ? 』
しーんぱーい、あるさー!!
そんな環境で劣等生でどうしろというんだ!!
『生きろ、そなたは姦しい』
姦しいのはお前だ!!
「はーい、キキちゃーん。お湯飲みましょうねー?」
あ、お母さん今はいらないです、まだコイツを問い詰めないといけないんで。
いや本当に……アッー!
「おぶぶぶぶぶ」
『お後がよろしいようで』
お読みいただき誠にありがとうございます!
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