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2章13話 「推理中は誰もが心に探偵を宿しているって話」


どうもこんにちは、キアーラ・カサッツァです。

社会に出ると、その時々でシーンにあった自分というのを演出する事が必要になってきます。上司に対する自分、取引先に対する自分、あんまり仲良くもない同僚に対する自分。

この使い分けができないと、付き合いづらい奴として出世できなかったり飲み会に誘われなかったりします。俗に言う空気読めない奴ですね。

仕事の時と遊びの時のテンションが同じっておかしいですもんね?

ですから推理パートで探偵のペルソナをかぶるのは至極当然な事だと思うのです。



ババーンとキメ顔で俺が発表するも皆の反応はイマイチだ。


「……水溶性? の食物繊維?」


未知の言葉に皆が首をかしげる。

解せぬ。

そうだったのかー!っていうリアクションが欲しかったんだけどな。

せっかく引っ張りに引っ張って発表したのにな。


俺が残念に思っているとルナが覗き込んでくる。


『興味が無いことを引っ張られるのは退屈だね?』


お前は興味ないかもだけど、皆さんは興味津々ですぅ。

そのはずですよ? そうだよね?


あと探偵って結論をいつまでも言わないじゃない?

その方が盛り上がるという証拠だよ?

つまり引っ張りに引っ張った方が面白いんだよ?

そうなんだよ?


「それはどんな食べ物なんですか?」


俺が深い悲しみに包まれそうになっていると、フレアさんが聞いてくる。

興味があるんですねそうですね?!


「いくつか候補はありますが、今回はトントンさんに馴染みの深い物でいこうと思います」


「まぁ私に? なにかしら♪」


トントンさんが楽しそうに聞いてくれる。

口元を手で隠して驚いた仕草もしてくれる。

良い、リアクションですよ?


「トントンさんの仕事道具であるローションの原材料!」


水溶性の食物繊維を含んで、トントンさんの仕事道具の原材料といえば?

そうだね!


「海藻でいこうと思います!」


水溶性食物繊維が含まれてる食物はほかにもあるんだろうけど、パッと思いつかないし、ローションがあるなら海藻もあるはずだからね。

ババーン!っと発表するとフレアさんが記憶を探るように天井を見ながら呟く。


「海藻ですか? なんでしたっけ?」


あれ? 海藻を知らないですか?

そんなバカなと俺が訝しんでいると、トントンさんがハイハイと手を上げて答える。


「海の浜辺に打ち上げられているゴミみたいなものよ♪

昔食べたけど、あんまり美味しくないわ♪」


ゴミって……。

打ち上げられてるのはそう見えるけど。

味も単体だと少ないけどさぁ。

そしてゴミ見たいと思いながらも食べたことがあるんですね。


「ええ、そんな物を食べるんですか?」


ほら、フレアさんが不満げで不安げな表情になった。


「ローションって海藻からできてたのね♪」


トントンさんが意外だと言う表情をする。

エンドユーザーは思いのほか原材料とか知らないのかね?


「何故、海藻が必要で、何故海藻なのかしら?」


言外に他にないのかと言うのを漂わせながらマダムが聞いてくる。

……海藻はゴミじゃないんですよ? 美味しいですよ?

俺がそう言うとみんな微妙に納得していない顔をしているが、話の続きを聞いてくれることになった。


「えぇ〜まず、今回引っかかったのはポーションで一時的に治るのに、また肌荒れが発症するというところでしたぁ」


俺は気を取り直しながら探偵よろしく歩きながら解説する。

キキ畑任三郎、大復活!


「ポーションで治ったなら、完治しなければおかしいんです。

ポーションの効果は効くか効かないかのどちらかですから。

でも今回は再発するといいます。

何故完治しないのか? フレアさんわかりますか?」


正解を出せなさそうな人に質問をしておいて、違いますと小馬鹿にしたように言うという、どこの探偵でもやっているムーブを俺もする。


「原因が継続して作用しているからでしょうか?

怪我をした場合も体内に異物が残っていた場合、一度は治ったように見えても、再度傷口が開く事があります」


即答するフレアさん。

……うん。この人そういうところは優秀なんだった。


「その通りです。まぁ、誰でもわかる質問でしたね」


思い通りにならなかった時の小物ムーブも忘れない。

さらっと早口で流すのが作法だ。

メリット? そんなものはない。そう言う決まりなんだ。


「私はトントンさんに触った時にお腹に違和感があったため、腫瘍などの病気が原因ではと疑いました。しかし医者は健康であると診断したと言います」


俺はキョトンとした表情のトントンさんを手で指し示す。



自問自答も名探偵の責務。

大げさに身振り手振りを添えるとなおよし。


「私は次の確認をすることにしました。それは衛生環境と生活環境、そして食生活です」


結論を早く言えばいいのにもったいぶるのは名探偵の宿命。

一応みんなが確認して楽しんでいるのを確認して続ける。

冷めた目をしていたら切り上げるところだった。


『どちらかと言うと生温かい目だと思うよ?』


冷たくないなら良し!

それにフレアさんはふんふんと真面目に聞いてくれている。


「肌荒れは不衛生な環境、寝不足などによっても引き起こされます。

しかしこれも問題ありませんでした。毎日の沐浴と清潔な職場環境。

適度と言うには多少ハードですが、運動も十分に行っている」


あれを運動といってもいい物かな?

上下運動っていうから運動か。


「となれば残るのは食生活でした。そして皆さんの食事風景を見て謎は全て解けたのです!」


ドヤァっと天井に人差し指を突きつけサタデーナイトフィーバーのポーズでインパクトを演出。


「おぉ〜」


パチパチとフレアさんが拍手してくれる。

純粋に楽しんでくれている模様。

マダムとトントンさんもリラックスしながら観覧中。


「皆さんは肉料理ばかりを食べて、野菜を食べてませんでした。

水も飲まず、そして誰もが食べるのが早かった」

さりげなくフレアさんの正面に回り込みながら見栄えのいい位置を調整。


「そうですね?!」


そしてズビシッとフレアさんに指を突きつける。

まるで犯人を名指しするときのように!


「はい、まぁ言われればそうかもしれません」


「それは何故です?!」


理由なんてないだろうけども勢いで聞く。

あたかも答えられない事が悪いかのようにするのがコツだ。

そうする事でずっと俺のターンにすることができる!


「何故と言われても……」


もっともな返答をするフレアさん。

ちょっと困った顔をしているのが可愛い。


『君はなにと戦っているんだい?』


なんだろう? 沈黙と静謐?


『なぜ……?』


なぜだろうか?


「一応理由はあるわよ?」


俺が自分の謎のテンションの謎を自問していると思わぬところからの返答があった。


「あるんですか?!」


まさかのマダムだ。


「そうね。お肉の料理が多いのも、野菜を食べないのも水を飲まないのも食べるのが早いのも全部同じ理由ね」


マダムの表情に心なしか影がさしたような気がする。


「スラム出の子が多いからよ」


淡々と述べるマダム。


「お肉が多いのは、食べるものがなくて飢えていた頃を思い出さないように」


トントンさんからも笑顔が消え俯きがちになった。


「野菜がないのは、道に生えていた草を食べて生を繋いでいた頃を思い出さないように」


フレアさんが唇を噛みしめる。


「水を食事中に飲まないのは、水だけで空腹を紛らわせていた頃を思い出さないように」


胸に手を当てながらマダムは更に告げる。


「そういう思いからの食事」


そう言うマダムの表情から、真摯に店の娘たちを思う気持ちが伝わってきた。

俺がそれを茶化したようで何か悪いなと、そう思い罪悪感を覚えていると、マダムが続けて言ってきた。


「その食事が今回の原因だと言うなら。探偵さん。私が今回の犯人です」


まるでそれは犯人が罪を告白するようで……っていやさっき、聞いた内容なんだけどね?!


「「ふふふ」」


俺が突っ込むとマダムとトントンさんが二人で笑い出した。

フレアさんはきょとんとした顔をしているけど。

あぁ〜、いつのまにか俺のターンが終了していた。


「あと、食べるのが早いのも、そうしないと盗られてしまう頃の名残よ?」


ウィンクしながらそう言うマダムはとてもお茶目だと思う。

それもさっき聞いたし。

言っていることは重いけれど。

その重い話を深刻な話にならないように俺の茶番に付き合ってくれたわけだから。


「でも、それが彼女たちに悪影響を及ぼしているなら、早急な改善が必要ね」


マダムは真面目な表情でいう。

トントンさんもウンウンと頷いている。

フレアさんも頷いているがあれは分かっていない顔だな。


「ありがとうござました。よく分かりました」


俺も真面目な顔で返答する。

そういう立派な理由が原因だったのであれば是非もない。

今までの食生活を維持したままで、改善して見せましょう!


「俺はデザートに寒天ゼリーをプラスし、さらにスウィートポテトを召喚するぜ!」


お読みいただきまして誠にありがとうございます!

おかげさまでpvが10000を超えました!

皆様のおかげでございます!

感謝感謝です!

今後ともよろしくお願いいたします!

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