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35話 『そこはかとないヤンの気配の話』

 

「ふふふふ」


 後ろから聞こえた笑い声に振り向くと、口に手をあて上品に笑うフレアさんの姿が。

 おぉ。無表情しかないのかと思ったら笑うと可愛らしい人だな。


「申し訳ありません。あまりに仲がよろしいようでしたので、つい」


 そう言いながらなおも笑みを浮かべるフレアさんは、最初の印象は大人の女性って感じだったが、今は随分若く見える。

 実年齢は20歳前後かな? 俺よりかは遥かに年上だけれども。


「仲はいいですね。自慢の家族です」


 だから自覚はないかもしれませんが兄さんを誘惑しないでくださいな。

 後でフラれた後の対処が面倒なので。


「素敵なお兄さんがいて羨ましいです」


 またそう言うこと言う。

 ますます惚れてまうやろ〜? と思ってチラリと兄さんを見るとハン・ソロが石化したときみたいな格好で固まっていた。表情も似てるw うけるw


 さっきのフレアさんの笑顔でお亡くなりになったな。

 もう手遅れだ。諦めよう。


 王虎も諦めねぇかな?


「素敵ですかね? これ?」


 面白オブジェクトと化した兄を見ながら俺が嘆息して言うとフレアさんが言う。


「ええ、とても。それに貴方も。

 きっとご両親が人格者でいらっしゃるのですね」


 まぁ俺の今の両親は人格者ではあると思うが。

 何故その結論に?兄さんはキモい寄りの格好でカーボンフリーズしているし、俺は俺でさっきまで虎男しばいてましたけど?


 俺が不思議に思って首を傾げているとフレアさんが面白そうに笑みを浮かべ言ってくる。


「私を半獣人と見下しませんでしたので。

 親御様が私たちを見下していれば自然とお子様がたもそのようになさるでしょう。

 あなた方はそうなさらなかった。ですのでご両親が人格者であると結論づけました」


 なるほど。

 半獣人は獣人からも人間からも差別の対象となっているので俺たちの反応が珍しいわけだ。


「うちは神は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずがモットーですので」


 人類皆兄弟。博愛の精神。汝隣人を愛せよ。

 ただし敵対者は除く。


「人の上に人を造らず……?」


 おっと、前世では有名な名ゼリフも今世では異端審問会。

 カースト制度がデフォの世界では鼻で笑われてしまう。

 この格言も本当の意味は違うし。

 フレアさんも不思議なものを見る目で俺を見てくる。


「あぁ、神様は最初から人類に不平等に造ったわけではないよ的な?

 人間の価値なんて勝手に人間が決めてるんだよ的なそんなニュアンスのアレです」


 だいたい合っているはず。

 まぁ最初はそんな含蓄のあるモットーではなく、生まれや境遇に関係なくみんな仲良くしなさいと言う母さんの教えだったのだが、それに俺が前世の知識からそれらしく言ったら母さんがえらく気に入って以後それがうちのモットーになったという経緯だ。


「人間が勝手に……」


 なにやら琴線に触れたのかフレアさんがブツブツと呟きながら思案しだしてしまった。

 さすが前世で1番の大国の独立宣言。異世界でも響くらしい。


 王虎の方を見ると、こちらも何やら思案顔で腕を組んでいる。

 自分の思考に没頭するの流行ってるのかな?


 しばらく待ってもフレアさんも復帰しないし王虎も考え事をしているので、俺はいつのまにか綺麗に片付けられたテーブルに着席し、これまたいつのまにか用意された紅茶とスフレをいただくことにした。

 隠密性の高い店員さんのことはもう気にしない事とする。


 ナイフとフォークで切り分けて口に運ぶとさっぱりとした甘みが紅茶とあって絶品。

 この世界でフルーツケーキって高級品だよな? 誰が払うんだろうと思いつつも久しぶりに食べるケーキに手が止まらないわけで。


 横ではゴロッリオがバナナの入ったケーキを美味しそうに食している。

 果物は高いはずじゃ……。しかもバナナって。

 昭和の高級果物じゃないか。

 果物が庶民にも手が出せるようになれば、血吹き病も過去の物に出来るだろうに。


 だからこそ森を攻略するのだけどな。

 そうしたら果物をジャンジャカ作って甘味をアホほど作ってやるんだ。


 ちなみにこの世界にも砂糖はもちろんありますが超高級品です。

 エルフが不思議パワーで生産しているんだって。

 多分サトウキビかテンサイを利用してるんだと思うけどトップシークレットで極秘なので真意のほどはわからん。

 ファンタジーなので手から砂糖出しているかもしれんし。


 そういえばポーションもほのかに甘いよな……。

 このケーキはもっと甘いけど。うまいなぁ。

 残してポーにお土産として持って帰ろうかな?


 俺が真面目に思案しているとフレアさんが再起動した。


「キアーラさん。貴方のお話に私とても感銘を受けました。その教えはご両親が?」


 フレアさんが熱のこもった眼差しで詰め寄ってくる。

 美女に詰め寄られるのは嬉しいが、そこはかとなく圧がすごい。

 こりゃ本格的にマズったか?


「あぁ、ご両親というか自然とそうなったというか……」


 このままだと両親にまで話がいってしまう流れだ。

 それだけまずい。


 なぜなら両親にはスラムの子供連中とボランティア的なことをして小銭を稼いでいる事になっているのだ。


 だって10歳やそこらの幼女が大人相手に金儲けしているとなったら普通止めるでしょ?

 ましてや一時期はゲス相手とはいえスリの真似事もしていたわけですから。


 なんとか誤魔化そうとしているところに後ろから声が上がる。


「みんな仲良くしようと言うのは母の教えですが、人の上に人を造らずというのはキキの格言なんですよ!」


 こちらはカーボンフリーズから猫かぶりに戻ったソニー兄さん。

 ドヤ顔で自慢げに胸をそらしている。

 余計なこと言うなや。


「まぁ! キアーラさんが……」


 ほらぁ。フレアさんが目をまん丸にして俺を凝視し出したじゃないか。


「やはりマダムの言う通り得難い存在……」


 なんか意味深なことを言い出した。

 難聴系主人公ではない俺の耳にはバッチリ届いているがもう情報過多なのでお許しいただきたい。

 マダムとやらの名前?が上がったところで、王虎が反応したのも横目に見えてしまったし。

 やっぱりなんかあんのかなぁ……。マジで逃げたほうがいいのか?


 俺の危機感さんが警鐘をならし始めたところでフレアさんに手を取られた。

 椅子に座っていたのが敗因と思われます。


「キアーラさん。失礼ながら貴方のような幼い方が斯様(かよう)な思想をお持ちであること、そして私たちが出会ったことはなにかの啓示であると思われます」


 啓示ときた。口は災いの元とはよく言ったものだ。

 軽口から大ごとになり出したぞい。

 苦虫を噛み潰したような顔をしているであろう俺を無視してフレアさんが続ける。


「この出会いをより良きものとするためにも、私の仕える主人にあっていただけないでしょうか?

  そして一緒に主人に仕えましょう!」


 勧誘キタコレ。宗教関係の方?

 今日はなんなの? 人生の分岐ルート?


「申し遅れましたが改めて自己紹介させていただきます。私はこの街で最大の公娼(こうしょう)パピヨンが支配人マダムに仕えており、不肖ながら御側付きを拝しております。この度はマダムよりキアーラ様との友誼を結ぶようにと罷り越しました。どうぞ一緒にパピヨンにおいで下さい」


 コウショウってなに? 支配人とかなんかえらい人がなんで俺と友誼を結ぶの?

 みんな幼女に重大な選択を迫りすぎじゃない? 目が曇ってるんじゃないの?

 セーブポイントどこだよ。セーブさせろ。


 俺は怒涛のイベントにどこで選択肢を間違えたんだろうなぁと思いながらも、フレアさんの山脈を眺めて心身の安定をはかるのであった。


お読みいただき誠にありがとうございます。


もしちょっとでも面白い! 続きがきになる!と言う方がおられましたらポイント評価とブックマークもよろしくお願いいたします!


感想なども随時受け付けておりますので、よろしければ、そちらもお願いいたします!


作者にとってとてつもない励みになります!

引き続き頑張っていきます!

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