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2章 3話 『秘密を暴くのはポロリの瞬間って話』

 

 どうもこんにちは、キアーラ・カサッツァです。

 語るに落ちると言う諺があります。

 人から質問された時は頑張って秘密を守っている人でも、自分から話をしている時にポロリと秘密をしゃべってしまうものだと言うものです。

 全然関係ないですけど、ポロリと聞くと卑猥に感じるのは私がおっさんだからでしょうか?



「なんだこれ?」


 ノックの音に玄関の扉を開いてみれば、目の前にはピンク色の壁ができていた。

 それも布って言うかフリルでできた壁。

 入り口を完全に塞いでいる。


「ほんと、なんだこれ?」


 誰がなんの目的でこんなことを……?

 よくみるとフリルが嵩張っててわかりにくいが、多分球体の何かだ。

 何を言ってるかわからないと思うが、俺もサッパリ分からん。


 触ってみるとほのかに暖かく柔らかい。

 クセになる柔らかさに、グイグイと手のひらを押し付けているとプルプルと震える。


「きゃん♪」


 おう? なんだか可愛らしい声がしたな。

 そう思って上を見てみるが、顔を上げてもあるのはフリルの壁だ。

 丸みを帯びているため頂点は窺い知れない。

 仕方ないので視線を下の方に向けると、その球体からは足が生えていた。


 白いニーハイにピンクのパンプス。

 絶対領域からは、こぼれ落ちるのではないかと思える程に肉がはみ出てる。

 ぶっとい足にフリルをあしらった布を纏った球体が乗ってる。


「人……か?」


 声がするし足も生えてるし。

 いや、昔見た不思議の国のアリスに出て来るハンプティ・ダンプティかもしれん。

 すごく丸いし。卵の獣人?

 とすると、この辺に顔があるはず。

 そう思い目の前の物体をまさぐっていると、球体の下部あたりで違和感を覚えた。


 なんか……しこりのようなものが?


 気になって少し強めに押してみると、またも頭上から声が聞こえ、球体が俺から離れるように飛びのいた。


「きゃううん♪」


 ドスンという音とともに球体が着地すると、安普請のアパートが揺れ、俺はバランスを崩して尻もちをついてしまう。


「うひゃ!」


 尻をぶつけた痛さについ声が出てしまった。


 くそ、幼女は頭がデカくてバランスが悪い!

 転んだ恥ずかしにそう悪態をつくと、ふと顔に影がかかる。


「あらぁ、大丈夫〜?」


 その声に視線をあげると、視界いっぱいに人の顔があった。


「うわぁ!」


 驚いた俺は情けない悲鳴とともに尻もちをついたまま後退り(あとずさり)をする。

 だが、後退したことで奇しくもハンプティダンプティの全容が明らかになった。

 卵の獣人かと思われた人物は巨大なゴスロリ服の女性だった。

 女性に巨大と言う形容詞もなかなかに失礼だが、とりあえずその他のうまい言葉が浮かばない。


 当の本人は俺が驚いて後退りした事を不思議に思ったのか、可愛らしい仕草で小首を傾げている。


 いや、突然目の前にでかい顔が現れたら誰だって驚きますよ?


「ん? ゴスロリ?……あれ? その服って?」


 ふとその女性を見てみると、その大きな身体を包む衣装は俺が先日、自分用に仕立てゴスロリ服に似ている。フリルが沢山あしらわれているドレスはこの世界にもあるが、スカートの裾を短くして足を出しているところや、フリルのあしらい方などがそうだ。

 まだこの世界には発生していない新デザインのはずなんだが……?


 俺の視線が服装に移ったのがわかると、巨大な女性は胸の前で手を合わせるとピョンと飛び上がる。(そして着地の振動でアパートが揺れる)


「見て! 可愛いでしょ、この服♪

 この間、貴方がこの服を着ているのを見てティンときちゃったんだよね!

 絶対この服は私に着られたがっているって♪」


 そう言いながら再度飛び跳ねる巨大な女性(いい加減失礼)。


『……アパートが崩れても君の命は守るから安心していいよ?』


 他の人間に見えぬよう半透明になり再び現れたルナが、真面目な顔で言ってくる。


 冗談でもそんなこと言うんじゃない! シャレにならんだろうが!

 ……冗談だよな?


 肩をすくめるルナに、そこはかとない恐怖を感じ改めて女性を見る。

 巨大な壁だと思っていたのはどうやら彼女のお腹だったようだ。

 あまりの大きさに、俺の身長では見上げても顔が見えなかっただけらしい。


 身長は2m近いのではないだろうか?

 王虎やゴロッリオといい勝負をしている。

 だが、何より目を引くのはその横幅だ。

 俺は最初ハンプティダンプティを連想したが、あながち間違いではなかったかも知れない。


 一言で言うと、まんまる。

 お腹に脂肪がたくさんついていて、首から下が球体の様相を呈している。

 その上に体格に見合った大きな顔が乗っかっている。

 顔だけで俺がひと抱えするくらいあるな……。


 だがその大きな顔に反して、目はつぶらでぱっちりしており、見つめられるだけで温かい気持ちになれるような愛嬌がある。

 鼻筋もシュッとして高く、唇も適度に厚く魅力的だ。

 全体的に大きな人(オブラート表現)だが、誰の目から見ても、この人が美人さんであることは間違いないのではないだろうか?


 そしてきになるのは頭にある獣耳。

 なんだろう? ピンク色でピンと立った大きな耳だ。

 葉っぱのような形をしている。絶対見たことがあるんだけど何の耳だったかなぁ?


 俺が彼女を観察している間にも、女性はゴスロリ服がいかに可愛らしく、世間の女性が待ち望んだファッションであるかを力説している。そして度々感極まって飛び跳ねている。


 そろそろ本格的にアパートが心配になってきた。

 大体この人は何しに来た、どこの誰なんだ……。

 この前ゴスロリ姿の俺を見たってことは、あのビンゴ大会の日にあの場にいたってことか? いたかなぁ? 一目見たら絶対に印象に残ると思うんだけどなぁ?


 そう思いながらも女性の興奮を収めるべく声をかけようとすると、それよりも早く彼女に声をかけるものがいた。


「トントン姐さん! いつまでも入り口に立たれると私が中に入れません!」


 どうやらこの人はトントンさんと言うらしい。

 そして彼女と一緒に来たであろう人物の声に聞き覚えがあった。


「フレアさん」


 俺が声をかけると、入り口を塞ぐトントンさんの横から、彼女の肉をかき分けるようにフレアさんが家に入ってくる。


「キアーラさん!」


 彼女は俺の姿を認めると花の咲いたような笑顔を向けてきた。

 彼女の笑顔を見ると俺も優しい笑顔になる。

 きっとそれは友達だからだろう。

 たとえそれが入り口の枠とトントンさんの肉に挟まって動けなくなっていたとしてもだ。


 決して彼女の残念さに磨きがかかっているからでもなく、無理やり隙間に体をねじ込んだために、Yシャツのボタンが弾け飛んで胸元が大きく開き、赤い下着が見えたからでも、谷間が鮮明に見えるからでもない。


 これは友情からくる笑顔なのだ。


『君のそれが友情だと言うなら、世のヒーローは皆排斥の対象だろうね?』


 静かにしたまえ。私は今、友情を確認しておるのだ。

 一生懸命抜け出そうと奮闘するフレアさんの動きに合わせて、友情()も前後左右に奮闘している。


『確認しているのは彼女の胸だよね? 悪魔の僕が言うのもなんだけれど、有り体に言って君はゲスだね?』


 胸の下で腕を組んだルナが俺を軽蔑した目で見下ろしてくる。


 ……なんか、エロとか変態って言われるのはいいけど、ゲスって言われると心に刺さるものがあるな。ちょっとよろしくなかったかも知れないと自責の念が湧いてくる気もする。

 ルナのくせに生意気な……。


『だけど、君は僕の胸はみないねぇ?』


 組んだままの腕を上下に動かし、ルナが胸を強調してくるが、俺はそれを鼻で笑ってやる。

 俺の心にはさざなみ程度の揺らぎすら起こらない。

 俺にだって分別はあるのだ。


『分別だって? ただ単に敵である僕に母性を感じないだけだろう? 母性を』


 軽蔑した視線から、途端にニヤニヤとした揶揄する表情をしながら胸を突き出してくるルナ。

 イラっとしたので、確認がてら胸を軽くパシンと叩いてやる。

 ついでに胸をポロリとさせてやる。

 ……ピンク色か。意外。


『あいた! なにをするんだ!』


 柳眉を逆立てて怒りをあらわにするルナ。

 そして胸元を引き下げている俺の手をパシンと叩き落とす。


 ルナは俺を睨みつけてくるが俺は構わずに別の場所を見る。

 そしてルナも俺の視線を追ってハッとする。


 その視線の先にはフレアさんとトントンさんがいる。

 俺が何もない空間(・・・・・・)を叩いて音を出し、そして何もしていないのに俺の手から叩かれた音が出たのを見て、不思議そうな顔をしている二人が。


 ルナに視線を戻すと物の見事に渋面だ。


 えぇ〜、んっふっふ。

 ルナ泉くんはまだ隠し事をしていたようです〜。


 封印したキキ畑任三郎を再度登場させながらもニンマリと俺は笑うのだった。

お読みいただき誠にありがとうございます!


トントンさんは突然閃いたキャラです。

そして閃いたキャラを、すぐに登場させてしまうので人数が増える事になります。

でもご安心ください。殆どが一発キャラのはずですから。

一発キャラのはずのフレアさんが出ずっぱりですが……解せぬ。

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