2章 24話「フィクサーは正体不明が良い話」
どうもこんにちは、キアーラ・カサッツァです。
研修などで、出会って間もない人達とグループワークをすることもあるかと思います。
そのときリーダーを決めるたりしますよね。皆さんは何を参考にしますか?
大体の方が第一印象から決めるのではないでしょうか?
だって、それしか材料がないでしょうからね。
情報が少ない状態であれば、第一印象を良くすることにより、高確率で推薦を得ることができると思うのです。これって選挙でも同じことが言えますよね。
「そりゃ、正体を隠してるボスも多いけどよ」
頭を掻きながら、王虎がこまったように言う。
どうやら俺の正体を隠すと言う意見に乗り気でないようだ。
だが王虎の言葉通り、マフィアのボスが正体を隠しながらファミリーを運営しているケースはそれほど珍しいものではないはず。幹部や親しい人は除いて正体を隠し、一般社会に溶け込んでいると言うことがままあるのだ。
例えば皆に親しまれているピザ屋の主人が、実はマフィアのボスだなんて事もある。
つまり割と普通のことなのだ。なのに何故にそんな嫌そうな顔をするかね?
「うちは一応武闘派で鳴らしてるからよ? ボスが隠れてると、それだけで舐められたりするんだよ。臆病者ってな」
俺の疑問が顔に出ていたのか王虎が乗り気でない理由を説明してくれる。
しかしそれを言うならだ。
「幼女が出てった方がなめられるだろ?」
「そりゃ只の幼女だったらそうだけど、武闘派って言っても色々あるだろ? なにも腕力だけでやり合わなきゃいけないわけじゃなし。例えば銃の腕がヤベェとなれば幼女でも舐められねぇだろうよ」
確かに幼女でガン=カタ決めてたらヤベェけどさぁ。
幼女と銃のシナジーは前世でも大いに認められていたものだ。
だが俺にはそれはできないんだよなぁ。
「……俺は銃が撃てないんだよ」
「はぁ? なんでだよ? 銃を弾くのが怖いってタマでもねぇだろ?」
弾だけにねってほっとけ!
下らんダジャレにツッコミながらも俺はビビリのレッテルを否定する。
「んなわけあるかよ。そのまんまの意味で撃てねぇんだ」
「それこそ、そんなわけあるかよ。赤ん坊だって引き金が引ければ弾がぶっ放せる。それが銃だろ。それとも何か? お前は赤ん坊より魔力がないって言うのか?」
「……」
「おいおい! マジかよ!」
「マジだよ……。銃も撃てねぇ程なんだよ! わるかったな!」
目玉が飛び出す程に驚いた顔をする王虎だが、仕方あるまい。
通常ではあり得ないことらしいからな。
この世界の銃は火薬の代わりに、魔力なる不思議パワーを推進力としてぶっ放すらしい。
そしてその際に必要な魔力はごく少量。王虎の言う通り赤ん坊の魔力でも賄えるほどらしい。
この世界に火薬がないわけではないらしいが、安全に魔力を使って運用できるのに、態々暴発の危険を冒して使う必要もないので流通していない。ダイナマイトはないのだ。だからノーベル賞もないしダイナマイト刑事もいない。
「まぁ、なんだ。そのぉ。気にすんな!」
「慰め下手か! そもそも気にしてねぇし!」
嘘だ! 本当は超気にしてる! だって銃が使えれば攻撃力が変わるもの。
是が非でも撃ちたい。だが、かといって火薬で弾丸を作るなんてできない。
火縄銃ですら、なんで棒でザクザクしても暴発しないのか分からんし。
銃身で火薬を爆発させてるのに本体が吹き飛ばない理由も分からん。
実験中に自分の脳ミソがぶっ飛ぶビジョンしか浮かばない。
「魔力がない代わりにお前の脳ミソはぶっ飛んでんのかも知れんな……」
感心したような得心いった様な表情で頷いている虎男によると、どうやら俺の脳ミソは既にぶっ飛んでいた模様。
「うるせぇよ! 人をイカれてるみたいに言うな!」
「いやぁ、実際イカれてんだろ。自分の歳考えたことあるか?」
呆れた様に言う王虎ではあるが、その目には少しだけ探る様な色がある。
まぁ、側から見たら俺は異常だろうからな。正体が気になるところだろうさ。
その正体は10歳そこらの幼女に見える中身アラサーのオッサンな訳だが。
『見えると言う意味では君は10歳にも見えないね? 小さいね?』
おい、やめろ馬鹿
この身長の話は早くも終了ですね
なにいきなり話しかけてきてるわけ?
『身長だけじゃなく、全体的に幼いよね?』
お前がそうしたんだろうがヨォおおお!
男嫌いとか悪魔のくせに頭がっ! ぶっとんでんのはっ! お前だぁああ!!
俺の魂の慟哭を頭の上の腐れ悪魔に叩きつける。
ギャラドスだって裸足で逃げ出す程に、にらみつけるのも忘れない。
男が嫌いだから幼女に転生させるとか、人のことをなんだと思ってんだ!
俺が怒りに打ち震えていると王虎が遠慮がちに声をかけてくる。
「お、おい。悪かったよ。そんな顔の造形が崩れるほど睨まなくてもいいだろ……」
「こんなプリティフェイス捕まえてなんて言い草だ!」
クレア母さん譲りなんだぞ。造形が崩れることなんかない!
「今日は一段と尖ってんなぁ……」
しみじみ言われるとなんか気恥ずかしいなと思いながらも、話を俺の正体から反らすことに成功する。
『いや、君の正体は狂人って事で決着がついたんだと思うよ?』
狂ってません。狂ってませんが……。
「側から見たら幼女がボスなんて異常でしかない」
「……見た目の話なら、実は歳いってる奴って事で誤魔化せると思うが?」
……随分と俺が表に出ることを推してくるな
まぁ、エルフなんかもいるから実年齢より若く見えるってのでもいけると思うが。
「年が重要なわけじゃない。侮られないことが重要で、俺では無理だ。何故なら武力を有しているものには独特の雰囲気があるが俺にはそれがない」
暴力の匂いってやつは割と如実に出るものだ。前世でも本当にヤバいやつが道を歩いていたら、みんなが避けて通っていたもんさ。そうならない時点で俺なんてたかが知れてる。
そう説明するが王虎は、なおも食い下がってくる。
「俺はそうは思わない。お前にはやると言ったらやるスゴ味がある。それをわからないマフィアはいない。そしてお前の中には皆を導く真実の光がある。その光は虐げられてきた奴らを照らし希望を見せるだろう。俺に夢を見させてくれたお前を隠す事はしたくねぇ」
打って変わって真剣な顔で真面目に語り出した王虎。
聞いていて小っ恥ずかしくなるほどの絶賛だ。だが、それが王虎の本音である事は知っている。そしてそれが絶賛している様に見えてその実、俺に物申していると言うこともわかった。王虎は暗にこう言っているのだ。俺らに世界を変える力をくれるのではなかったのかと。
俺は王虎に力をくれてやると言ってバンビーニをもらい受けたわけだからな。俺には皆を導く責任がある。
「確かに。その通りだな」
俺が頷くと王虎の表情がパッと明るくなる。
「そうだろう! それじゃぁ、早速構成員達にお披露目と行こう!」
なんか、自分のお気に入りを自慢したいやつみたいになってる。
よっぽど俺の存在を隠しているのが嫌だったんだろう。
王虎はファミリー間での隠し事が嫌なタイプだろうからな。
善は急げと立ち上がりかけた王虎に俺は待ったをかける。
「それでも、俺の正体は隠す」
「な、なんでだよ!」
ポカンとした表情から一転して、牙を向いて抗議する王虎にため息が漏れる。
「まだ、そんな狭い視点でいるのかよ」
「どう言う事だ?」
呆れた表情の俺に王虎が怪訝な顔をする。
「俺言ったよな? 敵は全員全部。マフィアだけじゃなくて世界そのものだって」
俺の言葉を聞いてハッとする王虎に続ける。
「マフィア相手にマウント取ってもしょうがないんだよ。俺が出て行って舐められるのはマフィアじゃねぇ。商人だ一般人だ政治家だ。こいつらとやり合う為には信頼がいる。その為には俺の姿は不都合なんだよ」
「じゃぁ、ずっと正体を隠して行くってことか?」
そう不安そうに聞いてくるなよ。そうは言っていない。
と言うか幼女なのが問題なのにずっとなわけないだろ。
なんだ? 俺は成長せんのかい。大人にならんのかい!
それにそこまで時間をかけるつもりはない。
「ちげぇよ。要は正体を明かすタイミングの問題だ。先ずは実績がいる。誰の目から見ても一目おかざるを得ない様な実績が」
「血吹き病の治療はそうじゃないのか?」
まぁ自画自賛したい偉業ではあると思うが残念ながら違う。
「誰の目から見てもと言う点からは外れる。当事者以外は興味のない話題だったからな。クソッタレなことに」
王虎が悔しそうな表情を浮かべるが、世論なんてそんなもんだ。
当事者じゃなければいつでも対岸の火事なのだから。
そんな世論の鼻っ柱に叩きつける実績はコレまた世論から成る。
世の中の支持を得ることが近道なのだ。
つまり……
「つまり?」
ゴクリと喉を鳴らす王虎に俺は胸を張って宣言してやる。
「アイドル活動こそ、世の中を味方につける最大の方法なんだよ!」
「な、なんだってー」
「と言うことで今後は王虎君には俺のコンシリエーリとなってもらいます」
「はぁ?! 正気か?! 俺に細かい調整なんて無理だぞ!」
「そこはトッポ氏とキース君に頼ってください。コンシリエーリのコンシリエーリです」
「そんなの聞いたことねぇ!」
「今決まりましたので」
「そもそもなんでアイドルなんだよ!」
まぁ、アイドルというか芸能人なんだけどね。
知名度が力になるというのは前世で嫌という程証明されている。
芸能人上がりの政治家が世界にどれだけいたことか。
能力なんて一欠片もなかったとしてもイメージだけで票数を取れてしまうと云う民主主義の弱点を逆手に取らせてもらう。
歌は世界を救うんだぜ!
お読みいただきまして誠にありがとうございます!




