表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/152

44話『人だろうと神だろうとナメたらあかんぜよ!って話』

 

 どうもこんにちは、キアーラ・カサッツァです。

 人間第一印象でその後の関係が大きく左右されるとよく言いますが、それは過去にその印象を持っていた人がこうだったと言う経験則に基づいているのではないかと思います。

 嫌な奴と印象が似ていたら付き合い考えますものね。


 突如として現れた笑顔の美女。

 10人中20人が振り返るほどの美貌。

 そんな美貌の人が舞台の上で俺と対峙している。


 彼女に笑いかけられれば誰でも相好を崩して好意を向けるだろう。


 だが俺はその笑顔の瞳の奥に前世での父親と同じものを感じた。

 感じたから背筋に冷たいものが流れる。震えがくる。


 確かに顔も目も笑っている。

 目だけが笑っていないなんて事もない。

 完璧な微笑み。

 ダヴィンチが黄金律を持ってして笑顔を描いたとしたら、この笑顔になるだろうと思えるほどの誰もが認める最上の微笑み。


 しかし俺にはわかる。断言したっていい。

 あれは相手を観察して自分にとって有用かどうかを見定めている目だ。


 使えるのか使えないのか。

 使えるならどの程度の利益をもたらすのか。

 使えないなりにも利益をもたらすのか。


 冷静に冷血に一欠片の過不足なしにこちらの価値をはじき出す目だ。


 だがその程度だったら俺だってビビったりしない。

 取り繕うのが上手い冷たい奴だと思うだけだ。


 ___恐ろしいのはそこじゃない。


「ビンゴシートは最小で1枚からご購入いただけますが、ビンゴを楽しみたいなら複数枚買われることをお勧めしますよ。色々と付加価値もございますので」


 俺はマダムに引きつった笑顔を浮かべながらも自己(・・)アピールを行なう。


 俺の笑顔が引きつっちまうのはその能力ゆえだ。

 チートや異能と言う意味ではなく、ある技術力にビビっている。


 もし俺の行動や王虎とフレアさんの行動がマダムの思惑通りに進んだとするならば、そしてそれを狙ってできるというのなら、この人は恐らくこの間にも俺を観察しているはずだ。


 そして彼女は少し観察しただけで、こちらのことを何でも見透かしてくるだろう。

 考えていることはおろか、こちらが考える前の段階、次は何をしようと思っている時にはすでに次の動きを予見している。その行動がどういった結果をもたらすのかも読んでくる。


 そしてその上で、こちらが自分の思い通りに動くように完璧に誘導してくる。

 自分で考えて行動したつもりなのに、いつのまにかそうなっている。

 そういう技術をこの人は持っているはずだ。


 それが俺には恐ろしい。


 今も何人かの男に笑顔を向ける事で、ほんの少しそいつらが身じろぎした。

 そのほんの少しの動きを制御し、マダムに近寄ってこようとしていた別の男の進路をパズルのように妨害し塞いだ。

 一人一人の動きが数センチでも、その動きが重なれば大きな結果になる。

 バタフライエフェクトだったか? 少しの動きが大きな結果に結びつくってやつだ。


 その行動と結果を人々が見たならば、まるで神のように心を読み未来予知をしていると、そう思うだろう。

 そして一度そう思ったら、あとは(こうべ)を垂れるのみだ。

 人は神には敵わない。


 だが俺はそれが決して神の所業ではないことを知っている。

 だからこそ恐ろしい。確固たる技術として人の身で人を操れることが恐ろしい。

 神の奇跡のように気まぐれな結果にはならない。

 人の意思で奇跡のような所業をなすのだ。


 マダムは大勢の人間からの視線も俺の引きつった笑顔も気にすることなく、徹頭徹尾笑顔のままで俺に答えた。


「まずは個人的に楽しむつもりなので1枚だけ買わせていただくわ。今後は分からないけれど」


 ……え?

 …………1枚?

 フレアさんを送り込んできて好き勝手やらせた挙句に1枚?


 俺を支配していた体の震えが一瞬止まり、今度は違う種類のものに変わった。


 いや、それはないでしょ。


「あら?」


 マダムが怒りプルプル状態の俺を見て意外そうな声を上げたがアイドントノー。


 さっきのやり取りは勿論純粋にビンゴシートの売買の話をしているんじゃない。

 このビンゴシートは推しのメンバーの人気投票という側面を持っているのだ。

 つまりこのキアーラ・カサッツァから何枚のビンゴシートを買うのかという質問は、当然どれだけパピヨン総支配人のマダムは俺を買っているのですかという意味になる。


 今回、あなたが仕組んだことに対して、何点をつけるんですかとそういう意味な訳だ。


 マダムだってその真意をわかっているはずだ。

 そうでなければわざわざ俺のところにシートを買いにくるまい。


 だのに、なのに1枚とくる。

 0点ではないけど、高得点でもないと。


 しかも総支配人としての購入ではなく、個人で購入ときた。

 まだパピヨンとしては商売できる相手ではないと。そう言う宣言ですね?


 俺たくさん買ったら楽しめますよって付加価値色々ありますよって言ったよね?

 他の人も聞いてたよね? だってアヴェルラのお客さんが、付加価値の楽しめるってどういう内容ですかって鼻息荒くアヴェルラに聞いているもの。

 そしてエロいのはやってないって言われてがっかりしてるもの。


 ここでの楽しめるって言うのは損はさせませんよって事で、付加価値っていうのは儲かりまっせって言う意味な訳。

 それを最小ロットで応えるのは、興味がありませんと言っているのに等しいと俺は思うわけだ。


 なんかさぁ、随分とアレじゃない?

 勝手に部下送り込んできて、勝手に自分もやってきたのにわざわざ興味ありませんアピール?


 何しに来たの?

 マウントとりにきたの?

 悪役令嬢ムーブなの?


 まぁ実際のところ、俺の前世に生まれていればその美貌を持ってして世界三大美女にランクインしていたであろうこの人物は俺より上の身分なのであろうとは思う。

 俺よりはマウンテン上部にいると思うよ?

 だけど印象は悪いよね。


 第一印象で前世の親父に似ているってだけで最悪なのに、セカンドインプレッションもマウントとりにきてるわで、どちらかと言うと激! 最悪!


 と言うことで俺のビンゴシートを買ってくれたので握手をしたいと思います。

 更に特別に健康になる施術も付加価値としてつけちゃう。


「それではマダム。ビンゴシートを買っていただきましたので握手と特別に健康と美容に良い施術を行いますねぇ?」


 にっこり俺が言うとマダムは少し考えた後了承の返事をし、こちらに注目していた周りのお客さんたちも推しメンバーとの握手に戻っていった為に喧騒も戻ってきた。


 ふふ。俺が何か企んでいるのはわかっただろうが、健康と美容に良いと言う部分が嘘でない事も分かったので戸惑ったな?

 その一瞬の間はそう言う事だろう?

 だが手を握るだけなら幼女にはどれほどのこともできないと侮っているな?


「少し痛いので我慢してくださいねぇ」


「え?」


 俺は手を握って早口でマダムに告げる。

 マダムは疑問の声を上げるが


 くらえ! ジャパニーズツボ指圧!


「あいたたたたた!」


 全力! グリグリ!

 ふ、ふふ。

 その風貌からは凡そ出てくるとは思えない、いたって普通の痛がる声が出て来たもんだ。


 俺がニヤリとするとマダムは空いている手で自分の口元を押さえ声が出ないようにする。


 ふははははは! やはりな!

 ツボと言う概念が分からないマダムは俺の行動が読めなかったな!


 これが貴様の弱点だぁ!

 神ならぬ身には未知の事までは予見できぬ!

 未知の概念は見通すことができぬ!


 そして常日頃から予知に近い行動をしているので突発的なイベントに弱いはずだ!


 俺が前世の父を恐れたのは、スーパーコンピューターもかくやと言うほどの膨大な知識と経験則からなる完全なプロファイル、それを元に行う思考誘導と人心掌握だ。

 そしてその能力で得た人材であらゆる方面からのイレギュラーを最小限に押さえている。


 マダムも近いことができるのだろうが、この単独で相対している状態で、異世界の知識と言う異分子を持つ俺に対しては機能していない!


 ほーらグリグリ!


「んぅっ」


 俺が懸命にツボを押しているとマダムは声をあげぬように下唇を噛み締め柳眉を顰めて痛みに耐えている。時折痛みに耐えかねるのかくぐもった声が漏れる。


 ふははは! ふは……は。

 ……なんか。

 エロくね?


 マダムは痛みの為に前かがみになっているため、俺の目の前に柔らかメロンちゃんが急接近していることに気づいた。


 なんか……いい匂いもする。

 ふわぁ……。

 なんだか夢見心地ダァ。


 はぁっ! いかん!

 エロスの心など、どれだけ世界が変わろうとも普遍!

 未知とは程遠い感情……っ。

 ましてや相手は娼館の支配人! プロファイルし放題の操り放題!

 だがしかしこの柔らかさが俺をダメにすルゥ……。


 そして気づいた時には俺の指圧から逃れたマダムが、俺を正面から胸に挟み込むように抱き上げていた。


 いつのまにか椅子にも座っている。

 そして俺はいつのまにかマダムの膝の上でコアラのように抱きついていた。


 恐ろしい能力だ……。結果だけが残った。俺が胸に埋もれているという結果だけが。

 これが俗にいうキング◯リムゾンか……。


 恐ろしいから、もう少し顔面に感じる柔らかさを堪能しよう。


「お名前はキキちゃんだったわよね?」


 俺が新手のスタンド能力について考察していると、頭の上で声がした。

 当然マダムだ。

 どうやら、痛い目にあったことで俺に興味を持ったようだな。

 それじゃあ、もっと興味を持ってもらいますかね。


 俺は後頭部に意識を集中しつつも話にも集中するのであった。


お読みいただき誠にありがとうございます。


やっとマダムに会えました。

1話から長かったですね。


マダムはキキにとって前世の父の影のような物です。

その能力をとても恐れているんですね。

だけど、キキはその能力を深く理解しているようです。


本人は気づいていませんが、理解できているなら……使えるってことですよね。


もし面白いと思ったら、ブックマークとポイント評価よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ