40話 『勢いでヤっちまった話』
3000文字で投稿しようと心がけています。
6000文字までは誤差だと思っています。
嘘です、すいません(T ^ T)
長くてすいません……。
こんにちはキアーラ・カサッツァです。
人には譲れないラインというものがあります。
そこから先に踏み込まれたら後はガチンコのやり取りしか残されてはいません。
それが何かを守るということだと思うのです。
「さぁどうだ? たった一言で俺は力を手に入れたぞ。
……あんたの言う弱さなんてあっという間に覆ったな?」
腕を組み、胸を反らしながら見せつけるようにフレアさんに言ってやる。
だが彼女は茫然自失として反応しない。
「あぁ、なんだったかな?
___私も貴方も弱さと言う罪を背負い罰を受けながら生きていくしか無いのです。……だったか?」
俺は探偵よろしく人差し指で自分の額をトントンと叩きながらワザとらしく尋ねる。
「違ったな? 弱いのはアンタだけだった。……そうだよな?」
俺は気に入らないのだ。彼女が妹を侮辱した事も勿論。
彼女が結果的に王虎の仲間を侮辱した事も勿論。
なにより___
「と言うことはだ。アンタだけが罰を受けることになるな?」
俺の問いに放心状態から解かれたフレアさんは見る見るうちに顔を歪めた。
「い……ぃやぁ」
彼女は罰を受けると言うワードにかぶりを振って強い拒絶を見せ後ずさろうとする。しかし王虎に腕を掴まれているのでそれは叶わない。今の彼女にはそれを振りほどくと言う選択肢も浮かばぬ様だ。
王虎が今までの様子とは真逆のか弱いその姿を見せられ、焦った様に俺を見る。
頷いてやるとホッとした表情で手を離す。
……こいつこんなに女に弱くて大丈夫なのか?
あぁ、大丈夫じゃ無いから俺にボスになってくれって言ったのか。
そう言うところも無理していたんだろうな。
そしてソニー兄さんは反射的に彼女を介抱しようと足を踏み出したが、俺は首を振って静止する。兄さんは任せて良いものかと、手を伸ばしたり引っ込めたりしてこれまた困り顔を向けてくる。もう一度首を振って見せると、困り顔のまま一応は一歩下がる。
ゴロッリオは動かない。
そしてフレアさんに視線を戻すと腕を離されたのに腰が抜けたのか逃げるわけでもなくその場に座り込んでいる。
___強いPTSD。所謂トラウマ。
彼女は弱さと言う罪には罰がつきものだと摂理の様に嘯くが、彼女自身が最もそれを受け入れられず恐れている。いや畏れている。
彼女が過去に耐え難い事がありそれが自分の弱さ故に起こった事だと思っていることは誰の目にも明らかだ。
自分が弱い存在だから罰として何度も悲劇が襲うのだとそう思っている。
この世界に生きていれば心に大きな傷を負う事は往々にしてある。
それは残念ながらありふれていて多くの人を蝕んでいる。
それでも生きていかねばならないから。
生きていきたいから人はそれに理由をつけて自分の中で折り合いをつける。
「今度はどんな罰が科せられるんだろうな?」
それが出来なければ彼女の様にずっと怯えて暮らさなければならない。
俺の言葉に哀れなほど怯えた彼女は唇を青くし震えている。
一体どれほど凄惨な過去を今に重ねているのだろうか。
「俺が当てて見せようか? どんな罰が降りかかるか?」
俺がそんな彼女の頬を両手で包むと驚くほど冷たい。
まるで冷たい雨に長時間うたれたかの様だ。
___俺が前世でいまわの際に感じたあの寒さを彼女は何度も味わっているのか。
彼女の眼を見ながら俺はハッキリと告げる。
「ねぇよ」
「……ぇ?」
断言する俺の言葉にフレアさんは声にならないほど小さく呟いた。
「さっきも言っただろ。そんなもんはねぇんだよ」
なにより___
俺は気に入らないのだ。
彼女が弱いというだけで怯えていなければならないのが。
ただ弱かったと言うだけでここまで人が追い詰められていくこの世界が。
改めて気に入らないのだ。
強さを強要してくるブラック世界が。
「でも……私が弱いから。だから悪い事が起こるんだって……。
お前はずっと弱いままだからずっと悪いことばかり起こるんだって」
そう___誰かに言われたんだろう。
今まさに言われたかの様に苦悩の表情をうかべる。
「ずっと弱いなんてありえない。見てなかったのか?
俺が一瞬で力を手に入れるところ」
「……見てた。でもそれは貴方が特別だから」
俺が特別だから例外。自分は当てはまらない。そう諦観の眼差しが語る。
「じゃあ、あんたも特別だな」
だが俺は彼女は特別な人間だと思う。
俺の言葉が安易な慰めに聞こえたのか彼女の眼差しは変わらない。
「あんたが言ったんだぜ、俺とあんたは同じだって。
俺もそう思うよ。だったら俺が特別ならあんたも特別なはずだろ?」
俺は殊更に自分個人が特別だとは思わないが、異世界転生しているという部分はそうだと同意できる。
「わたしがあなたと同じ特別……」
俺の手の熱が伝わってきたのか氷の様だった頬も温かさが戻りつつある。
表情も怯えがなりを潜め代わりに幼さが顔をのぞかせる。
おそらくこれが抜き身の彼女の顔だ。
肩書きや理屈という仮面を取り払った本当の素顔。
しかしそれもすぐに引っ込んで憂いを帯びた表情に変わる。
「きっとそれも間違い……。あなたと私が同じなわけがない。
わたしは昔から変わらず弱いまま」
そう言って手を膝の上に乗せうなだれる彼女。
その冷たく震える手を取り包み込む様にする俺。
手が小さいから全然包み込めないけど……。
気持ちの上では包み込んでいるということで。
「手の大きさ全然違うな。……あんたの手は昔からこんなに大きかったのかい?」
賢明な彼女は俺の言わんとすることがわかったのか、しかしかぶりを横に振る。
「俺の手はこんなに小さいけどずっと小さいままだろうか?」
また首を横に降る。
「俺自身の身体能力は昨日と変わってないけど、マフィアのボスになった俺は弱者だろうか?」
否定。
「家のベットで寝ているであろう病弱な俺の妹は、俺という力を知らぬ間に手に入れたが、彼女は弱者のままだろうか?」
これは少し考えてから否定。首を横に降る。
「そうだな。権力者の庇護下にあるものは同等とまでは言わないが、やはりその権力者の力の一部を持っているに等しい」
俺の前世での血縁者にあたる人たちは霞ヶ関でそれを大いに活用していたよ。
「じゃあ、ちょっと意地悪な質問をするぞ?」
俺の意地悪という言葉に彼女は眉をひそめたが小さく、うんと首を縦に振った。
「俺はマフィアのボスになって妹はその家族だが、その事実を知らないチンピラの前に立った時、俺たち姉妹は弱者か強者か?」
その情景を思い浮かべたのか彼女はうぅっと唸って眉をひそめたが、申し訳なさそうに俺に言う。
「……弱者だと思う」
「俺はマフィアのボスなのに? マフィアのボスは弱者か?」
「マフィアのボスは弱者じゃないけど……相手が知らなければ意味がないから」
「相手が知らないと俺は弱者になるのか?
俺がマフィアのボスである事実は変わらないのに?」
俺が質問を重ねると彼女はふてくされた様に言う。
「マフィアのボスは強いけど、あなたと妹さんは弱いから弱者なのっ」
ムキになって言う様が面白くてふふっと声が漏る。
「そうなると俺は強者で弱者となんとも矛盾した存在になってしまうな?」
俺は随分と暖かくなった彼女の手をもう一度しっかりと握りながら目を見て言う。
「つまりさ、弱さとか強さなんてものは不変ってわけじゃなく不確かで曖昧なものなんだよ。誰かから見たら強いし誰かから見たら弱い。そんなもんさ」
平社員は課長より弱いし、課長は社長より弱い、社長は奥さんより弱いし、奥さんはイケメン平社員に弱い(意味深)。
「みんな強くてみんな弱いんだよ。だからもし弱いから罰が降りかかるなら生きとし生ける物に降り注がなきゃおかしいんだ。
そうなってないから弱いからと言う理由で罰は発生しない。
以上、証明終了!」
俺は彼女の手を放し腰に手を当てながら満面笑顔のドヤ顔でフレアさんに証明の終了を告げる。
「だからフレアさんはどこにいたって、誰といたってありもしない罰に怯えなくていいんだ。弱者のままでも強者。強者のままでも弱者。そこんとこ上手くやろう!」
俺は両手を広げてす◯ざんまいのポーズをしながらフレアさんにそう伝える。
___弱くたっていいじゃないにんげんだもの
「ふふっ……なんですかそれ?」
そう言ったフレアさんは登場時の出来る人の顔で上品にコロコロと笑った。
前世の有名な詩人のパクリです。
俺がキメ顔でいると真剣な顔をしたフレアさんが口を開く。
「キアーラさんの言うことは理解できました。
でもすぐにそれを心から納得できると言うものではないです。
ずっと弱いことは罪だと世間に教えられてきたのですから」
まぁそりゃそうだろうけどね。
「でもキアーラさんの言うことはきっと正しいことなんだろうとも思えるのです。ですので私は自分の責を負おうと思います」
そういったフレアさんは背筋を伸ばし俺たちを一人一人見渡すと俺たちの名を順に呼ぶ。
「キアーラ様、王虎様、サンティノ様、ゴロッリオ様。あなた方の家族を侮辱し貶めた事、深く謝罪申し上げます。申し訳ございませんでした」
そう言うとフレアさんは深々と頭を下げた。
その謝罪には彼女の価値観に変化があったことを意味すると思う。
「何故、謝罪をする気に?」
俺はその変化を確かめずにはいられなかった。
「私は弱さを持つ方を不幸であると確信しておりました。
その方達をお救いする事は正義の行いであるとそう思っておりました」
フレアさんは頭を下げながら告解の様に告げてくる。
「弱さのみを見てその方は不幸で未来がないものであると傲慢にも断じておりました。その方達を救済せずにいる事は見捨てる行為であるとそう思っておりました。しかし弱き者の助けになるべき私がその実もっともその方達を貶めていたと、弱者にも強さがあると云うことを知った今そう思ったのです」
……こんなに都合のいいことがあるだろうか?
俺や王虎が彼女に抱いた憤りを、その原因を彼女に分からせてやりたいと思った。家族が強いんだと言うことを分からせたかった。
そして彼女自身にも弱さと言うものが、悪いことでも変わらないことでも恐ろしいものでもないと言うことを分からせたかった。
一種の腹いせみたいなところもあったのは否めない。
勿論彼女をこの世界のクソッタレルールから助けたいとは思ったよ?
だが実際は感情的になり大人気ない振る舞いだったと冷静になってみれば思う。
トラウマ抱えている女の子になんて事しているんだ俺は……。
荒療治にもほどがある。PTSD治療に荒療治は御法度だよ……。
冷静になればなるほど額から脂汗が流れてくる。
罪悪感がハンパない……。
「その貶める行為が侮辱そのものであったと思い、謝罪をさせていただきました」
しっかりした娘さんだよこの子は。
キチンと謝ることもできて本当に。
「分かりました。頭をあげてください。
謝罪を受け入れます。皆もいいね?」
脂汗はそのままに平静を装いながら皆に同意を促す。
当然と言うか誰からも否はなかった。
そして俺は汚い大人だから罪悪感から、ろくでなしムーブをかましちゃうんだから!
「その上で俺からも一つ」
頭をあげたフレアさんを確認した俺はそう一拍置くと大きく息を吸い、
「申し訳ありませんでした!!」
ジャンピング土下座を決行。
本来謝罪は誠意を示すためのものっ!
しかしこれは許してもらうための浅ましき土下座っ!
汚れているっ! 俺の心は汚れているっ!(cv立木)
突然の俺の奇行に驚きの声を上げたのが頭上から聞こえた。
「マダムを侮辱して申し訳ございませんでした!
フレアさんを煽る様な真似をして申し訳ございませんでした!
古傷を抉る様な真似をして申し訳ございませんでした!
怯えさせて申し訳ございませんでした!」
一方的にこちらの都合を押し付けるかの如き謝罪。
いや! 悪いと思ってるし反省もしている!
ただ……おじさん若い子の将来を奪う手前だったと思うと居た堪れなくってっ!
誰かに言い訳しつつも必死に額を擦り付ける俺。
暫くそうしていたが一向にお声がかからない。
ど、どうしたんだろう?
みんな帰っちゃったのかな?
そろりそろりと顔を上げて確認するとフレアさんのつま先が確認できた。
パンプスって言うのかな?それが見えた。
なんだ、ちゃんといるじゃん。
そう思いながらも恐る恐るフレアさんの顔を確認するため視線を上げていく。
途中の山脈で止まりそうな視線を鋼鉄の意思でもって3秒ほどで通過する。
しかしてそこにはチベットスナギツネの如き目をしたフレアさんのご尊顔が。
……見なきゃよかった。
そう思いながらも視線と頭を元に戻すに戻せなくなっているとフレアさんの口が厳かに開かれた。
「なんだか、男性が浮気を弁明している時のようで誠意が全く感じられないのは何故でしょうか?」
バレるっ!
若くても女っ!
男の浅はかな謝罪など全てお見通しっ!
……何かしらプレゼントでご機嫌を伺うと言うのはどうだろうかと考えていたら、益々フレアさんの目が冷たくなってきた。
エスパーかな?
俺がフレアさんにビビっていると彼女は嘆息しながら言ってきた。
「はぁ。本当は当然謝罪をお受けするところですが、なんだか誠意どころか軽んじられている感じすらあります」
いえそんなことはありません!
物で釣ろうとか重んじている対応ですとも!
「……むぅ」
もうダメだ。なんも考えんとこ。
フレアさん可愛らしく眉を八の字にしたので降参です。
「私に非があると思っているので、本来ならこの様なことを申し上げませんが、……私のお願いを聞いてくれるのでしたら謝罪を受け入れます」
条件付きとな?!
途端にモジモジとしだしたフレアさんが可愛いのでなんでも聞いてあげちゃおうと思います。
あ、でもマダムの配下にっていうのは勘弁ね?
そう思いながら俺はフレアさんがどんなことを言ってくるのかドキドキしながら待つのだった。
お読みいただき誠にありがとうございます!
この作品のタイトル長いじゃないですか?
先人の方達がそうなさいって書いてたからなんですけど、略称は必要だと思うんですよ。
と言うことで、「幼なれ」ってどうでしょうか?
もしちょっとでも面白い! 続きがきになる!と言う方がおられましたらポイント評価とブックマークもよろしくお願いいたします!




