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2章 17話 「RPGで薬の種類が少ないのはこういうことかもしれない話」

 


 どうもこんにちは、キアーラ・カサッツァです。

 よくRPGをどこまでリアルにするか問題で、食事やトイレが挙げられたりします。

 食料はリアルにするけど、トイレはなぁなぁだったりしますよね。

 まぁその食料もダンジョンに落ちてたパンだったりするので、リアルとはかけ離れてたりしますが。あとはイベントで風邪を引いたりすることはありますけど、基本は登場人物達は病気になりません。きっと不便すぎて楽しめないからでしょうね。もしくはディスシックで一括で治しているんでしょう。



「これからの事を話しましょう」


 改めてマダムが俺の目を見ながらそう言う。

 しかしそこから感情を読むことはできない。

 だがそれが凪いでいない事くらいは誰にだって分かるだろう。


 彼女が先程見せた憎しみの由来はわからない。

 そして、その深さを推して測る事も出来ない。

 しかし人の心理を読み、行動をも操るマダムが、人間をコントロールする事に長けた彼女が、自分自身を制御できなくなるほどだ、憎しみは相当に深かろう。


 だが俺は、いつもとは違うその声を聞き、冷静さを取り戻すとともに、彼女に親しみを抱いていた。


 俺は出会った時から彼女に前世で父親に当たる人物に近しいものを感じていた。

 だから心のどこかで彼女を恐れていた。

 自分の意思とは関係なく、抵抗もできず彼女の思うままに操られてしまうのではないかと。


 でもそれは杞憂だった。

 何故なら前世の父親(アイツ)には感情がない。何かを想うこともない。

 あるのは一族を反映させるという思考だけ。

 機械のように一切の揺らぎがないからこそ、完全に人を操る事ができる。

 人間の柔軟な思考と、機械の正確な計算の二つがあってこそあの化け物は成立しているのだ。


 だが、マダムは感情がない機械ではなかった。

 血の通った人間だった。前世の父親(ばけもの)ではなかった。

 前世の家族(はぐるま)でもなかった。


 しかも彼女の憎しみの矛先は、俺の怒りの矛先と同じくしているように思える。

 奈落を作り出し、弱者を許さないこの国の支配者が敵だ。

 彼女の敵と俺の敵は同じ、つまり俺と彼女は同志なのだ。

 親しみもわくというものだ。


 早速、真なる開拓者の一族(てき)をぶち転がす、これからの話をしよう!


 俺は興奮とともに身を乗り出し、そう告げようとすると、先にマダムが口を開く。


「スウィートポテトと寒天ゼリーはすぐにでも作れるのかしら?」


 マダムの意外な言葉に俺は一瞬硬直してしまい、乗り出した勢いのままテーブルにダイブしてしまう。鼻の頭をぶつけた……。


「あらあら♪」


 トントンさんが心配そうな声を上げるが、一瞬のうちにテーブルの上の菓子を退避させていたのを俺は見た。


「うちは人数も多いから量も多くなるし、そうなると作る場所も考えないといけないわね」


 そう言いながら頬に手を当て思案するマダムは、いつも通りの感じだ。


 ……あれぇ? そっちぃ? これからの事ってそっちぃ?

 おかしいな? 今なんかこの国の核心に迫って巨悪を暴いた感じがしたんだけどな?

 命の危険も迫っているとか、いないとかそんなニュアンスのアレコレだったはずだよな?


「そうね♪ 台所はいつも忙しいから難しいでしょうし♪」


「それでしたら、庭に簡易的な竃を作ってそこで作ると言うのはどうでしょう?」


 トントンさんはおろかフレアさんまでいつも通りに……。

 いやフレアさんはなんかぎこちないけど。


 あれ? もしかして夢オチ? いつのまにか俺寝てたのか?


『君が冷静さを取り戻したとか言う時は、大概が逆に錯乱しているね?』


 俺が内心、不安に思っているとルナから声がかかる。


 え? マジで俺寝ぼけてるって事?


 俺はテーブルに突っ伏したまま、天井近くにいるルナを見上げる。



『そんな訳ないだろう? 君は些か敵を認識すると興奮しすぎるきらいがあるね?』


 なにそのサイコパスな性癖。人を初代ブロリーみたいに言わないでくれる?

 どちらかというと、俺は17号だから。クールガイだから。


『17号も未来では人間狩りを楽しむサイコパスだったね?』


 お前、悪魔なのになんでそんなこと知ってんの?

 魔界でも月曜日に発売されてんの?

 そういえば前から思ってたんだけど、魔界村のどの辺が村なんだろうね?

 ステージ1はまだ人間界だろうし、魔界の住民が住んでそうなところって城くらいだよね?

 魔界城じゃんね?


『いや、本当に落ち着きなよ。あとブロリーは映画だから月曜日には発売されないよ?』


 あ、そうだね。じゃあアニメ派かー。

 そっかー……。


『……』


 ……。


『落ち着いたかい?』


 あんまり?


『はぁ……』


 呆れ顔のルナがため息をつき、肩をすくめるのを見ながら、俺も一つ息を吐く。

 確かに頭に血が上っていたようだ。


 当然先程のやりとりが夢なわけもなく。

 そしてマダムが仕切りなおすように、デザートの話に戻したことにも意味があるわけで。


 俺はそのままマダムの方を向き問いかける。


「まだ、早いですかね?」


 主語のない問いかけにマダムはすぐに返してくれる。


「ええ、早いわ。少なくとも、さっきみたいに目が血走ってる子にはね?」


 困った子を諌めるかのように指を立てながらいうマダム。

 マダムになら、めっ!てされてもご褒美だな。


 しかし、目が血走ってたか……。

 自分でも思っていた事なのにな。

 奴らと事を構えるのは力を溜めてから。

 そうでなければ相手にならないってね。


 だというのに今にも殴り込みをかけそうな顔をしてたら、これからの事を話すも何もない。


「こりゃぁ、大減点ですかね?」


 俺は頭をかきながら聞く。

 自分たちが危機的状況に晒されていると思い焦ったにしろ、短絡的な思考と行動は組織を束ねる者にとって好ましくないからな。


「そうね、大きな減点だと思うわ」


 マダムも当然そう考えるだろう。

 命がかかっているならなおさらだ。


「でも___ 私も1度目はその話をしようとしたから、おあいこかしらね?」


 はにかんだ笑顔でそう言うマダムはどこか楽しそうに見える。

 そうか、最初は俺の考えと同じく、奴らをぶち転がす算段だったわけだな。

 でも目の前に自分と同じくらいブチ切れている奴がいたので冷静になれたと。

 そして今は一周回って面白くなっちゃったと。


 おちゃめかよ。



「今はまだ、どれも憶測に過ぎないわ。どれだけ辻褄があっていたとしてもね」


 すっと笑顔を消しマダムが言う。


 確かにその通りだ。開拓者の一族が壊血病を政治利用していることも、栄養学を秘匿していることも、何の証拠もなく俺の憶測でしかない。公にしたとて妄想と断じられるだろう。


「そして何より、それが真実だったとしても、奴らを罰する法律はないわ」


 奴ら___そう言うマダムの手は固く握られ少し震えていた。

 俺はそれが悔しさからくるものだろうと察せられた。


 この国は強者が弱者を虐げているとはいえ、一応は法治国家だ。

 たとえそれが為政者にとって都合のいい物だとしても、法律が存在する。

 それを犯せば罰せられる。


 そして開拓者の一族をぶち転がすのは罪だが、栄養学を秘匿するのも壊血病を利用するのも罪ではない。

 つまり今、奴らと相対せば世間的には俺たちの方が悪と断ぜられてしまうわけだ。

 これが悔しくないはずがない。


 だがしかし___


「だから今は何もしない」


 悪になるのが怖いわけではない。

 目的のためなら泥を被るのも厭わない。

 だが、それは目的遂行のための一手でなくてはならない。

 そうでないなら、何もしない方がいい。

 だからここであったことは無かったことにする。

 だからこれから話す事はデザートの話。そう言う事だ。


 今は(・・)ね。


「じゃあ、スウィートポテトも寒天ゼリーも作らない?」


「それはダメよ? それはそれ、これはこれ。きちんと作ってもらわないと」


 お互いにじゃれ合うように軽口を叩く。


「でも、それを作ったら命が危ないかも?」


 神妙な顔をして見せるとマダムが吹き出す。


「新しいデザートを作っただけなら大丈夫でしょ? 貴方達も今更デザートなしなんて嫌よね?」


 マダムがトントンさんとフレアさんに話を振ると、二人ともウンウンと頷き、表情も柔らかなものになった。

 こうして見れば、さっきの二人はどこか無理している感じがあったもんな。

 トントンさんはマダムを気遣って、フレアさんは多分現実逃避でいつも通りを演出していたんだろうな。

 普通に戻ったところで、俺もテーブルの上からソファに戻ろう。


「きっと大丈夫です! だからデザートを作りましょう!」


 なにが大丈夫なのかと問いたいくらいの根拠のなさそうなフレアさん。

 ただデザートが食いたいだけのような気がする。


 まぁ、大丈夫でなければこの国のお菓子職人は全員抹殺されているわけだし?

 あくまで栄養学を明るみに出すことが危険なだけだ。

 ブルーベリーを食べれば目が良くなるとか、うたわなければ大丈夫だろう。


「しかし、疑問なんですけど先人の知恵とかで、これを食べれば元気になるとか無かったんですかね?」


 おばあちゃんの知恵袋的な? 学問に発展してなくても民間療法みたいな形で発生すると思うんだよな。

 ふと思ったのでついでに聞いてみる。


「例えば?」


 だが、いまいちイメージがつかなかったのか逆に質問されてしまった。


「例えば、風邪をひいたときは生姜がいいとか」


 俺が言うとマダムは少し考える。


「聞いたことがないわ。症状がひどいときはポーションを飲むし」


「症状が軽いときは何もしません」


「風邪は引かないわ♪」


 三種三様の答えが返ってきた。

 最後のは超人かな?

 まぁ、風邪は万病のもとって言うし、薬を飲むか。

 じゃぁ___とお題を変える。


「飲み過ぎた次の日にはウコンがいいとか!」


 大人なら必ず体験しているであろう(偏見)二日酔い! これならわかるだろう。


「聞いたことがないわ。あと、次の日に響くほど飲んだりしないわ」


「頭が割れそうになるくらい、ひどいときはポーションを飲みます!」


「酔っ払ったことがないわ♪」


 またも三種三様。

 そして最後はまた超人かな?

 ふぅむ、仕事に支障をきたすくらいなら薬を飲むかなぁ?


 その後もいくつか質問をするも、どれも同じような答えになった。

 何もしないか、ポーションを飲むかのどちらかだ。


 ちなみにトントンさんは今の今まで不健康になったことがないらしいことが分かった。

 不健康っていうか状態異常になったことがないというか……。

 もしトントンさんのステータス画面を見れたとしたら、きっとスキルに状態異常無効が付いているに違いない。

 だからこそ今回の便秘の件で激しく動揺してしまったんだろうな。


「結局、何かあったときは薬を飲むってことか」


 俺はそう結論づける。民間療法よりも薬の方が確実という文化なのかな?


「そうね、何かあったときはポーションを飲むわ」


「薬も食べ物からできてると思うんですけどね? その辺も秘匿されてるのかな?」


 俺がそういうと皆驚いた顔をする。


「ポーションは食べ物からできているんですか?!」


 フレアさんが勘違いしているようなので、いやいやと訂正する。


「ポーションの材料は知りませんよ。薬の話です」


 そういうと今度は皆が不思議そうな顔をする。


「だからポーションの話よね?」


 ん〜? なんだか珍しくマダムと会話が噛み合わないぞ?


『君が胸の話をしているときは、いつだって噛み合っていないよ?』


 茶化すなよ。真面目な話だ。

 ルナが横槍を入れてくるが、無視して皆に質問する。


「胃が痛くなった時に飲むのは?」


「ポーションね」


「それくらいでは飲みません」


「胃が痛くなったことはないわ♪」


 おいおい、これってもしかして?


「頭が痛いときは?」


「ポーション」


「なったことがないわ♪」


 トントンさんはちょっと保留で。

 ショボンとするトントンさんを振り切って!


「目が腫れたら?」


「ポーション」


「かぶれたら?」


「ポーション」


「蚊に刺されたら」


「流石にそれではポーションは使わないわ」


 マダムに苦笑いをされてしまう。

 だがこれでわかったかもしれん。

 栄養学が完全に秘匿できる理由が。


「この世界には薬がない!」


「? ポーションはありますよ?」


「この……世界?」


 あっ! ヤベッ! 不味い不味い!

 ポロッと不味いキーワード出しちゃった!


 不思議そうなフレアさんと、訝しげなマダム!

 異世界の存在がバレるのは不味すぎる!


 リカバリーせな!

 俺は全力を出した!


「この背!かいーのに薬がない!」


『無理があると思うよ?』


 直前に蚊の話ししてるからセーフだ!


 でも薬がないとかありえるのかよ……?

 どうなんだろう?

 最初からポーションという完成形があったとしたら、薬学は発展しないか?

 薬学が発展しないから栄養学も発展しなかったのか?

 学者じゃないからわからんけど、そんなもんなのかもな。


 なんだか歪な世界に感じるけど、前世と比べるからそう思うのかもしれん。

 ここはアメリカじゃなくてステイテッドという異世界なんだから。

 それを改めて認識しながら、俺は間寛平氏の「かいーの」のギャグをしながらマダムの追求を逃れるのだった。



お読みいただき誠にありがとうございます!


先日1日あたりのPV1っていう日があって、もう読んでもらえてないんだと凹んでいたら、反映されていなかっただけでした。でも読んでもらえない辛さは体験できましたので良い経験でした。


でも出来れば沢山読んでもらいたいし、評価されたい!!w

ということでブックマーク感想、下の☆を★にして評価のほどよろしくお願いいたします!

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