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2章 21話 「取り敢えず胸を見せておけみたいなところあるよなって話」

大遅刻申し訳ございません! 次の日は遅刻と言えない?

無断欠勤? 返す言葉もございません!!

すいませんでしたぁあああああ!!!


こんにちは、キアーラ・カサッツァです。

営業マンは商談に入る前には世間話をするのが普通です。

常連であった場合はその過程を省略することがありますが、基本的に世間話や前振りを挟むことで、話し合いに応じる意思がありますよというアピールにもなりますし、互いに緊張をほぐす意味合いもあります。

しかし、この暗黙の了解を知らないと商売のイロハも知らぬ無知なやつと足元を見られてしまいます。

ボッタクられてしまうかもしれませんね。

私はどうせボッタクられるなら、ムチムチな胸元を見ながらがいいです。



「そういえば、もう仕事場(・・・)には顔を出したの?」


今日俺は薬膳計画の途中経過を確認する為にパピヨンに来ていた。

スウィートポテトと寒天ゼリーを作った日から幾ばくかの日にちがすぎている。


「……今も仕事中ですけど?」


俺はマダムから出されたお茶を飲みながら、お馴染みになりつつあるマダムの仕事場のソファに座りながら答えた。


「それはそうでしょうけど、他にもお仕事があるでしょう?」


アダムに呆れたように言われ、俺は何のことだと少し考える。

ここのところパピヨンへの通い詰めだったからなぁ。

もちろんお客としてではなく仕事でだよ?


例えば仕事の過程で店の姉様達と一緒にお風呂に入ったりとか、その時にフレアさんやマダムの裸体を拝んで眼福であったりとかは、あくまで仕事の副産物なのだ。

俺は桃色パラダイスに想いを馳せながらマダムの質問の答えに思い至る。


「あぁ、アイドル活動の方ですか」


正確にはプロデューサー活動だけど。

俺がアイドル活動をしているわけではなく、スラムの子供らでアイドルグループを作り、それを俺がプロデュースしているのだ。


「そっちじゃなくて……」


アダムが違う違うと言ってくる。

となるともう一つの方か。まぁ、セットみたいなものだけど。


「あぁ、ビンゴの方ですか。あれは一応単独ではなくライブコンサートとセットでやる事にしたので、次は1週間後なので今日は特に仕事はないです」


俺は今ビンゴ大会とライブと握手会を混ぜ合わせた全く新しいビジネススタイルの総合プロデューサーでもあるのだ。


最初のうちこそバタバタと慌ただしかったビンゴ・アンド・ライブだったけど、何度も繰り返すうちにスタッフもアイドル達も慣れてきて、俺が直接指示を出さなくても開催できるようになってきたのだ。おかげで俺の負担がぐっと減ったのでありがたい事だ。


「そういえば、お預かりしているミッシング・C・ムーンも順調ですよ」


ふと思い出した報告にマダムは頷く。


「えぇ、こちらにも報告が来ているわ。態々(わざわざ)商売敵を増やすなんて本当に良かったのかしら?」


そうなのだ。俺はスター☆プラチニスというスラムの子供中心のアイドルグループの他に、パピヨンの従業員でアイドルをしてみたい有志を募り、そちらもプロデュースしているのだ。


「いいんですよ。独占は企業努力を低下させ腐敗を招きます。ライバルがあってこそ企業の成長があると思っていますから」


「まるでベテランの商人のような物言いね。それも既に大成した後の」


若干呆れのようなものを滲ませながらマダムが言ってくる。

まぁ、俺が度々自分をただの幼女であると申告しているのに、言動が伴っていないからなぁ。

だが幼女である特権を手放す気は無いので、きちんと本の受け売りで自分で考えたのでは無いですよと言い訳をしておく。

弱肉強食のこの国で自分の成功体験を、本にまとめる奇特な人がいるかどうかはこの際捨て置く。


マダムはますます呆れ顔になったが、諦めたようにお茶を一口飲んでから続ける。


「それにしたって身内でライバルを増やすことはないでしょう?」


まぁ、それも一理ありますがね?


「前に言った通り、この商売の仕組み自体は簡単なもので、すぐに真似されてしまいますから。であれば競合相手をある程度コントロールできた方がいいです。それに沢山あるグループの中で、うちが中で頭一つ抜けていればいい話です。逆に目立つでしょう?」


今は大丈夫だが、いずれは俺の前世知識を上回る楽曲を思いつく奴も出てくるだろう。

であれば、うちのアイドルグループには音楽性の毛色が合わない関係で、出さないタイプの楽曲を、今のうちに味方から出させた方がましだ。


それに未だやらないが、スター☆プラチニス(うち)と|ミッシング・C・ムーン《パピヨン》でライブ対決なんていうのも行く行くはやりたいしな。

7◯5プロと9◯1プロの対決のように!


「うちはスター☆プラチニスを引き立たせる添え物と言うことかしら?」


俺が脳内でサイリウムを振りながらシャンシャンしていると、マダムの硬い声で聞いてくる。それだけ聞くと一見、怒っているようにも思えるが、胸の前で腕を組んでその聖域を強調しているのであくまでポーズだ。

だってそんなことしたら俺が喜んじゃうのをマダムは知っているからね。


「そうじゃないことは前にも話したでしょう? 楽曲だってうちとはジャンルの違うのを提供しているじゃないですか」


だからと言って仕事の話をそっちのけにするわけにもいかず、俺は夢と希望が詰まった神秘のお山を見ながら、仕事の話をする。

両立しなければならないのが、総合プロデューサーの辛いところだ。


「わかっているけれど、やっぱりそちらのお客様の熱狂ぶりを見てしまうとね?」


マダムが肩をすくめながら言ってくる。

その際に博愛と母性の象徴がダプンと一回揺れる。


おいおい、世界で一番価値のある上下運動だな?


「そっちの方が顧客単価は上でしょうに」


重くないのかな? 俺が支えてあげようかなと思いながら反論する。


「お金だけのことでいうならそうでしょうけど、やっぱりお客様を喜ばせてこそでしょう?」


マダムがそこはかとない不満を言葉に滲ませながら言う。

表情は別の観察が忙しいので伺い知ることはできないが。


確かにミッシング・C・ムーンに下ろしている曲は、ジャズとかちょっと時代を先取りしてブルースとかで、この世界の人でも馴染みがありそうなもので構成している。

そのため斬新さはスター☆プラチニスよりないかもしれない。その差がオーディエンスの熱狂の差になっているのだろう。


しかしこれは今後俺から楽曲を提供できなくなるリスクを考えてだ。

何故なら提供している楽曲は実際に俺が考えているんじゃなくて、前世の曲を拝借しているにすぎないからだな。そんなに沢山覚えているわけじゃないんだ。

おじさんに何を期待しているのか!

パピヨンには俺がいなくても大丈夫なように、早く自分で作詞作曲できるアーティストを作っていもらいたい!!

あと弾数に限りがあるので、斬新な楽曲は自分のところで使いたいのだ。


「そんなこと言ったら、C・ムーンの子達がかわいそうですよ」


しかし、そんな本音はマダムに言えないので当たり障りのない模範回答をする。

新曲を作れるアーティストを育てて欲しいのはマジ急ぎなので、あとで追加しておこう。


「貴女が私たちにもあの不思議な曲をくれれば、可哀想な子は誰もいなくなるわよ?」


マダムが多分笑顔で言ってくる。

多分なのは引き続き世界でもっとも幸せな震度測定に俺が勤しんでいるからだ。

もうダイレクトに揺らしてくれている。


「欲しがりますねぇ?」


欲しがっているのは俺だけどな。


「言うだけならタダじゃない?」


見るのは有料だろうか?


「そうりゃそうですけどね? そんなに安売りはできないです」


安いってことはないよな? こんなに高級な御メロン様を拝むとなると値が張るに決まっている。


「じゃあ、安売りはできなけれど、売るものはあるってことよね?」


身体が商品の方を有料で鑑賞する場合は小売になるのかな?

いや小売は小分けにして売るって意味じゃないのは知ってるけど。


「そりゃあ、なかったらこれからの商売が難しくなるじゃないですか」


売るものが沢山あるのはいいことだ。

そう考えると売っても無くならない、無限在庫の持ち主である娼婦は無敵と言えるのでは?

まぁ、体力とか精神とか見えないものは減るけど。


「そう? 数曲ヒットがあればいいと思うけど?」


マダムの言う事にも一理あるが俺は肩をすくめるだけに止め、目線を外さずソファに深く座る。


まぁ確かに前世と違って情報の広がるスピードが緩かなこの世界であれば、ヒット曲が数曲あれば十分食っていけるだろう。多分興行でいけると思う。

前世にも一曲だけのヒット曲で生涯稼ぎ続ける歌手もいた。

……そっちの方が多いか?


だが、それでは足りないのだ。


残念ながらこれからも恐らくスラムの子供は増える。

勿論スラムをなくすつもりではある。だが、今すぐには無くせない。

時間がかかる。そして子供達はその間も生きていく為に仕事が必要なのだ。

だから少しでも生きる為の手段を増やす為に、全員が演奏しても余るほどでなければならないのだ。


『格好をつけても楽曲は前世からの盗作だね?』


真面目な話になった途端ルナがチャチャを入れてくる。

手には俺の作ったスィートポテトを持ちながらな。


それについては申し開きのしようがない。

バレたら素直に謝るさ。

バレないだろうけど。


『そう言うのをフラグというんだね?』


いやに前世のサブカルチャーにくわしいこの悪魔は、どこからか2個目のスィートポテトを取り出しそれを口に放り込む。


いや、俺でも知っているレベルのアーティストが転生してきたら願ったり叶ったりだから、これがフラグならありがたいな。速攻でスカウトだ。


「安売りをしないなら、お値段はいかほどになるのかしら?」


マダムは俺との値段交渉は割と直球でくる。

そっちの方が早くて助かるけど。マダムと腹の探り合いをしながらの値段交渉はとても疲れるだろうからな。今日は違うみたいだけど。


マダムが胸を強調するのをやめたので俺も視線をマダムの顔に戻す。


「う〜ん。それこそ値段の問題じゃないんですよねぇ。手札の問題ですから」


「手札の問題というなら、なぜあの子達にお客を取らせないのかしら?」


そう問いかけるマダムの視線は鋭くなった。


なるほど。それが本題か。

珍しくいくつかの遠回りがあるなと思ったが確かにいきなり本題に入るには重い内容だ。

なんせくだらない理由ならば瞬く間に彼女からの信頼を失うだろうからな。

彼女が自分たちの仕事に誇りを持っているが故に。



本当にすいませんでした! お読みいただき有難うございます!

一応遅刻の理由を申し上げますと、仕事での突発アクシデントで家に帰れなくなった為です。

ネタが出なかったとか執筆上の問題ではありませんのでご安心ください。


それはそうと先日Twitterで感想をいただきました!!!

有難うございますぅ!!!!!! 嬉しいです!

とても励みになってパワーもいただけました!

これからも頑張ります!


遅刻すいませんでした……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 確かに!その価値に同意します。 記憶に焼き付く楽しい表現で楽しませていただいています。 ありがとうございました。
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