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2章 36話 「横スクロールアクションだとこれも武器だよねって話」

ちょっと長めです。

 

 どうもこんにちは、キアーラ・カサッツァです。

 開いた口がふさがらないと言う諺があります。

 これは相手の行動や態度にあきれ返ってモノが言えないと意味です。

 しかし、口が閉じれない状態という事は、現在口は開いているわけです。

 つまり直前に口を開ける行動があったはずです。

 多分、あ? え? は? のどれかを呟くんじゃ無いですかね?




「あぁ、くそっ。いいとこねぇな今日はよ」


 そうボソッと呟く王虎は気軽な物言いとは裏腹に辺りを威嚇するように睨みつけている。

 常人ならそれだけで気絶するか失禁するかくらいの威圧感だ。

 しかしどうやらこの場にいる人間は常人ではないようで、スワット(仮)の面々は銃を構えて微動だにする事はなく、神経質ヒョロメガネはクイクイと眼鏡を押し上げている。

 ……眼鏡のサイズあってないんじゃないか?


「いや、一応言っておきますが無駄な抵抗はやめてくださいね。こちらの弾丸は先程突入した勇敢な警官が持っていた弾丸と同じく、貴方のような猫科の獣人に特別有効な成分が仕込まれてますから」


 俺が眼鏡のサイズを気にしていると、妙に甲高い声でまくし立てるように早口でヒョロ眼鏡が聞いてもいない説明をしてくれる。コイツ、声を聞いているだけでイラッとするな。


 しかし、なるほど。王虎が拳銃を食らったぐらいで致命傷に近い傷を負ったのはそういうカラクリだったのか。

 王虎も小拳銃くらいなら食らっても大丈夫だと思って館長を庇ったんだろうが、まさかのデバフ効果があったというわけだ。


 まぁ、せっかく王虎が庇った館長もその王虎の手で無残な姿になってしまったが。


「いや、その勇敢な警官達はどうやら貴方に殺されてしまったようですがね? 正義感溢れる優秀な若者達だったのですがね? いや、残念です。この若者たちがどう優秀だったかというと、つい最近もスラムの子供達を保護することで、治安をよく出来るだの、子供は未来の可能性があり、強者になりえるだの、それ食い物にする悪者を取り締まりましょうだのと進言してきましてねぇ? 誘拐は悪だと。子供を守りましょうと。いや、市民を愛するいい青年でした」


 眼鏡をくいくいさせながら、これまた早口で聞いてもいない説明をしてくれる。

 口を挟むまもないマシンガントークってやつだ。

 王虎が警官を殺したのではないが口を挟む暇もない。


 その後もいかに若者たちが素晴らしいかを説明していたが、段々とそんな部下を持っている自分への賛美に変わっていったので、逃走経路を確認することにする。

 ヒョロ眼鏡が語っている間にスワット(仮)も包囲網をじわじわと完成させようとしているからな。


 やはり入口付近が一番厚く固められていて眼鏡合わせて八人。

 逃走経路としてはドアの向こうが見えないのも懸念材料だ。

 逆に一番薄いのが俺たちが逃走しようとした窓で、飛び込んできた奴とあと二人で合計三人。

 2階なので窓のすぐ外に待ち構えられているということはないが、その下はどうかわからん。

 それに、他の奴らを放置してそちらに行こうとしても、背を向けた瞬間、後ろからシコタマ撃たれるだろう。

 壁際は左三人に右に二人。ちなみに館長が潰れている壁の方が二人だ。

 ……これ殲滅以外に逃走は難しいのでは? ワンチャン窓に走るか?


 俺が考察をしている間もヒョロの話もは続いている。

 しかし、このヒョロ眼鏡……口では優秀だの正義感だの言っているが、その目には明らかに見下すような色があるな。部下は全部見下していくスタイルか?


「いや、私もね? 心を痛めていたんですよ。可哀想な子供達にはね? ただ世の中には色々とあるでしょう? 難しいんですよそう言うの。いや、私は賛成だったんですが、上がね? 面倒を嫌いまして」


 ……質問せずとも回答をくれるなこいつは。

 つまり上から睨まれる要因になり得る正義感溢れる若者は自分にとって疎ましい存在だったと。そう言いたいわけだ。そして子供を守るだのなんだのはくだらないと思っていると。


「いや、そんな折にですね? ここで子供達を食い物にしている悪いマフィアのボスがいると言う極秘の情報がありまして。いや、極秘の。ですから教えてあげたんですよ」


 ふぅむ。これでコイツと館長がつながっているのが確定だな。

 いくら王虎が脳筋だからって、曲がりなりにも元マフィアのボスだ。

 その予定をおいそれと外部に漏れるようなことはないように気をつけている。

 今日ここに王虎がくることを知っていたのは、俺と王虎本人とコンシリエーリ(相談役)代理のキース。そして館長だけのはずだ。

 話があるから劇場に居ろよなと事前に言っておいたのがアダとなったわけだな。

 館長からこのヒョロ眼鏡に情報が漏れたな。


「いや、まさか、此処にいたのが武闘派で名高い王虎君だとは露とも知らず。知っていれば三人で向かわせたりしませんでしたのにねぇ? いや、本当に」


 白々しい口調でまた俺の考察を裏付けてくれるヒョロ眼鏡。

 ヒョロはここに王虎が居ることを知った上で、目障りな若造を寄越したわけだ。

 そして王虎にぶつける事であわよくば共倒れを狙い、若造が勝てばそれでよし、負けてもそれを理由に王虎を合法的にしょっぴけると。

 こいつにとって一石二鳥のデメリットのない策だったわけだ。


 そして……こいつは俺のことも知っていたんだな。

 最近王虎が一緒にいる子供のことを。


 そりゃぁ、スラム子供を守りましょうと声を上げる正義感溢れる警察官を寄越しもするか。

 俺のことを聞けば、正義感溢れる警官たちは俺を助けるために豆鉄砲をもって、とても敵わないような強大な敵に立ち向かうだろう。そしてその正義感は暴走し暴発する。

 だって俺、はたから見たらマフィアのボスに連れ回されてる哀れな幼女だからな。

そしてその暴走がマフィアのボス相手に拳銃の引き金を引かせると言うわけだ。

そしてそれは一部の人間の起こしたもので警察は関係ない。そう言う筋書きだ。


「……俺が引きつけるから、お前は逃げろ」


 王虎が視線を動かさず前を見ながら小声で言ってくる。

 確かに俺の事を知っているやつが相手ってことで、俺の身の危険が増した事になる。

 拉致られたらロクでも無いことになりそうだ。

 だが___


「馬鹿言ってんじゃねぇよ。此処で捨てられる札じゃねぇぞ、お前は」


 俺は周りを見渡し、現状の把握を優先しながら小声で答える。

 これからの事は王虎(こいつ)がいなけりゃどうにもならんのだから。

 ここは、なんとかして切り抜けなくては……。

 俺が周りを見回しているのが目に留まったのか、ヒョロが声を上げる。


「おや? いや、なんともまぁ、個性的なお顔をしたお嬢さんがいますね? ブダイの獣人さんですかね? ブダイって知ってます? 額が大きく突出していて、唇も突出しているんですが」


 ふざけんな誰が魚の獣人だ。魚なのに獣じゃ矛盾するか?

 じゃあ、魚人だ。いやまて、この世界に魚人なんていないだろうが。

 つまりそれは純粋な悪口だろ。

 この世界の奴らはボコボコにされた幼女に辛辣な言葉を投げなきゃすまんのか?


「ふむ。いや、情報にあった娘ではないのですかね……?」


 うっぷ〜す。

 またも確定情報……と。

 ありがたいな。じゃんじゃかこちらの欲しい情報を喋ってくれる。

 少なくとも今回の黒幕はパピヨンとバンビーニの眼をかいくぐって俺まで到達出来る情報収集能力がある事がわかった。そして奇しくもそれは王虎の推察が正解である事を裏付けることになる。

 

……相手はデカイ。


「まぁ、いいでしょう。情報が間違えていた可能性もあります。その子も一応確保なさい」


 今までと違って短く端的なセリフ。面倒だが言葉の通り一応仕方なくという思いが表情ににじみ出ている。


 逆に面倒でもなさなければならない価値が俺にあると。

 つまり、俺がバンビーニのボスになったってことまでは知らないようだが、俺がやったことも把握しているって事だ。


 そして俺がその結論に達したと同時に、王虎もその事に思い至ったんだろう、焦ったように声を上げる。


「まて。こいつは関係ない。たまたま此処にいただけだ。もしかしたら……館長の知り合いかも知れんな」


 一瞬周りに白けるような空気が流れた。

 ……いや、俺をかばおうと思ったんだろうが、王虎よそれは無理筋だろ。

 相手に聞こえない様にとはいえ、小声で会話してたし、どう見ても他人の距離感じゃないだろ。


 そんな中ヒョロ眼鏡は王虎の話には乗る事にしたようだ。


「館長? あぁ、そこで壁のシミになっている彼ですか。いや、可哀想に。こんな惨殺事件を起こして王虎君は極刑間違いなしですね。 いや、凶悪犯からいたいけな少女を保護しなくては。念のためにね? その子も保護しなくてはいけません。 いや、色々あるので、保護しなくては」


 全く興味がないので今まで忘れてましたと言わんばかりに、ヒョロが館長だったものに視線を向ける。一般人が見たら中々ショッキングなそれを見ても眉ひとつ動かさず、それよりもと俺の保護を訴える。


 色々ってなんだよ。キモい。先程襲われそうになった身としては、こんな奴らに保護されたくない。異議を申し立てたい。だが注目もされたく無いのでノーコメもありや。

 そして俺よりも異議を申し立てたい人物が、実際に声を上げる。


「おいおい。俺は無実だぜ。此処にきたら、最初からそうなってたぞ?」


 ……王虎。

 最初からそうなってたって、そんなわけあるか。

 小学生が花瓶を割っちゃったときだってもっと良い言い訳するわ。


「いや、ご冗談を。貴方が此処にくる直前にお会いしましたけど、その時はまだ染みになってませんでしたよ。いや、本当に」


 染みって。ヒョロも言い方があるだろうに。

 だが直前お会いした……ね。

 やはりコイツらは、あらかじめ此処に潜伏していたわけだ。

 そしてどこからかこちらの様子をうかがっていたと。

 銃声が鳴り響いても誰かが叫ぶ声がしても。

 事が済んで静かになったので満を持して登場したわけだ。


 我知らず拳に力が入る。


「やっぱりわかっててそこの警官たちを捨て駒にしたのか?」


 注目されるのは悪手だとわかっていても、つい声を上げてしまう。


 目障りだったと言っても、若い警官たちはコイツの仲間だった筈。

 それをコンビニの弁当についてくる割り箸の様に使い捨てたってわけだ。

 気に入らんな。実に気に入らん。

 そのありようはまるで、前世の奴らの様ではないか。


 うん。___殺そう。


 俺がヒョロと目を合わせると、奴が一歩後ずさる。

 なんだコイツ?

 ビビってんのかよ。こんな幼女相手に?

 雑魚かよ。

 鼻で笑ってやると、ヒョロの顔がひきつる。

 そして無理やり笑顔を作ると肩をすくめながら口を開いた。


「はて? いや、なんのことかわかりませんね?」


 ビビって声が震えているのが丸わかりだ。

 そしてそれは勿論他のスワット(仮)の隊員たちにもわかっただろう。

 そして、スワット(仮)隊員が分かった事がヒョロにも分かったようだ。

 その瞬間パッと火がつくようにヒョロの顔が真っ赤に染まる。


  「餓鬼が俺様に舐めた口聞いてんじゃねぇぞ?! なんだその目はぁ?! 蜂の巣にして便所にぶちまけてやろうか?! あぁ!?」


 ヒョロがビビったのを誤魔化す様にキレ始めた。

 腰の拳銃を抜いてこちらに向けてくるが、隣にいたスワット(仮)の隊員が間に割り込む。


「署長……。落ち着いてください」


「あぁ!? 触ってんなゴラァ! 誰に触ってんだ! 誰に指図してんだテメェ! 署長様だぞ! 」


 そしてその隊員が諌める様にヒョロの肩に手を置くと、キレたヒョロが拳銃のグリップの底で隊員を殴りつける。その瞬間周りの隊員の視線が一斉にそちらを向く。


 ___チャンス。


 俺がそう思った瞬間にはすでに王虎が俺の視界から消えていた。

 そして硬いものを叩いたような音が壁際から聞こえてくる。


 なんだ? と思ってそちらを向くと誰もいない。

 あれ? 二人いた隊員は?

 そう思って視線を下げると隊員が床に倒れている。


 なんで? と誰かが呟くのが聞こえた。

 その瞬間今度は反対の壁から音がする。

 そちらを見やると王虎が隊員の胸ぐらを掴んで振りかぶっている姿が見えた。


 人って振りかぶれるものなのか___

 いつの間にそこに___

 残りの二人は___


 反射のようにそんな考えが頭に浮かんだが、次の瞬間には王虎は掴んだ人間を入り口の方に向かってぶん投げていた。


 ___は?


 誰が上げた声だったのか。

 もしかしたら俺かもしれない。

 もしかしたら全員かもしれない。


 人って飛び道具だったんだ……。


お読みいただき誠にありがとうございます!


最近、いきなり大声をあげてブチギレ散らかす人を見る機会があったんですが、本当に突然切れるんですよね。今までの会話をキャンセルしてキレるんです。

それはもう超必キャンセルから潜在超必を撃つくらいのキャンセル具合。


それを見て思ったのは、最近私は登場人物の行動・思考に一つ一つ道をなぞるような整合性を持たせていたんですが、本当は人間の整合性なんてそんなに取れてないんじゃ無いかと。


なんでそんな風に行動したのか、そんなことを言ったのか理由があることばかりじゃ無いのではないかと。

長時間支離滅裂なことを大声で叫んで発狂している人を見てそう思ったのです。

とても良いインスピレーションをもらえました。

ありがとう発狂していた人。


あとすいません来週はもしかしたらですけど、ワクチン二回目をぶち込むのでお休みしちゃうかもです。

もしそうなったら大変申し訳ありません。

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