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2章12話 「怪しくないですよ? 大丈夫ですよ?って話」

うわぁああああ!!!

ごめんなさいぃいい!!

ちこくしましたぁあ!!

 


 どうもこんにちは、キアーラ・カサッツァです。

 現代の地球では目に見えないものを信じるのはなかなか難しい事だと思います。

 しかし昔は目に見えないものほど信じられてきたと思うんですよね。

 八百万の神様だったり、呪いだったり妖怪だったり。

 そういうものが信じられなくなってきたのは、それを人間が悪用したからではないかと思います。

 つまり本当に詐欺は憎むべき行為です。結果的に顧客の財布の紐が硬くなるんですよ。

 そのせいで割りを食うのはいつも善良で勤勉な企業です。

 詐欺の刑罰をもっと重くするべきだと思います。



「コレを食べれば美しくなる。コレを食べれば若返る。

 大昔から何度となく世の女性に希望を与えてきた魔法の言葉。

 そして数限りない落胆を生み出した言葉でもあるわ」


 俺の言葉にマダムが眉をひそめながら言ってくる。


「私にはこのパピヨンを束ねる責任があるの。

 いくらキアーラちゃん相手でも、そんな詐欺まがいの話は聞けないわね」


 マダムが条件反射的に毅然とした態度で断固拒否を表明してくる。

 少し驚くくらいに厳しい顔だ。


 この世界でも美容と詐欺は深い関係にある様だな。

 前世でも、なんですぐに嘘とわかる文言に騙されて、あんなにクソ高いものを買うのかと不思議に思った事は何度もあったし。

 友人に勧められた美容品を試して無駄だったとか、肌の荒れが悪化したなんて事もよく小耳に挟んだもんだ。


「ん〜っと、そんなに大袈裟な話ではなくてですね……?

 薬膳はそういう若返りの魔法みたいな話じゃないんですよ」


 薬膳っていうのはどっちかと言うと、そんな大げさなものじゃなくて、当たり前に必要なものを当たり前にちゃんと摂取しましょうって話だからな。


「だから詐欺みたいな話でしょう?」


 なんだかマダムが辛辣だぞ?

 そんなに眉を顰めたらシワになっちゃいますよとか言ったら、涅槃に送られてしまうんだろうか? まだ旅立ちたくないのでここは別のことを言う。


「いや、詐欺じゃないですって。そこそこアホの自覚はありますがね?

 いくらなんでもマダム相手に詐欺をかける程アホではないですよ」


 眉間のシワを見たあたりから、目つきも鋭くなってきたので急いで弁明する。

 自分を下げて相手を持ち上げる日本人の必殺外交技、謙遜!

 なお、外交相手には効かない模様。


『アホの自覚があるんだねぇ?』


 ジャパニーズ揉み手を追加で発動していたところで、ルナから茶々が入る。


 誰がアホだ。リップサービスだよ。


『じゃあ、自覚がないんだね……?』


 悲しげな表情をしながらルナが言ってくる。


 覚えがないものは自覚しようがないな。

 だからその同情する様な目をやめるんだ。

 そしてマダムの目は厳しいままだ。


「ふぅ。大体、マダムに詐欺を働くような虫以下の知能を持つ奴なんてこの世にいないでしょう?」


 言外に言いがかりだよって事を俺は肩をすくめながら主張する。

 こっちの心理をほぼ完全に読んできて、なおかつコントロールできる人に詐欺をかけるとか、自分の手札だけを公開してババ抜きする様なもんだろ。

 少しでも知能があったらするわけがない。

 そう思うとちょっとムッとしちゃうね。


 こちらも遺憾であると言う表情を見せると、マダムの表情が今度は困った様なものに変わる。


「……」


 え? そんな奴いるの? マジで? 虫より知能ないの?

 そいつ詐欺の才能なさすぎるよ。


 俺がマジ驚愕してるとフレアさんが説明してくれる。


「やはり私たちは女性の集まりですから、御し易しと思って侮る人も一定数いるのですよ。

 勿論そういう方達には分からせ(・・・・)ましたけど」


 何を分からされたんですかねぇ? 怖いですね怖いですねぇ。


 しかしそうか。そんなアホが出るって事はマダムの恐ろしさは周知の事実ってわけでもないのか。流石に知ってたら詐欺なんてしないだろうし。

 知る人ぞ知るって感じなのかな?


「そんな突き抜けた馬鹿と一緒にされるのは甚だ心外ですが、まぁマダムの言うこともわかりましたよ」


 まぁそうなると、マダムが警戒するのも責任者としての責務って事なんだろう。

 なら俺は営業としての責務を果たすまでよ。


「先ほども言った様に人間は生きていく上で摂取しなければならない栄養が沢山あります。

 それらを摂取する事で人間の体は十全にパフォーマンスを発揮するわけです」


 昔取った杵柄でプレゼンテーションを試みる。

 資料がなく口頭での説明だけなのが惜しまれるな。


「そして薬膳は日常の食事で、その人の体に足りない栄養を補おうと言う考え方なんです」


「私たちが普段している食事は不完全であると?」


 マダムがムッとしたように言う。ちょっとほっぺを膨らませてて可愛い。

 綺麗で可愛いとか最強かよ。


「完全なんて不可能ですよ。何事もね。だから俺はその人に今一番必要な食べ物を紹介提供しようと思います。例えば今回のケースで言えば、ある栄養が足りないのと生活の環境が作用して便秘になりました。なのでコレを食べてみてくださいってな感じにね」


「……なるほど。そして貴女はその食べ物を紹介する事で金銭を得ると言うことね?」


 少し考えてマダムが言う。

 流石に話が早い。


「でも、本当にその薬膳で美しくなったのか証明するすべがないわね?」


 そして理解が早い。

 この商売の弱みをすぐに把握してきた。


「そうですね。個人差がありますから」


 美しくなったかどうかは主観だし、体調が良くなったかどうかも本人しかわからない。

 本人が効果がなかったといえば実際に効果があっても詐欺のそしりを免れないだろう。

 健康なんて目に見えないものだからな。


「だからこの商売に一番必要なものは信用です」


 この人が言うなら本当なんだろうなと言う信用がいるのだ。

 それも効果がなくても、たまたま体質的に合わなかっただけと思ってもらえるような、効果がなかったと騒がれても大丈夫なほどの強力な信用が。


「それがあなたの言う下心ね?」


 マダムが得心いった様に頷いた。


 俺も最初は商売の話までにするつもりはなかった。

 知り合いのちょっとした困り事に軽くアドバイスをするくらいの気持ちだった。

 実際にマダムが言ったように問題点があるから商売にならなかっただろうしな。


 だが、パピヨンにいる女性の覚悟をみて理解できた。

 美に対する前世の女性達の執念と、今世の女性の執念が言葉でなく心で理解できた。

 これを逃す手はないと。


「この商売に関しては俺だけでは絶対にできない。

 信用がない、販路がない、実績がない」


 ナイナイ尽くしのオンパレードだ。

 だけど、自他共に認める超一流の美の化身が太鼓判を押してくれたら?

 その美の秘密の一端を自分も握れるかもしれないと世の女性が思ったなら?

 絶大な効力を発揮するだろう。


「よくわかったわ。あなたがこの知識を私に教えた理由も、なぜ私だったのかも」


 だけど、とマダムは続ける。


「商売の後ろ盾になるなら簡単には協力できないわ。わかるでしょう?」


 試すような問いかけに俺は頷く。


「分かってますよ。だから俺は興味があるかと聞いたんです」


 いきなり言われても受け入れられないのは百も承知。

 だからまずは体験してもらおうと言うわけだ。


「……そうね、そうだったわ。確かに貴女はそう聞いたわね」


 マダムが自分の早とちりだったことに気づき、恥ずかしそうにはにかむ。

 その表情だけで許せちゃう。

 マダムが条件反射で断っちゃうくらい頻繁に詐欺を仕掛けてくる奴がいることも分かったしね。


「ちなみにですけど、詐欺を仕掛けてくる相手は誰なんです?」


 何気ないふりをして聞いてみる。

 まぁ、商売敵になるかもしれないからな、俺がマジで聞きたがっているのは筒抜けだろうけど。


 だが、俺の問いかけにマダムは思い切り苦虫を噛み潰したような顔をした。

 どんだけ嫌いなんだよ。嫌悪感がハンパないじゃん。


「……詐欺まがいって言うだけで、詐欺ではないのよ。

 効果をうたっての商売ではないから。ただ利用者が勝手に喧伝しているだけ

 だから相手の名前を無責任に伝えることはできないわ」


 ははぁ。上手い手だな。

 カルトとか悪徳セミナーの手段ぽいけど。


 それにとマダムが続ける。


「不思議とね、周りの人がそう言っているからと、信じていると効果が出たりするのよね。

 そして私に話を持ってくるのはそんな純粋で悪意のない人達」


 ため息をつくマダム。

 プラシーボ効果って奴だね。


「実際にはただの水なのにポーションのように効果があるとかかな?

 売る側は特別な水とだけしか言っていない。

 でもみんなが効くと言っているし、ポーションより安いから試しに買ってみようか?

 おや、効いたぞ本物だって感じですかね?」


 異世界だろうと何だろうと考えることは同じだろうとアタリをつけたが当たりだったようだ。


「……貴女が首謀者?」


「そんわけあるかい!」


 胡乱げな表情なマダムについツッコミを入れてしまう。


「やっぱり私に詐欺を仕掛けようと……」


「振り出しに戻ったじゃん!」


「今日は相談したい事があって来てもらったの」


「最初に戻ったじゃん!」


「妄想科学戦隊おっぷるぱいって何?」


「掘り返すじゃん!」


「なんでソファで何度も座ったり跳ねたりしたの?」


「掘り返すじゃん!」


「便秘の解消をもってして、薬膳の効果検証とするというわけね?」


「本題に戻るじゃん! そうです! 同時に詐欺じゃないアピールも兼ねてます!」


「ふふ……うふふふ、あはははは」


 抑えようとしていたマダムだが、抑えきれずに笑い出す。

 よほど面白かったのか暫く笑ったままだった。


 むぅ、笑われているのかウケているのかそれが問題だ。


 本当に楽しそうに笑うマダム。

 楽しんでいただけたなら幸いだ。


 しかし、楽しそうか……。

 当たり前だがマダムは俺の前世の父親に当たる人物とは違う。

 同じような能力を持っているが、奴なら楽しむなんて事はありえないからな。

 そんなつまらない事を認識しているとルナから声がかかる。


『まさか彼女も、自分が男と、ましてや父親と比較されているだなんて思わないだろうね?』


 人の口から聞くとキモいな俺。

 これだけの美女に父親重ねるなんて、ロリに母親を見る赤い彗星よりもヤベェ。


『大差ないとおもうよ? あと父親の呼び方が回りくどくて鬱陶しいね?』


 その辺はお前、俺の繊細な過去にまつわる部分なんだから触れるんじゃないよ。


『以後、省略して前世の父親、前世の家族と呼ぶようにね?』


 いや、聞きなさいよ。こだわりが見え隠れしてんでしょうが、その辺に。


『他人のこだわりほど価値のないものはないよね?』


 他人じゃないでしょ! 一蓮托生でしょ!


『ある意味託生だけど、一蓮ではないね? 一異世界託生かな?』


 語呂が悪い!

 ルナと掛け合いをしていると、マダムの笑いが収まる。


「ふふ、あぁおかしい。こんなに笑ったのはいつぶりかしら?」


 目に涙を溜めながらマダムがまだ可笑しそうにしている。

 それをフレアさんとトントンさんが驚いたようにみていた。

 きっと声を出して笑っているのが珍しかったんだろう。

 そして俺は着衣の乱れた胸元を見ていた。

 きっと胸が揺れているのが嬉しかったんだろう。


「ごめんなさいね? 打てば響くような切り返しが新鮮で、楽しくって」


 さっと着衣を整えながら言ってくるマダム。

 もう俺の視線はバレバレだから隠さなくてもいいかもね。


『いや、それは失礼が過ぎると思うよ?』


 あ、やっぱりそう? じゃあ引き続き自分なりに誤魔化しながら見ていこう。


「マダムも声を上げて笑うんですね……」


 フレアさんかつぶやくように言った言葉にマダムが反応する。


「あら、私だって人間ですもの笑いもするわよ?」


 そう言いながらもふふと笑う。

 それを見たフレアさんは暫く見とれたあと、バッとこっちを向いて尊敬の眼差しを向けてくる。


「キアーラさん! さすがです!」


 もう、俺を見る目がイカれて来てる。

 尊敬とか好意とか〇欲とかで濁ってるんだか澄んでるんだか分からん。

 あれかな? もう受け入れたほうがいいのかな?

 でも痴情のもつれENDは嫌だな。


「マダムも楽しそうに掛け合いしていたものね♪ キアーラちゃんならではね♪」


 トントンさんもニコニコ笑顔で言ってくる。

 まぁ、マダムと漫才する奴なんてそうはいないだろうからな。

 新鮮と言うならそうだろう。


「まぁ、友達ですからね」


 その言葉に益々ニッコリするトントンさん。

 マダムもニッコリするのが見える。

 そして友達というキーワードにもう一回ハッとするフレアさん。

 もうええっちゅうねん。


「話を戻しますけど、トントンさんの悩みを解消するついでに薬膳の効力を証明しますから」


 俺は仕切り直すと、フレアさんはしょんぼりする。

 可愛いけどさぁ。


「今回の場合は何を食べるのかしら?」


 トントンさんが自分が食べることになるであろう聞いてくる。

 変なものを食べさせられないか心配なのだろう。


「美味しいといいわね♪」


 味の心配だった。

「ねぇ?キアーラちゃん、美味しい?♪」


「美味しくなるように工夫します」


「やった♪」


 ガッツポーズをするトントンさん。

 見ていて微笑ましい気持ちになる。


 さて満を持して発表しますか。


「今回のケースで必要な栄養素というか食べ物は、水溶性の食物繊維です!」


本当に申し訳ありません。

大遅刻いたしました。


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