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2章 18話 「不一致って当人にとってはおおごとって話」


どうもこんにちは、キアーラ・カサッツァです。

世の中には自分の性別に対して違和感を覚えてらっしゃる方がいます。

私の周りにも何人かいらしゃいましたが、どの方も芯の通った方ばかりでしたね。

お話をしてみて共通している事は、何かしら乗り越えてきたものがあるという事でしょうか。こういう言い方もどうかと思いますが、その辺にいる人よりも物凄くしっかりと人生について考えていらっしゃいます。

そんな方達に比べると私はまだまだですね。




「まぁ、とにかくデザートの話ですね」


色々疲れてしまったので、ソファに座り仕切りなおす。

自然と年寄りくさいため息が出てしまうけど、仕方なし。

だって、よくよく考えてみたら、俺に薬を作る知識なんかないし。

この世界に薬がないことがわかっても、だから何って話だったと気づいたからだ。


それなのに鬼の首を取ったように興奮して、危うくフレアさんに異世界転生したことがバレそうになった。ため息も出ようというものだ。


最近なんだか感情の起伏をコントロールできないというか、情緒不安定というか、何かにつけて過剰反応してしまう自分を抑えられない気がする。

どっちかというと俺は感情の乏しい方だと思っていたんだけどな。

10歳超えたあたりからなんだよなぁ。何か原因があるんだろうかね?


「さっきも言いましたけど、材料は芋と海藻です。今は手元に材料がないのですぐには作れないですね」


内面の疑問は取り敢えず脇に置いておいて、マダムの質問に答えると、トントンさんとフレアさんが残念そうな顔をする。

残念と言うか絶望的な顔?


「それなら、材料はこちらで用意しましょうか?」


見かねたマダムがそう提案してくるが、それはあまりうまくないので、やんわりとお断りする。トントンさんとフレアさんをダシにして、情報を手に入れて、あわよくば自分のところで原材料をGETし安く済まそうという腹だろう。


油断も隙もないぜ。まぁ、商売人としては当然の駆け引きと言えるがね。


情報を渡して、はい終了では、いかにも旨味もないし、儲けも乏しくなってしまう。

こちらとしては長くご利用いただかないとな。

まぁ、取れる場所(・・・・・)がわかってもコスパが最悪で諦めることになると思うけどね。

大体、取れる場所を教えても海藻類を食べないという、マダム達では海藻の区別がつかないだろう。


『君は区別がつくのかい?』


ルナが不思議そうな顔をして聞いてくる。

俺が海藻の区別ができる事を疑問に思っているようだな。

まぁ、前世でも流石に加工されていないテングサを見る機会はそうないからな。

普通は判別できないだろう。意外に思うのも無理はない。

だから俺はその疑問を払拭するべく、ルナに質問する。

逆に聞くけど、お前は判別できるのかよ? と。


『質問に質問で返すなって教わらなかったのかい?』


半眼で告げるルナ。

教わってないんだなぁ。

実際問題、学校で礼儀作法って習わないから、それがいけないことだって教わらないよな。

大体、質問に質問で返すのは補足が欲しい時には当たり前のことだし。


『礼儀作法は学校で教える事じゃないしね? 親が教えるか、専門の先生に教えを乞うのが普通だね?』


いつの頃からか、学校は親が放棄した分の教育を補填する場所だと勘違いされてるよな。


『補填ならまだマシじゃないかな? 全部丸投げしている親もいるしね?』


そう言う親に限って、順位をつけるのは差別だとか、なんでうちの子が主役じゃないんだとか騒ぐんだろ? むしろ子供の頃から、実力による順位づけがあるって言うの叩き込んでおかないと、社会に出た時辛いと思うんだよな。


『上を目指さず停滞をよしとする子供に育ってしまうね?』


そう思える事が、どれだけ恵まれてる環境なのかって話だ。

スラムにはそんな事を考える余裕すらないと言うのに。

スラムの人間はその日を生きるので精一杯だし、何もしないということは死に直結する。

貧すれば鈍するというか、向上心を持てると言うのは平和のもとに成り立っているんだとつくづく思った。


生活を豊かにせねばと決意を新たにしたところでルナに質問する。

で? お前はテングサを識別できるのか? と。


『……いやにしつこいね? なんだか答えたくないね?』


警戒したように身を引くルナだが、答えたくないという答えが真実を物語っているな。

こいつはテングサを見分けることができる!


『まさか、テングサの判別を僕にやらせるつもりじゃないだろうね?』


いやそうな顔をするルナ。

おしぃい! トンカツとチキンカツくらい、おしい!

時にルナくん君はどれくらいのスピードで飛べるのかね?


『……だんだん、言わんとしている事がわかってきたね?! それを知ってどうするつもりさ?!』


んっん〜。なぁに知的好奇心て奴だよ。本当だよ?

サツマイモは当然見分けがつくよね? どこで取れるか知ってるかなぁ?


ルナは焦った顔をしながら俺から距離を取り答える。


『つくけど、サツマイモはこの大陸だとメキシコが原産だね? つまりとても遠い所にあるという訳さ。そしてテングサもメキシコで取れるね?!』


おぉ! よく知っているじゃぁないか。

博識だねぇ。賢いねぇ。じゃあ、次に俺がいうセリフもわかるかな?


『君は次に、「テングサとサツマイモを取ってこい」と言うね……?』


グッド!! イグザクトリー!

テングサとサツマイモを取ってこい!

それがお前への要求だぁ!

メキシコへ食材獲得の旅、いってらっしゃい!


『むぐぅ!』


ルナの苦虫を噛み潰したような表情に、ささくれ立っていた心が晴れわたっていくのを感じる。ルナは癒し系だなぁ。ついつい笑みがこぼれちゃうぜ。


先日ルナが俺との契約を利用して、この世界で少しだけ肉体を手に入れていた事がわかった。まぁ別に俺とコイツは仲良しこよしの間柄ではないし、出し抜いて利益を得ることについては些かの不満もない。それにこの世界で肉体を得ることはコイツの目的の一で、別に俺に実害があるわけでは無いしな。


だが今回はその肉体を得たことで、この世界に干渉できるってのが問題だった。

もとより俺はこの異世界転生ゲームをフェアに進めるためという名目でハンデとしてチートをもらっている。このフェアにというのは俺の機転(自慢)で契約の一部となっているんだが、これによりコイツは、わからん殺しなどの理不尽系即死トラップや、俺が一方的に不利益を被るようなことをできなくなっている。

だが今回のコイツが物理的に干渉できるというのは明確なアドバンテージ。

俺の微妙なチートではコイツの方が超有利。

あわや契約が強制解約というところで、俺の要望を一つ聴くということでチャラにすることと相成ったわけだ。


そして俺は今回、遠方への芋掘り海藻とりをやつに課すことにしたというわけですよ。

うぷぷぷぷぷ!





『本当に君は悪魔より性格が悪いね?』


これは仕方ないんだよ、限りある条件の中でほぼ最上級の結果をだせたら誰だって笑顔が溢れちゃうものだろ?


『なるほど、ちなみに君の情緒が不安定なのは二次性徴の影響だね?

よかったね? 女の子から女の人への第一歩だね?』


ニッコリと良い笑顔で言ってくるルナ。


………………はぁ?

ちょっと何言ってるかわからない。

わかりたくない。

え? わかんない。


『具体的に言うと、子供を作れるように身体が準備を始めたんだね?』


全然わからんわ。難しすぎるわ。

俺、男だし。幼女とい言う名の紳士だし。


『そろそろ幼女でもなくなるんじゃないかな?』


あー!!!

ハイ! この話は終了しました。

俺が幼女でなくなるのはとてもよろしくないと思います。

ですので、以後もうこの話はしないでください。

あなたはもう、芋と海藻を取りに行ってください。


俺は自分の内側から湧いてくる、なんだかわからない感情に、少なくない吐き気なんぞを催しながらもルナをシッシと手で追い払う。


『ふふふ。どうだろう、少しは仕返しになったかな?』


楽しくて仕方ないと言うのがその声音から窺い知れる。

性格悪いよ? 本当に。


俺がうなだれながら心の中で呟くと、ルナは高笑いをしながら部屋を出て行った。


そして突然元気のなくなった俺を心配したフレアさんによって自宅に強制送還される羽目になり、デーザート作りは後日ということになったのだった。


はぁ、どっちみち材料待ちだから、いいんだけどね。

そろそろ、自分の性別と向き合う必要が出てきたのかね?


そんな事を思いつつも、家にテングサとサツマイモをせっせとルナに運ばせる事で溜飲を下げながら、パピヨンへ再度行く日を待つのだった。


お読みいただき誠にありがとうございます。


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