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2章 2話『因果応報の掟は種族を厭わないって言う話』

 

 どうもこんにちは、キアーラ・カサッツァです。

 善い行いには善い結果が、悪い行いには悪い結果が訪れると言うのが因果応報の考え方ですが、割と悪いことをしたから悪い結果になったと言うときに使われることが多い気がします。つまり現代語に翻訳すると、ざまぁな訳です。



「さて、俺の心情を伝えるとするならば残念。その一言に尽きる」


 俺は珍しく誰もいない子供部屋の窓から、外を眺めながら独り言のようにつぶやく。

 今日は兄さん二人に連れられてポーがお出かけしている。


 ビンゴ大会が終了して数日経ったが、その時のスター☆プラチニスのライブの話にポーがえらく食いついたのだ。


 元々ポーは歌や音楽が大好きで、この世界で一般的なクラシックや賛美歌、最近流行り出しているラグタイムなどもお気に入りだ。


 しかし1番のお気に入りは、たまに俺が口ずさんでしまっている前世の楽曲。

 ポーに限らず何十年か時代を先取りしているアップテンポな楽曲がこの世界の人間には刺さるらしい。

 獣人はその辺りが顕著で、ここ数日間だけでも、ガタイの良いムキムキおっさんどもがアニソンを口ずさんでいる光景を目にするようになった。


 それほどの誘引力があるものを、アカペラではなくきちんとライブで行うとあっては、普段わがまま一つ言わないポーであっても見逃すことはできないらしい。


 天使(ポー)に上目遣いで、モジモジと恥ずかしそうにおねだりされたら、断れるはずもない。

 兄二人の厳重なエスコートの元、スター☆プラチニスのライブへとポーが出かけたため家には誰もいないのだ。


 すでに両親が仕事に出ていたので、俺は用事があるとポーのエスコートを断腸の思いで辞退した。

 俺は振り向き、その用事(・・)に目を向ける。


 そう、俺が大天使(いもうと)ポーのエスコートを断ってまで家に残ったのは、人目のつかない安全な場所で目の前の悪魔(ルナ)と話をするためである。


「なにか、申し開きはあるかね?」


 俺は腰の後ろで手を組むと、珍しく地面に降りているルナに問いかける。

 その姿はこの世界に来た当初よりも、随分とハッキリと視覚できるようになっている。

 その事実が俺の推理が正しかった事を確信させる。


『申し開きしなければならないような事に覚えがないね?』


 さも心外だというように、いけしゃあしゃあとのたまう悪魔。

 怒りよりも呆れの溜息が出てしまう。

 いっそすくめた肩が滑稽ですらある。


「そうかね。俺の記憶が正しければ、先日君は契約を破って、騙し打ちのようにゲームを開始したと記憶しているが?」


 あくまで紳士的に問いかける。

 そうしないと腹の底に押し込めているものが溢れ出てしまいそうだからだ。


『契約を破った? ゲーム開始時期について君と契約を結んだ覚えはないよ?』


 そしてこちらはあくまでしらを切るつもりらしい。

 悪魔だけに。

 既に勝利を確信している俺と、なんとかして誤魔化そうとしているルナ。

 駆け引きが苦手なルナは悪足掻きにもキレがない。

 俺の印象をこれ以上悪くしないために地上に降りているのが何よりの証左だ。


「ふぅむ。確かに。ゲーム開始時期について言及をした事はなかったかもしれないねぇ?」


 ない髭をさするように顎に手をやる。

 今の俺の気分は英国紳士探偵だ。

 一度、意見に賛成するかのように振る舞うのが正しい探偵ムーブ。

 ……探偵ってなんで性格悪く描かれるんだろう?


『そうだろう? 僕があのタイミングでゲーム開始を宣言しても問題ないだろう?』


 そして我意を得たりとばかりに調子が良くなる悪魔は正しい犯人ムーブ。

 少し地面から浮き初めているあたりに、こいつの単純さが窺える。

 その姿を横目に俺は額に人差し指を当てて思案するポーズをとる。


「ふぅむ。そうなると疑問が残るんだ。

 そこのところを解消しておきたい。

 昔から気になることがあると夜も眠れないたちでね?」


 まぁ、昨日もグッスリ寝ましたけれども。


 あからさまな不穏な空気にルナの笑顔に警戒の色が宿る。


「なにも問題がないならだ。

 問題がないなら何故ここ数日、君の気配が一切しなかったのか。

 そういう疑問が残るんだ。どう思うかね? ルナソンくん?」


 もう10年以上も一緒にいれば、たとえ姿が見えなくても気配を感じるぐらいの事は、嫌でもできるようになる。断言できるがコイツはしばらく俺のそばを離れていた。


「この際、君が俺のそばを離れられるという事実を隠していた事は目をつぶろうじゃないか。だがなぜこのタイミングで離れたのか、そこのところはハッキリとさせておきたいなぁ? えぇ? ルナソンくぅん」


 ゲームが既に開始したのなら、こいつ(ルナ)は俺を監視しなくてはいけない。

 俺が裏切られても世界を他人を憎まないかどうか? それが俺とルナの賭けの内容だ。

 ルナは俺が憎しみを抱いているかどうかはわかるみたいだが、裏切られたかどうかは目視で確認というファンタジー要素のかけらもない方法で行う。

 故に四六時中監視が必要だ。


 さらにもう一つの条件である敵対者に殺されたら敗北と言うのもある。

 マフィアのボスになった俺がいつ敵に殺されるとも知れない。

 やっぱり俺を監視していないといけない。


「そうだよな?」


 俺はあえてルナにも伝わるオープンチャンネルで思考して問いかける。


『あぁ〜、うん! あれだ! ちょっと気分を変えて遠くから監視していたんだ。気づかなかっただろう?』


 こいつ……。あぁ、うん、あれだとか言ってるよ。

 言い訳下手かよ。

 早くも犯人は追い詰められている模様。


 しかしキキ畑任三郎は更に追い打ちをかけますよ?

 無意味にルナの周りをぐるぐると歩きながら会話したりする。


「えぇ〜、なるほど〜。気分を変えるために遠くから監視を〜。

 んっふっふ。本当に気分を変えるためだったんでしょうかぁ〜?」


『だからそう言っているじゃないか……』


 はい出た〜。こいつは都合が悪くなると口数が減る。

 攻められるのに弱い悪魔ってどう思う?


「んっふっふ、えぇ〜。それは嘘です〜。ルナ泉くん、それは嘘なんですよ〜」


『誰だいさっきから、ルナソンとかルナ泉とか……』


 ルナがなにやら呆れているが、モノマネが楽しくなってきた俺に向けられたものではないと断ずる事にする。

 しかしながらもうモノマネはやめるとしよう。

 せっかく追い詰めたのに台無しになったからではない。


「お前……体ハッキリと見えてきてね? 肉体を得る権利を放棄する代わりにゲームを始めようとしたくせに、肉体を得初めてね?」


 俺の核心をつく直球にルナの目がそらされる。


「お前言ったよな? 俺の魂が肉体に定着するときの生命エネルギーのおこぼれで肉体を得るって」

『生まれた直後のことなのによく覚えているね?』


 驚いた顔をするルナ。

 記憶力はいい方なんで。


「その代わりに俺の魂が定着するまでは命を守るって言う話だったよな?」


『うん。まぁ……。そうだね?』


「でもお前、いきなりゲーム始めて俺の敗北で終わらせようとしたよな?」


『そんなことあったかい?』


「言うなれば俺を殺そうとしたわけだ」


『その部分に関しては解釈の違いじゃぁないかな?』


「なのにお前は完全受肉に一歩近づいていると」


『……』


「……」


 ルナが沈黙したままになったので、椅子を持ってきて顔を至近距離で見つめてやると、目をそらすどころか首ごとそらし始めた。

 いつものトレードマークである薄ら笑いも引きつりすぎて笑顔なんだかなんなんだか分からなくなってきている。


 ふと、思い立った俺はルナの頭に生えているツノを両手で掴んで見ると、バッチリだ。

 掴める。


『あぁ〜』


 そのままツノを掴んでこちらを向かせると、ルナの顔にバレたと書いてあるかのようなわかりやすい表情だった。


 そっかぁ〜、もう掴めるくらいなんだぁ。


「これは賭けだぜ? お互いにフェアじゃないと成立しない……だったかな?」


 俺が死んだ直後に、真っ黒空間でルナに言われた言葉を繰り返す。


「フェアじゃないと成立しないか〜。成立しないって事はノーゲームって事だよな?」


 至近距離から目を覗き込むように問うと、ルナはあーとか、うーとかしか言わない。


「ノーゲームになったら、当然その肉体を形成する、俺の! 生命エネルギーはお返しいただけるんですよねぇ?」


 俺の!の部分でツノを上下に動かしてみたけど、ルナはされるがままだ。

 悪魔のくせに無抵抗主義。


『……返すのは無理かなぁ?』


 俺の思った通りの回答をするルナ。

 そりゃそうだろうな。今の自分の姿を見られたら、俺がこう言いだすだろうと思ってコイツは数日隠れていたのだから。返せるものなら堂々としているだろう。

 返せないからコイツは困っているわけだ。


「えぇ? 賭けの勝敗が決していないのに一方的に(・・・・)利益を得ているのはフェアじゃないなぁ。

 フェアじゃないと、どうなるんだっけなぁ?

 なんだったかなぁ?」


 俺がわざとらしくたずねると、ルナはグヌヌと悔しそうな顔をする。

 そして、しばらくグヌヌしていたルナが、諦めの表情を浮かべた。


『駄目だ……。契約を確認したが、このままだと本当にノーゲームになってしまう。

 なぜ僕はあのときフェアじゃなければ成立しないなんて言ったんだ……』


 そう言いながらルナは俺から離れてベットにうな垂れるように座る。

 ちなみに俺の手はツノを掴んだままだ。

 着脱式だったねそういえば。

 そして優しい俺はルナの疑問に答えてやるとしよう。


「何故、あのときそんなことを言ったか? それはですねぇ……。

 直前に俺がこの賭けがフェアじゃないからとハンデを要求したからでした!!

 そしてお前は俺からの要求(チート)を断る為にフェアという言葉を使ったのでした!!」


 ざまぁ! 駆け引き弱者の悪魔がまんまとはめられてますぅ!


 芝居掛かった言動を繰り返したコイツがそう言う言い回しをするだろうと思っての誘導だったわけです。何かの足しになれば程度の布石がここに来て役立つとは!

 悪魔側が圧倒的有利なはずなのに5分まで持って行った俺の交渉力は五臓六腑に染み渡るでぇ……。


『はぁ。仕方ないね。一方的に利益を得るのがフェアじゃないなら、君にも利益をって事だろう? 要求を言いなよ』


 俺が腹の底からザマミロ&スカッとサワヤカの笑顔でいると、思いのほか落ち着いた声音で物分かりのいいことを言うルナ。


 なんだ、もっと悔しがるかと思ったのに。

 つまらんやつめ。


 しかし、要求か……。

 そうだな、アレにするかな?


『チートの追加は不可だよ』


 ちっ。頑なな野郎だぜ。

 しかしそうなると悩むな……。

 今回わかった、俺から離れられると言うことと、触れるようになった事を上手く使えないかなぁ?


 と、俺が悩んでいると玄関の方でコンコンコンとノックの音がする。


「ごめんください」


 ん? 誰じゃらほい?

 ルナに目線で引っ込むように言うと俺は玄関へと向かったのだった。


お読みいただき誠にありがとうございます!

PVが5000を超え、ユニークアクセスが1500人を超えました!

感謝感激雨アラレちゃんです!ありがとうございます!!


引き続き本作をよろしくお願いいたします!


あと、もしちょっとでも面白い! 続きがきになる!と言う方がおられましたらポイント評価とブックマークもよろしくお願いいたします!


感想なども随時受け付けておりますので、よろしければ、そちらもお願いいたします!


作者にとってとてつもない励みになります!

引き続き頑張っていきます!

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