34話 『山は神聖にして不可侵だけど登りたい話』
どうもこんにちは。キアーラ・カサッツァです。
兄さんのかっこいいところとダメなところが垣間見えてたところで、そろそろお暇したい次第。
無理難題をふっかけられる前にスタコラサッサだぜ!
「さて。随分と情けない姿を見せちまったが改めて言わせてもらおう」
俺が緊急回避をするためゴロッリオによじ登ろうとしていたところで王虎からお声がかかる。
ちっ。しかし回り込まれてしまった。
だが俺は諦めない。
「おっと! なぜか椅子と机がバラバラに!
これでは話ができないぞぉ大変だぁー!
これは話は後回しにせざるを得なぁい!」
科学忍法、先延ばし!
都合の悪いことは未来の自分に任せると言う忍法なのだ!
「こちらにご用意してございます」
「うわぁ!」
そう論理的かつ科学的な見地に基づいた意見を俺が述べていると横から声がかかる。
俺は驚いて声をあげ、ソニー兄さんとゴロッリオは目を丸くしている。
声のする方を見るとキッチリとスーツを着込んだ小麦色の肌をした茶色い短髪の女性が立っていた。
かたわらにはいつのまにか机と椅子が用意されている。
……全然気配を感じなかったぞ。
「驚かせてしまい申し訳ございません。
音を立てずに動くのは猫の習性ですのでご容赦ください」
そう言う慇懃に言う女性のお尻には確かに猫の尻尾が生えている。
猫耳は……ない。
「私は出来損ないですので」
俺の目線に気づいた女性が無表情にそう告げる。
しまったな。失礼だった。
この世界では完全に動物の特徴が現れていない獣人は出来損ないと差別される傾向がある。
故に俺の視線は大変に不躾で無礼なものだった。
「無礼な対応をしてすいませんでした。ごめんなさい」
そう言って俺は頭を下げ謝罪する。
俺は差別をする気はさらさらないがその視線だけで侮辱ととられ兼ねかねないからな。
キッチリと謝ろう。
そう思いしばらく頭を下げていると返答がない。
まずいな。ものすごく怒らせちゃったかな?
この人美人だから怒るとものすごく怖いだろうな。
THE土下座に移行しようかな?
クレア母さんに怒られているドルネオ父さんに土下座を伝授したところ、許される迄の時間が25%減った(当社比)とご好評頂いたからこのお姉さんにも効く可能性は大だ。
いや、許してもらうために謝るんじゃないけどね? 誠意からの謝罪だからね?
そう思いチラリと視線をあげると変わらず無表情のままの女性が目に入った。
……心なしか驚いてる?
なんとなくそう思っているとお姉さんがしゃがんで俺と目線を合わせながら言ってくる。
「いえ。お気になさらずに。慣れておりますので」
少しだけ声音が柔らかくなった気がする。俺の願望かもしれないが。
「それでもすいませんでした」
慣れていると言っても傷つかないわけではないはずだからな。
「わかりました。謝罪をお受けいたします」
そう言うお姉さんは変わらず無表情で、やっぱり怒っているんではないだろうか?
真意を測ろうとそのままお姉さんの眼を見つめていると向こうも見つめてくる。
……なんだか恥ずかしくなってきた。
気まずくなった俺が何の気なしに視線を下げたところで驚愕の事実が発覚した。
むぅう! こいつは……爆裂ダイナマイツ!!
キッチリとしたスーツの下は開襟シャツをお召しになってあらせられるが、その開襟具合がパラダイス!
その内部に秘められし小麦色の山脈が、今にもその戒めから解き放たれんばかりに自己を主張しており、少しの衝撃で現世への顕現を果たしそうでエルドラド。
その山脈の間にある渓谷は紐なしバンジーを万回実施してもなお余りあるほどの魅力に満ちている。リビドーブラボーありがとう!!
「あの……どうかされましたか?」
鼻息荒く俺がサンクチュアリに向かって手を合わせ拝もうとしていたところで現世のお姉さんから声がかかった。
「いえ、どうもしていません」
無表情でありながらも若干引いているお姉さんに俺なりの真実を告げる。
だってこれは俺の通常運転だから。
どうにもなっていないから。
「……そうですか」
「そうなんです」
この間も俺の目線は一点の曇りもなく一点に集中しているが気にしてはいけない。
だって俺は幼女だから。セーフだから。
その後しばらくの沈黙が続いたがお姉さんがおもむろに立つとパンパンと手を叩いた。
「椅子と机の交換をいたします」
そうお姉さんが言うと、これまたいつのまにか近くまで来ていた店の女中さんらしき方々が残骸を片付け出す。
この店は気配を消すのがデフォなのだろうか?
「いや、キキがお姉さんの胸に集中している間に普通に来てたんだぜ」
はぁ? 胸に集中とかしてませんし。
ちょっと大自然について考えていただけですし。
「すまんな。弁償は俺のところでするから後で請求してくれ」
腕を組みながら少し離れたところから王虎が言う。
……? なんだか距離が離れてる?
それになんか警戒してる感じがあるな。
なんだろう。猫と虎だから相性良さそうなものだけど、何かあるんだろうか?
後で聞いてみようかな?
そう思っているとソニー兄さんがお姉さんに声をかけた。
「ところでお姉さん。僕はサンティノ・カサッツアと言います。
よろしければお名前をお伺いしても?」
……無駄にイケメンボイスで無駄にイケメンスマイルを発動しながらソニー兄さんが歯を光らせながらお姉さんに問う。
兄さん年上で包容力(胸囲)がありそうな女の人が好きだからな。
ここぞとばかりの兄さんなりのイケメンムーブなのだろうけど。
その猫かぶりは年上から見たら違和感が凄くてなんの効果もないんだよなぁ。
「……フレア・バーキンと申します。以後お見知り置きを」
若干の間の後にフレアと名乗ったお姉さんはとても綺麗な動作でお辞儀をした。
礼節とかにとんと縁のない俺でも美しいと思うような所作だ。
「なんと美しい名前でしょうか! 美しいお姉さんにぴったりです!」
テンプレかと言いたくなるようなソニー兄さんの追随。
お世辞とかじゃなく、これマジで思ってるからね?
好みの女性は全肯定のアホの子です。
今にもフレド兄さんのようにその場で大回転をしそうなテンションのソニー兄さんを興味深そうな目で見ているフレアさん(無表情)
見られていることに気づいたソニー兄さんが嬉しそうに言う。
「おっと! 貴方のような美しい人に見つめられると眩しくて目が眩みそうだ!
だがこの時間は至福にして志向! 存分にご覧になってください!
お礼になにかご用命とあれば僕の身命を賭してお手伝い致しましょう!」
このモードに入るとフレド兄さんと似てるんだよね。流石は兄弟と言うべきか。
フレド兄さんはチラホラ打算が見え隠れしていて、その辺が割り切ってる感じでモテている。ソニー兄さんはただ全力で微笑ましく見られて相手にされない。
今も一生懸命に全力笑顔で歯をキランキランさせている。無駄なのに。
「ありがとうございます?」
おぉ、ソニー兄さんてば無表情キャラのフレアさんを困惑させているじゃないか。
ちょっと小首を傾げている様がなかなかのギャップ萌え。
これにはソニー兄さんもオーバーキルだ。
「おうっふ」
謎の呻きとともに本当に眩しいものを見るかのように手をかざして後ずさる兄さん。
「ふつくしい……」
あ、これマジなやつかも。思春期男子には刺激が強すぎたか。
王虎の態度も気になるし、ここいらでインターセプトしておこう。
「お兄ちゃん、私よりフレアさんの方が好きなの?」
伝家の宝刀あざとい妹ムーブ!
こちらも小首を傾げてさらに上目遣いもプラス!
人差し指をほっぺに持ってきて倍率ドン! さらに倍!
「そんなことはないんだぜ!!
お兄ちゃんは世界で一番キキを大好きなんだぜ!」
ガバリと俺の方を向き必死に言い募る兄さん。
かぶっていた猫は異次元の彼方へ。
俺は両手をグーにして顎の下に配置。
ぶりっ子のポーズで更に追い討ちをかけるぜ!
「本当に?」
「本当も本当だぜ! 俺がキキに嘘をついたことなんかあるか?!」
「まぁありますけどね。このまえ俺が出かけている間に母さんが作ったキッシュを食べてしらばっくれたじゃんね?」
「あひゅぅ。あれはソノ、なんだ? どうした?」
突然の梯子外しに両手両脚をバタバタせわしなくさせながら焦る兄さん。
兄さんがどうした?
「ふふふふ」
後ろから聞こえた笑い声に振り向くと、口に手をあて上品に笑うフレアさんの姿が。
おぉ。無表情しかないのかと思ったら笑うと可愛らしい人だな。
そんな人が俺になんのようなのかな?
お読みいただき誠にありがとうございます。
お気づきかも知れませんが、作者は女性の特定の部位に特別な興味を感情を抱いています。




